足立慶友医療コラム

腰椎すべり症の生活制限|やってはいけない動作と運動

2025.04.27

腰椎すべり症は、腰椎部分で骨がずれてしまい、痛みやしびれだけでなく、日常動作や運動に制限が出やすい病気です。

普段の姿勢や動作が大きく関わるため、気をつけるポイントを理解しておくことが重要です。

この記事では、腰椎すべり症やってはいけないことや腰椎すべり症してはいけない運動、さらに再発を防ぐための日常管理について幅広く解説します。

適度に動くことで症状の緩和を目指す一方、無理をすると悪化しやすいため、正しい知識を身につけて腰椎の健康を守りましょう。

腰椎すべり症とは

腰椎すべり症は、腰の骨(腰椎)が前後左右のいずれかにずれてしまい、神経や周囲の組織を圧迫して痛みや運動障害を引き起こす疾患です。

腰や下肢の痛みだけでなく、重症化すると足のしびれや歩行障害も生じることがあります。加齢だけでなく、姿勢や生活習慣、スポーツなども関係するため、幅広い年代で注意が必要です。

原因

腰椎の椎骨がずれる原因としては、加齢による椎間板の変性や、先天的に椎骨の形態に問題がある場合、激しいスポーツで繰り返し腰に負担をかけてしまった場合などが挙げられます。

とくに背骨を支える筋肉が弱いと、骨格が不安定になりやすく、ずれを生じるリスクが高まります。日頃の姿勢の乱れや長時間同じ姿勢を続ける習慣も影響します。

腰椎には5つの椎骨があり、それぞれが椎間板や靭帯、筋肉などで支えられながら安定を保ちます。しかし加齢や外的要因によってこれらの組織が弱ると、椎骨が本来あるべき位置からズレを起こしやすくなります。

重い物を持ち上げる動作や急激なひねり動作、激しい運動などがダメージを蓄積させる要因になりやすいです。

腰椎と周辺組織の関係

部位または組織主な役割や特徴
椎骨(腰椎)身体を支え、脊髄神経を保護する
椎間板椎骨同士のクッション役
靭帯椎骨同士をつなぎ、安定性を保つ
筋肉(インナーマッスル含む)動作をサポートし、腰椎を支える

症状

腰椎すべり症は、腰痛だけではなく、太ももから足先にかけてのしびれや、長時間の歩行が難しくなるほどの下肢の疲労感が生じることがあります。

重症化すると、しびれによって足の感覚が鈍くなり、ふくらはぎの筋力が低下して足を引きずるように歩くケースもみられます。

朝起きた直後や長時間座ったあとの動き始めに痛みが強くなることも特徴です。

日常生活においては、前かがみの姿勢や中腰姿勢をとる際に痛みが増す場合が多いです。体を後ろにそらす動きでも、ずれた椎骨が神経を刺激しやすく、痛みやしびれが走ることがあります。

症状が慢性化すると動作そのものが怖くなり、腰をかばいすぎて他の部位に負担が及ぶこともあるので注意が必要です。

分類

腰椎すべり症には大きく分けていくつかのタイプがあります。先天性の場合は、生まれつき椎骨が部分的に形成不全を起こしていることが原因です。

加齢による変性が原因となるタイプは中高年以降に多く、日常動作で腰に負担をかけ続けることが拍車をかける要因になりやすいです。

スポーツを頻繁に行う若い人でも、疲労骨折から生じるタイプがみられます。

代表的な分類

分類特徴
先天性生まれつき椎骨の形態に問題がある
変性加齢や椎間板の変性によるもの
分離疲労骨折や激しい運動による椎弓の骨折が関係
外傷性事故などによる大きな外力が原因

