足立慶友医療コラム

変形性膝関節症の治療で避けるべき運動とは – 専門医の見解

2025.04.04

変形性膝関節症が疑われる方やすでに診断された方の中には、「どんな運動をすればいいのだろう」「膝に負担をかける運動は避けたい」と考える方が多いようです。

膝を大切にするためには、過度に負担をかける動きや誤った運動の取り組み方を理解し、うまく予防や症状の改善に結びつけることが重要です。

本記事では専門医の視点から、変形性膝関節症でしてはいけない運動と、日常生活で気をつけたい膝ケアのポイントについて詳しく解説します。

変形性膝関節症とは何か

変形性膝関節症は、膝の関節軟骨がすり減ることで炎症や痛み、関節の変形が生じる病気です。

主に中高年以降に多く、加齢による軟骨の摩耗だけでなく、肥満や運動不足、姿勢の乱れなど複合的な要因が関わります。

進行すると膝が曲げにくくなり、日常生活の動作が著しく制限されてしまうため、早期の対処が大切です。

変形性膝関節症の特徴

膝の軟骨が減少する結果、関節面同士の摩擦が強くなり、膝の内側やお皿まわりに痛みが出やすくなります。初期の痛みは歩き始めや立ち上がりなど、動き始めに強いのが特徴です。

痛みが進むと常に不快感を抱くようになり、さらに関節に変形が起こるとO脚が強まる場合があります。

主な原因と危険因子

変形性膝関節症のリスクを高める要因には、加齢・肥満・遺伝的背景などが挙げられます。加齢で軟骨が自然にすり減る上に、体重が重い方は膝関節に大きな負荷がかかりやすくなります。

さらに筋力不足や長期間にわたる膝への酷使など、複数の要因が重なると症状が進行しやすくなります。

治療とセルフケアの基本

治療の基本は、まず痛みや炎症を抑えることです。薬物療法やリハビリテーションで症状を和らげつつ、筋力強化や体重管理に取り組むと、症状の緩和だけでなく膝の機能維持が期待できます。

特に膝周りの筋肉を適度に鍛えることは大切です。ただし、無理な運動で膝を傷める恐れもあるため、正しい運動選びと正しいフォームが重要になります。

変形性膝関節症の進行度と主な症状

進行度軟骨の摩耗度合い主な症状対応の目安
初期軟骨表面が部分的にすり減る動き始めの痛みやこわばり適度な運動と生活習慣の見直し
中期軟骨が薄くなり関節裂隙が狭まる歩行時や階段の昇降で痛み痛み止めやリハビリ、体重管理
進行期軟骨がかなりすり減り骨同士が接近安静時も痛みが続く、O脚変形手術なども含む包括的治療

してはいけない運動の考え方

変形性膝関節症の方にとって、運動は筋力維持や体重コントロールに有用ですが、膝への過度な負担は避ける必要があります。

痛みや炎症が強まると治療の妨げになり、症状が悪化する恐れがあるからです。

避けるべき動きの特徴

一般的に膝関節を大きく曲げ伸ばしする、衝撃を強く受け止める、あるいは急激にひねるなどの運動は注意が必要です。

たとえば急な方向転換を伴うスポーツや、重い負荷を膝で支える動作が多い場合、膝の負担が増します。

これらは変形性膝関節症の症状が進行する要因となりやすいため、危険な要素を理解しておくことが大切です。

強い負荷をかける運動のリスク

ランニングやジャンプ動作を繰り返すスポーツは、膝への着地衝撃が大きく、変形性膝関節症を悪化させる可能性があります。

痛みの少ない段階でも、膝への蓄積ダメージを生む恐れがあり、知らず知らずのうちに症状を進めてしまうことがあります。

安全なトレーニングとの違い

負荷のコントロールがきちんとできて、膝に優しい動きかどうかを見極めることが大切です。たとえば水中ウォーキングやバイクエクササイズは関節への衝撃が小さい運動の代表例です。

正しいフォームで、無理なく継続できる運動であれば、筋力アップに加えて痛みの軽減や血行改善につながります。

膝に強い衝撃を与えやすい動作の例

動作具体例膝への負担要因
ランニング長距離・短距離問わず連続走行着地の衝撃が繰り返し膝を圧迫する
バスケットボールジャンプや急な停止と方向転換着地や急旋回時に膝に大きな負担
テニスサーブやストップ&ゴーが多いストップ動作や踏み込み動作で膝をひねる

変形性膝関節症でしてはいけない運動の具体例

変形性膝関節症でしてはいけない運動には、膝の軟骨や関節包に強い衝撃を繰り返しかけるものが挙げられます。

代表的なものを理解し、避ける工夫をするだけでも、膝の状態を悪化させるリスクを減らせます。

ジャンプを多用するスポーツ

バスケットボールやバレーボールなど、ジャンプ動作が頻繁に含まれるスポーツは要注意です。ジャンプの着地時には体重以上の負荷が一瞬で膝に集中します。

変形性膝関節症の初期段階でも、断続的な強い衝撃が軟骨を傷つけ、炎症を助長する原因となる可能性が高いです。

急激なひねりを伴う運動

テニスやサッカーなど、方向転換や急停止を何度も行うスポーツも、ひざ関節に大きな捻転力が加わるため要注意です。

特にテニスのサーブやフットワークの際には、体重が支えとなる軸足の膝がひねられる形になりやすいです。変形性膝関節症で弱った膝には大きな負荷になるため、痛みや炎症が増幅する恐れがあります。