治療の基本方針

腰椎すべり症の治療では、痛みの緩和とともに、ずれを引き起こす要因を減らすことが大切です。

まずは腰への負担を軽減するために、コルセットやサポーターで椎骨を安定させることが多いです。

痛みが強い場合は、鎮痛薬や筋弛緩薬を用いた薬物療法、場合によっては神経ブロック注射などで対処します。

腰椎に対する理学療法やリハビリも重要です。専門家の指導のもと、インナーマッスルを鍛えることで腰の安定性を高め、日常生活での痛み軽減と再発予防につなげます。

手術が選択肢となるのは、重度の症状がある場合や、長期間の保存療法でも効果が乏しい場合に限られることが多いです。

腰椎すべり症やってはいけないこととは

腰椎すべり症を悪化させたり、痛みを長引かせたりする動作や行動があります。日常で無意識にとっている姿勢や、職場や家庭内での作業の仕方を見直すことが欠かせません。

特に、急激な動きや重い物を扱うときは、腰椎に大きな負担がかかりやすいです。

骨格に大きな負担をかける動作

骨格に大きな負担をかける代表的な動作としては、重い物を腰を曲げたまま持ち上げようとするものが挙げられます。

腰椎すべり症ではずれた椎骨に負荷が集中しやすく、痛みやしびれを増幅させる原因になりかねません。中腰姿勢で長い時間過ごすことも同様にリスクが高いです。

また、ハイヒールを履いて長時間歩く場合も注意が必要です。

骨盤の角度が変わり、腰の反りが深くなってしまうと椎間関節部に過剰な負担がかかりやすく、腰椎すべり症を悪化させる恐れがあります。

通勤や外出時の靴選びや歩き方を見直すことが大切です。

骨格に負担をかけやすい動きの特徴

動きのパターン理由
重い物を腰を曲げて持ち上げる腰椎に局所的な負荷が集中する
長時間の中腰姿勢椎間板に圧力がかかり続ける
高いヒールでの歩行腰を反りやすく負担が増大する
急激な方向転換やひねりずれた椎骨が神経に刺激を与えやすい

急激なひねりや屈曲

腰椎すべり症やってはいけないことの代表格として、急激に腰をひねったり、急に大きく屈曲(前屈)したりする動作があります。

スポーツの場面で素早いターンを繰り返すと、椎骨がずれている部分で強いストレスがかかり、痛みが増すだけでなく症状を進行させる可能性もあります。

たとえばゴルフのスイングやテニスのサーブなど、腰を回転させるスポーツでは、体幹部の筋力が十分でないまま急激な動作を行うと椎骨の安定性が失われがちです。

仕事や家事の合間にふと動いたときにも急激なひねりが生じる場合があるので、動作のときに注意を払う必要があります。

日常生活での注意点

日常生活のちょっとした行動にも腰椎に負担がかかる要因があります。

たとえば洗面台で顔を洗うときや、台所作業で食器を洗うときに前かがみの姿勢を長く続けると、腰椎に負担が集中します。

腰椎すべり症の方は、軽度でもずれを抱えているため、不安定な姿勢をとったときに痛みやしびれにつながりやすいです。

デスクワークの場合は、長時間同じ姿勢でパソコンに向かうことで腰周辺の筋肉が硬直し、痛みが増幅します。

椅子の高さや机との距離、パソコンの位置などを調整し、定期的に背筋を伸ばす意識をもつことが重要です。運転も同様に座り方を工夫すると症状を緩和できる可能性があります。

日常で気をつける姿勢と動作

  • 椅子に座る際は背筋を伸ばし、足裏を床につける
  • 洗面や調理の際は腰を曲げすぎないように少し膝を曲げる
  • 長時間座るときはこまめに立ち上がり、軽く体を伸ばす
  • ソファでだらしなく座るクセをやめ、腰を立てる意識を持つ

長時間の前傾姿勢

長時間の前傾姿勢は、腰椎にかかる負荷を増大させます。

背骨が前方に折れ曲がった状態が続くと、椎間板や椎間関節への圧力バランスが崩れやすくなり、ずれた椎骨を一層不安定にしてしまうからです。

畑仕事や庭いじり、床掃除などの家事も、無理な姿勢で行うと腰に大きな負担がかかります。

腰椎すべり症の症状が強く出ているときは、なるべく腰を曲げずに作業を行う工夫が欠かせません。

道具を長い柄のものに変えたり、高さのある作業台を使ったりすると腰の角度を深くしなくても済むため、負担を軽減できる可能性があります。

腰椎すべり症してはいけない運動とは

腰椎すべり症を持つ方は、運動自体を避けるべきというわけではありません。

ただし、腰椎すべり症してはいけない運動も存在します。高強度の衝撃や急激な負荷のかかる動きは、症状を悪化させるリスクが高いためです。

痛みや不安のある方は、医療機関で相談しながら運動内容やペースを決めると安心です。

ランニングやジャンプ

腰椎すべり症で注意したい運動の1つに、ランニングやジャンプの反復があります。これらは着地時の衝撃が腰にダイレクトに伝わり、ずれた椎骨付近の神経や筋肉にストレスを与えます。

症状が比較的軽い場合でも、長時間のランニングや激しいジャンプ動作は痛みを増幅させるリスクがあります。

練習やトレーニングの一環として走る必要がある場合は、ウォーキングに切り替えるか、ランニングの時間や強度を落として負担を調整することが大切です。

クッション性の高いシューズや柔らかいグラウンドを選ぶなどの工夫も考えられますが、それでも痛みが強まるときは運動を再考する必要があります。

腰椎への負荷を軽減するランニングの工夫

ポイント具体例
シューズ選びクッション性のあるシューズを選ぶ
走行ペースの調整最初はウォーキングを混ぜながらゆっくり走る
路面の選択アスファルトよりもトラックや芝生のコース
姿勢の維持背筋を伸ばし、着地衝撃を分散するよう意識する

腰への負担が大きいスポーツ

腰椎すべり症してはいけない運動として、身体を急激にひねったり屈伸を繰り返すスポーツが挙げられます。

たとえば野球やテニス、ゴルフなどはスイング動作が多く、腰椎に回旋ストレスが強くかかります。バスケットボールやバレーボールなどジャンプ動作を多用する競技も要注意です。

これらのスポーツを行う際は、準備運動を徹底し、体幹部をしっかり温めてからプレーすることが大切です。痛みを感じたら無理をせず、一旦休んで医療機関の指導を受けるほうが安全です。

痛みを我慢して続けると、椎骨のずれが進んだり、他の部分をかばうことで二次的な障害を引き起こすリスクが高まります。

自己流トレーニングの危険性

筋力トレーニングやストレッチは腰椎すべり症の改善や予防に役立つ場合がありますが、自己流で行うと逆効果になることがあります。

たとえば、深いスクワットやデッドリフトなど、腰に高負荷がかかる種目をフォームが乱れたまま繰り返すと、椎骨のずれを助長する恐れがあります。

トレーニングをするなら、医療機関やリハビリの専門家の指導のもとで、正しいフォームを身につけることが必要です。

過度に負荷を上げたり、回数だけを追求するのではなく、腰の状態をチェックしながら無理なく進めると、安全かつ効果的に腰椎の安定性を高められます。

無理なストレッチ

体を柔軟にしようとして無理に深く腰を曲げたりひねったりするストレッチは、腰椎すべり症の方にとって危険を伴います。

脊柱への極端な屈曲や回旋を繰り返すと、ずれが大きくなったり神経への刺激が強まったりするからです。

とくに後ろから前へ強く押されるようなストレッチや、人に頼んで強引に曲げてもらう行為などは避けたほうがよいでしょう。

注意が必要なストレッチの例

  • 他者から強く押し込まれるハムストリングスのストレッチ
  • 座位で無理に腰をひねり、反動をつけるツイスト
  • ブリッジのように腰を大きく反らせる動作
  • 足首や膝を抱え込むなど、腰を深く丸めるストレッチ