重量物を担いでのスクワット

スクワットは太ももの筋肉を鍛える上で効果的な運動ですが、バーベルなど高重量を担いで行うと膝への負荷が急激に高まります。

膝を深く曲げるほど関節にかかる力は大きくなり、軟骨へのダメージが増えます。

変形性膝関節症の方が下半身強化を目指す際は、負荷を軽めにするか、正しいフォームを丁寧に確認するなどの配慮が必要です。

膝への衝撃・負荷が高い例

種類具体的運動負荷レベル (主観)
ジャンプ系バスケットボール、バレーボール高い
急な停止・方向転換サッカー、テニス中~高
重量物を担いだ屈伸バーベルスクワット高い
連続の衝撃長距離ランニング中~高

適切な膝ケアと運動選択

膝に負担をかけすぎない運動を選び、適切にケアを行うことは、変形性膝関節症の痛みを軽減し、関節機能を保つうえで大切です。

自分の体力や症状に合わせて取り入れると、膝の状態が好転する可能性があります。

有酸素運動の活用

ウォーキングや水中ウォーキング、バイクエクササイズなど、関節に優しい有酸素運動は、膝を保護しながら血行促進や体重管理に役立ちます。

水中での運動は浮力により体重負荷が軽減されるため、痛みがある方でも比較的取り組みやすいでしょう。

筋力トレーニングのポイント

太ももの筋肉(大腿四頭筋やハムストリングス)を強化すると、膝への衝撃を吸収しやすくなります。

ただし、急に高負荷をかけたり、膝を深く曲げすぎるトレーニングは変形性膝関節症を悪化させることにつながるかもしれません。

椅子に座って行うレッグエクステンションや、軽い負荷でのスクワットから始めるなど、段階的に行うことが大切です。

日常動作での注意点

日常動作の中にも膝に大きな負担をかける姿勢や動きは潜んでいます。たとえば和式トイレの使用や、床に座って立ち上がる動作は膝への負担が増します。

なるべく洋式トイレを使う、立ち座り時は手すりやテーブルを支えにして荷重を分散するなどの工夫を行うと、痛みの悪化を防ぎやすくなります。

膝に負担をかけにくい運動

運動種類主なメリット注意点
水中ウォーキング浮力で関節負荷が軽減プールまでの移動が負担にならない範囲で
バイクエクササイズ座って行い衝撃が少ないサドルの高さを適切に合わせる
ゆったりしたヨガ関節可動域を保ちつつリラックス膝をひねらないポーズを中心に行う
椅子に座ったレッグエクステンション太ももの筋力強化重量や回数を段階的に増やす

病院で行うリハビリテーションの役割

変形性膝関節症を抱える方は、医療機関でのリハビリテーションを受けることで、正しい運動方法と適切な負荷量を学ぶことができます。

専門家の指導があれば、膝を保護しつつ必要な筋肉を鍛え、痛みをコントロールしながら継続できるようになるでしょう。

理学療法によるアプローチ

理学療法士は患者の膝の状態や筋力、可動域などを評価した上で、個々の症状に合った運動プログラムを提案します。

痛みが強い段階ではアイシングや電気療法などで炎症を抑え、痛みがやわらいできた段階から徐々に筋力強化やストレッチを取り入れる計画を立てます。

作業療法での日常生活指導

日常動作における膝の使い方を見直すサポートを行うのが作業療法です。

たとえば床からの立ち上がり方、階段の昇り降りのコツ、椅子の高さの調節など、膝に余計な負荷をかけない工夫を教えてもらうと、症状の悪化を防ぐだけでなく、痛みの緩和にもつながります。

リハビリ専門スタッフとの連携

変形性膝関節症の治療では、整形外科医や理学療法士、作業療法士、場合によっては栄養士やトレーナーなど、複数の専門家が連携することが望ましいです。

情報を共有しながら膝の状態を的確に把握し、治療方針を調整することで、効率的に機能回復を目指せます。

リハビリチームの構成と役割

専門職主な役割補足
整形外科医症状診断、治療方針の決定手術の必要性や薬物治療の判断
理学療法士筋力・可動域訓練、物理療法痛みや炎症に合わせた運動処方
作業療法士日常生活動作の改善指導生活環境の調整や自主トレ提案
栄養士食事指導、体重管理の助言適正体重の維持による膝負担の軽減