腰椎すべり症と姿勢の関連

腰椎すべり症の症状には、姿勢の影響が色濃く反映されます。立ち姿や座り姿など、普段の姿勢が乱れると腰椎に余計な負担がかかりやすく、症状が長引いたり悪化したりしやすいです。

逆に、正しい姿勢を意識することで、腰椎への負荷を軽減し、再発予防にもつなげられます。

良い姿勢の定義

良い姿勢とは、頭からかかとまでが一直線に近い形で保たれ、骨格や筋肉にバランスよく力が伝わる状態を指します。

腰椎だけでなく、胸椎や頸椎のカーブも緩やかに自然なカーブを描くことが理想的です。

猫背気味の方は腰椎が後弯(後ろに丸まる)しやすく、反り腰の方は前弯が強くなり、どちらも腰椎すべり症を引き起こすリスクが高まります。

正しい立ち方のポイント

部位意識する点
頭の位置顎を引いてまっすぐ前を見る
力を抜いて自然に下げる
背中軽く胸を張り、腰が反りすぎないようにする
軽く伸ばしてまっすぐ立つ
足裏土踏まずあたりに体重を乗せ、左右のバランスを整える

姿勢の乱れと腰椎への影響

姿勢が乱れると、腰椎の前後関係や左右バランスに変化が生じます。

骨盤が前傾しすぎれば反り腰になって椎骨の後方部分が圧迫され、骨盤が後傾すれば腰が丸まりすぎて椎間板が潰れやすくなります。

どちらのケースも椎骨間のずれが大きくなる可能性があるため、普段から自分の姿勢を鏡などで確認する習慣が重要です。

筋力不足も影響します。腹筋や背筋など体幹部の筋力が弱いと、正しい姿勢を保ちづらくなり、長時間立ったり座ったりするだけで腰が痛くなります。

仕事や家事で同じ姿勢を続ける前に、体を軽く動かして筋肉をほぐすと疲労をためにくくなるでしょう。

デスクワークでの注意

デスクワークをする方は、椅子と机の高さを適切に設定し、背もたれを有効活用するだけでも腰椎への負担を減らせます。

イスに深く腰をかけることで骨盤が立ち、背筋を伸ばしやすくなります。モニターの位置が低いと首が前に出やすくなるので、目線の高さに合わせるよう調整すると良いです。

1時間以上の連続作業を避け、適宜立ち上がって伸びをしたり、軽く歩いて体を動かす時間を取りましょう。

座り続けるほどに腰椎の椎間板が圧迫され、症状を悪化させる恐れがあるため、こまめに姿勢を変えることが重要です。

睡眠時の姿勢

睡眠中も腰椎に負荷がかかることがあります。うつ伏せで寝ると腰が反りやすく、腰椎すべり症の方には推奨しにくい姿勢です。

仰向けの姿勢で膝の下にクッションを入れると、腰椎の自然なカーブを保ちやすくなります。

横向きで寝る場合は、両膝を軽く曲げて身体の背面から見て背骨が一直線になるようにすると楽に眠れる方も多いです。

マットレスや枕選びにも注意しましょう。柔らかすぎると腰が沈みすぎて姿勢が崩れ、硬すぎると痛みが生じる場合があります。

寝具店で実際に試してみたり、医療機関のアドバイスを受けるなど、腰への負担を最小限に抑える工夫が重要です。

適度な運動の重要性

腰椎すべり症の方であっても、運動を適度に行うことは大切です。まったく動かずに安静を保ちすぎると、筋力が低下してかえって腰椎の安定感が失われる可能性があります。

ただし、無理な負荷をかけると症状を悪化させるリスクがあるため、腰の状態に合わせた運動を選択することが求められます。

リハビリと軽めの体操

腰椎すべり症の治療計画の一部として、理学療法士や作業療法士の指導のもとで行うリハビリは有益です。軽めの体操やストレッチで筋肉をほぐしながら、体幹部を少しずつ鍛えます。

特に腰周りの深層筋(インナーマッスル)は、骨格を支えるうえで重要な役割を担うため、痛みが少ない範囲でのトレーニングが推奨されます。

ウォーキングなどの低負荷な有酸素運動は、血行促進と筋力維持に適しています。

急激なスピードではなく、背筋を伸ばしてキレイなフォームで歩くことを意識すると、腰椎にかかる負担を減らすことができます。

少しの距離から始めて、痛みや疲労感に合わせて歩数や時間を調整するとよいでしょう。

軽めの体操例

運動名方法の概要
ブリッジ(軽度)床に仰向けで寝て膝を立て、腰を少し浮かせる
ドローインお腹を引っ込めるようにへこませ、体幹部を意識する
軽い背伸ばし椅子に座り背筋を伸ばし、頭上で手を組んでゆっくり伸びる
キャット&ドッグ四つ這いになり、背中を丸める→反らすをゆっくり繰り返す

インナーマッスル強化

インナーマッスルは姿勢を維持し、腰椎を安定させる重要な筋肉群です。代表的な筋肉として腹横筋や多裂筋などが挙げられます。

これらが弱いと外部からの衝撃を吸収できず、腰椎のずれを助長する恐れがあります。逆にインナーマッスルがしっかり働いていると、日常生活の動作をスムーズに行いやすくなり、痛みも軽減しやすいです。

インナーマッスルを鍛える際は、体幹トレーニングやピラティスなどがおすすめです。ただし、腰椎すべり症の程度や体力に応じて負荷を調節しないと逆効果になりかねません。

プランクやサイドブリッジなどのメニューに取り組むなら、専門家のチェックを受けながらフォームを正しく保つことが肝心です。

コルセットなどのサポート

痛みが強いときや日常的に腰への負担が大きい仕事をしている方は、コルセットや腰痛ベルトなどのサポート用品を活用すると安定感を得やすいです。

これらの用品は腰椎周りを圧迫し、椎骨のずれや揺れを抑制する働きがあります。動くときの不安を減らし、トレーニングや作業に集中しやすいというメリットもあります。

ただし、装着しっぱなしで筋肉を使わない状態が続くと、かえってインナーマッスルなどの働きが衰えるリスクがあります。

状況に合わせて着用時間を決めたり、痛みの強いときや負荷の大きい作業のときだけ使ったりするなど、使い方の工夫が求められます。

専門家による指導

腰椎すべり症は症状の程度や原因が人によって異なります。同じ運動でも合う合わないがあるため、医師や理学療法士、トレーナーなど専門家によるアドバイスを受けることが大切です。

定期的にフォームや筋力の状態をチェックしてもらい、必要に応じて運動メニューを修正すると、安全に腰椎機能を高められます。

日々のコンディションに合わせてメニューをアレンジすることも重要です。痛みや疲労を感じる場合は無理をせず、休養を入れたり強度を落としたりして体を守る意識が必要です。

適度に体を動かしながら、継続的に取り組むことで腰椎の安定性と機能向上が見込まれます。

再発予防と日常管理

腰椎すべり症は、一度症状が落ち着いても再発しやすい特徴があります。普段の生活の中でこまめに腰の状態をチェックし、再度ずれや痛みを引き起こす要因を避ける意識が大切です。