日常生活でのセルフチェック方法

変形性膝関節症の治療が進んでいる最中でも、日常的に膝の状態をセルフチェックすると、早めに異変に気づき、対処できる可能性が高まります。

医療機関での定期受診とあわせて、普段の生活の中でも注意を払うことが大切です。

毎朝の立ち上がり感覚

朝起きてベッドや布団から立ち上がるときに「膝が重い」「曲げると痛い」など、違和感を覚えることがあるかどうかを把握します。

痛みの度合いや位置がはっきりしてきた場合は、リハビリ内容を変更したり整形外科で診察を受けるタイミングを決めたりする指標になります。

体重の変化と膝への負担

週に1~2回程度、自宅で体重を測って記録をつける習慣をつけると、自分の身体の変化とともに膝への負担を管理しやすくなります。

体重が急に増えると膝にかかる圧力も増大し、痛みが強まるきっかけになる場合が少なくありません。

日常動作の痛みレベル

歩行中や階段昇降の際に痛みが増していないか、変形性膝関節症の症状が悪化していないかを観察します。

痛みがひどくなった場合は、運動強度を下げる、サポーターを検討する、医療機関に早めに相談するなどの対処を行うとよいでしょう。

自宅でできる観察項目

観察項目具体例活用の仕方
痛みの度合い朝の立ち上がり、歩行時痛みが増していないかの目安
膝の腫れ具合関節の周囲に腫脹や熱感がないか炎症が進んだ兆候を早期把握
体重の推移週1~2回の測定膝負担の増減を客観的に確認
可動域膝を曲げ伸ばしできる角度リハビリ効果や悪化防止の指標

再発予防のためのライフスタイル調整

変形性膝関節症は慢性的に症状が続きやすいだけでなく、再発しやすい特徴があります。

無理な運動や誤ったケアにより痛みがぶり返すと、治療期間が延びたり、日常生活の質が下がる恐れがあります。

膝への負担を軽減するライフスタイルを長期的に維持することが再発予防のポイントです。

適度な運動と休養のバランス

膝のリハビリや筋力強化は重要ですが、やりすぎは禁物です。痛みを感じる前に休憩を取り、膝を冷やしたり、休養日を設けたりして負荷をコントロールします。

疲労や炎症を翌日に持ち越さない工夫が大切です。

体重管理と栄養バランス

膝にかかる負担を軽減するため、標準体重を保つことが目標になります。食事の栄養バランスを整え、筋肉や軟骨に必要な栄養素を確保することも意識しましょう。

極端な食事制限は筋力低下を招き、膝への保護機能が落ちる恐れがあります。

足回りのケアと靴選び

足に合わない靴やヒールが高い靴は、膝への負荷を増やす可能性があります。クッション性のある靴やインソールを利用して、地面からの衝撃を和らげると痛みの軽減につながるでしょう。

自宅やオフィスなどで長時間立ち仕事をする場合も、こまめに足首の運動をするなどして血行を促すと膝の負担を分散できます。

膝への負担を軽減する暮らしの工夫

項目内容効果
運動と休息の計画適度な運動を日常に組み込み、痛みが出る前に休むオーバーワーク防止、炎症の抑制
栄養バランスタンパク質、カルシウム、ビタミンDを意識筋肉と骨の健康維持
靴選びフィット感とクッション性がある靴、適度なヒール高着地の衝撃を吸収しやすい
サポーター活用膝を保護するサポーターの使用可動域を安定させ痛み緩和
  • 変形性膝関節症の痛みを抑えるためには、過度な衝撃を膝に加えない運動を選ぶ
  • 日常動作や生活習慣の見直しが重要
  • リハビリでは専門家のアドバイスを受け、症状に合ったメニューを継続する
  • 痛みや炎症があるときは早めに治療方針を見直す

FAQ

膝に痛みがあるときでもウォーキングはしていいですか?

痛みの程度によります。少しの痛みなら、スローペースで短い距離からウォーキングを始める方法は有用です。歩くことで血行が促され、膝周りの筋力維持にもつながります。

ただし痛みが増す場合は無理をせずに休み、主治医やリハビリスタッフに相談することをおすすめします。

サポーターや杖は使ったほうがいいですか?

痛みがあるときや負荷が大きい場面ではサポーターや杖を使用すると、膝への衝撃をコントロールしやすくなります。

長期間の使用により筋力が落ちる心配がある方もいますが、正しく使うことで動作時の痛みを軽減し、活動量を保つことにも役立ちます。

病院ではどんな治療が受けられますか?

一般的には痛み止めや消炎鎮痛剤、ヒアルロン酸注射、関節内注射などが選択肢として挙げられます。重度の場合は手術的治療が検討されることもあります。

いずれの場合でも、リハビリテーションによる運動療法が併用されるケースが多く、症状や生活状況に合わせて総合的に治療計画を立てます。

普段の生活で特に気をつけることはありますか?

体重管理や運動量の調整、靴選びなどが大切です。膝に負担をかけないよう、急に階段を駆け下りる、重いものを持ったまましゃがむといった動作は避けるとよいでしょう。

痛みや腫れを感じたら冷却や安静を心がけ、必要に応じて医療機関の受診を検討してください。

以上

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Author

北城 雅照

医療法人社団円徳 理事長
医師・医学博士、経営心理士

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