特に姿勢や動作のクセ、職場環境などを改善しないままだと、痛みの繰り返しに苦しむ可能性が高くなります。

重い物の持ち上げ方

重い物を持ち上げるときに腰を丸めてしまうと、椎間板や靭帯に急激な圧力がかかります。

腰椎すべり症の方は、すでに椎骨のずれで不安定な状態なので、さらに大きな負担がのしかかりやすいです。

床から荷物を持ち上げるときは膝を曲げ、腰を伸ばしたまま太ももで荷物を支えるイメージが望ましいです。

荷物の位置も重要です。体から遠い位置で物を持とうとすると、腰にかかる負担が倍増します。抱えるようにして自分の体に近づけると、腰への負荷が分散されます。

もし物があまりにも重い場合は、分割して運ぶ、台車を使う、誰かに手伝ってもらうなど、安全策を優先すべきです。

安全な物の持ち方のポイント

  • 膝を曲げて腰をしっかり伸ばす
  • 荷物を体に密着させる
  • 背筋を意識して持ち上げる
  • 無理な重量は分けて運ぶ

普段の生活習慣

腰椎すべり症を予防するうえで、普段の生活習慣の見直しが欠かせません。栄養バランスの乱れた食事や運動不足、ストレスなどは筋力や姿勢に影響を与えます。

肥満気味の方は、体重が増えるほど腰椎への負担が大きくなるため、適度な食事制限や運動により適量の体重を維持すると再発予防に役立ちます。

十分な睡眠も腰椎の健康に関係します。寝不足が続くと回復力が低下し、筋肉や靭帯の修復が進まず、痛みを誘発しやすくなるからです。

睡眠環境や就寝前のリラックス方法を見直し、質の良い休息をとることが大切です。

職場での工夫

デスクワークの場合は椅子や机の高さ、パソコンのモニター位置を調整するだけでも腰の負担が軽減し、再発リスクを下げられます。

立ち仕事や重い物を扱う現場作業なら、補助具やアシスト器具を使ったり、同僚と協力したりして負荷を分散することを心がけると効果的です。

長時間の作業のあとには軽いストレッチを取り入れて血行を促進するのも有効です。

腰を冷やさないように腰を温められる防寒対策もあわせて行うと、筋肉のこわばりを和らげられることがあります。

上司や同僚にも腰椎すべり症のリスクを理解してもらい、作業分担などを検討すると無理をせずに続けられるでしょう。

職場で導入できる対策例

内容具体的な工夫
座り仕事椅子の高さを調整し、背もたれを活用する
立ち仕事適度に休憩を挟んで姿勢を変える
重い物の運搬台車や補助器具を使用する、複数人で分担する
周囲の理解職場の仲間と情報共有し、無理な作業をしない

定期受診のタイミング

腰椎すべり症は再発リスクがあるため、痛みがなくなっても定期的に医療機関を受診し、腰椎の状態をチェックすることがおすすめです。

レントゲンやMRIなどの画像検査で椎骨のずれの進行や神経の圧迫状況を確認し、必要に応じてリハビリ内容を見直します。

忙しくても症状が出始める前に受診する習慣をつけると、再発や悪化を未然に防ぐ可能性が高まります。

腰椎すべり症と合併症

腰椎すべり症が進行すると、周辺の神経や組織への影響だけでなく、他の部位にも思わぬ支障が生じることがあります。

日常生活の中で動きをかばうあまり、ほかの関節や筋肉に負担がかかりやすくなり、合併症を引き起こすケースがあります。

痛みやしびれにとらわれず、全身のコンディションを総合的に管理することが大切です。

坐骨神経痛

腰椎すべり症があると、坐骨神経痛を併発しやすいです。ずれた椎骨によって神経が圧迫されると、お尻から太もも裏にかけて電気が走るような痛みやしびれが出現します。

重度の場合は足先までしびれや痛みが広がり、歩行や日常生活に支障をきたすこともあります。

坐骨神経痛を自覚しやすい症状

  • 腰からお尻、太もも裏にかけての鋭い痛み
  • 長時間立っていると足が痛む
  • 座っているときに下肢がしびれる
  • 歩行時に足が重く感じる

変形性腰椎症

腰椎すべり症と似た背景を持つ疾患に変形性腰椎症があります。

加齢や日常生活の負担により、椎骨の縁に骨棘(骨のとげ)が形成されたり、椎間板がすり減ってクッション作用が弱まる病態です。

腰椎すべり症を抱えている方は、椎骨のずれによる不安定性が加わることで、変形性腰椎症の悪化も起きやすいです。

骨棘が大きくなると神経や周囲の組織を刺激し、痛みやしびれを誘発することがあります。運動療法やサポート器具の利用により、症状の進行を抑えることが大切です。

変形性腰椎症との合併は長期にわたる腰痛の原因となるため、早めの対策が望まれます。

筋力低下による他関節への影響

腰椎すべり症の痛みや不安から、腰をかばうように生活すると、全身の筋力バランスが乱れやすくなります。

とくに下肢の筋肉を十分に使わない状態が続くと、股関節や膝関節にも二次的な負担がかかり、変形性膝関節症など他の関節トラブルが起こる可能性があります。

歩き方が偏り、片足だけに重心をかけるクセがつくと骨盤の歪みを助長し、さらに腰椎の安定性が失われます。

日常的に左右対称の動きや筋力を意識することで、連鎖的な関節の不具合を予防できる場合があります。

自分の歩行時や立ち姿を録画して確認したり、専門家にチェックしてもらったりすると原因がはっきりしやすいです。

長期化によるQOL低下

腰椎すべり症が長引くと、運動機能だけでなくメンタル面や社会生活の質(QOL: Quality of Life)にも大きく影響します。

痛みによって外出や趣味が制限され、人との交流が減ることで気分の落ち込みを招く方も少なくありません。

こうした状態が続くと、心身の健康を維持しにくくなり、さらに症状が悪循環を起こす恐れがあります。

痛みの影響が日常生活に広がり始めたと感じたら、早めに医療機関やカウンセラーに相談するなどの対応が重要です。

家族や友人への相談やサポートを受けることで、孤立感を減らし、適切なケアを継続するモチベーションにもつながります。

Q&A

腰椎すべり症について、患者さんから寄せられることが多い疑問をまとめました。

自己判断での対処は危険な場合もあるため、気になる点があれば早めに医療機関で相談することをおすすめします。

腰椎すべり症は改善しますか

症状の度合いや原因によって異なりますが、適切な治療とリハビリを続けると改善が見込めるケースが多いです。

安静だけを優先して筋力が落ちてしまうと、椎骨のずれが進行したり、痛みが長引くリスクがあります。専門家の指導のもとで運動や生活習慣を見直しつつ、腰椎の安定性を高めることが大切です。

安静にすべき期間はどのくらい

急性期で強い痛みがある場合は、短期間の安静が必要なこともありますが、極端な安静は推奨されにくいです。

数日から1週間程度は無理を避けつつ、痛みが落ち着いてきたら医師や理学療法士の指示のもとで軽い運動やストレッチを始めるほうが、回復と再発予防の面でメリットが大きいです。

痛みが改善しない場合の対処法

薬物療法やリハビリ、ブロック注射などを行っても痛みが引かない場合は、手術を検討する選択肢があります。手術には固定術や除圧術など複数の方法があり、症状の原因と程度に合わせて医師が判断します。

ただし、手術後にもリハビリや生活習慣の改善が必要です。手術だけで完全に治ると思い込まず、継続的なケアを心がけることが大切です。

装具はいつまで装着しますか

コルセットや腰痛ベルトは腰椎の安定を補強し、痛みを軽減するために役立ちます。ただし、長期の常用で筋力が落ちる可能性もあるため、医師の指示に従いながら装着時間や期間を決めることが推奨されます。

痛みが和らぎ、日常動作が楽になってきたら徐々に装着時間を減らし、筋力強化や姿勢改善へ移行するのが一般的です。

以上

参考文献

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Author

北城 雅照

医療法人社団円徳 理事長
医師・医学博士、経営心理士

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