足立慶友医療コラム

内反膝の原因と特徴|予防と改善に向けた取り組み

2025.05.02

膝の内側が狭まり、見た目だけでなく歩行や立ち上がりにも影響を及ぼす状態は気になりやすいものです。

加齢や姿勢のくせ、運動不足などが重なると膝関節に負担がかかり、痛みや変形を引き起こす場合があります。膝の内側が変形しやすい内反膝を放置すると、さらに悪化して日常生活に支障が出ることがあります。

適切な予防と改善を目指すための知識を身につけ、症状を緩和しながら健康な膝を維持する方法を一緒に考えてみましょう。

内反膝とはどのような状態か

膝が内側に変形した状態を指す内反膝とは、左右の脚を揃えた際に膝が内側へ寄り過ぎる変化を示します。

見た目だけでなく、歩き方や膝への負荷が大きく変わりやすくなる点が特徴です。

加齢や生活習慣、体重増加などの複数の要因が重なると症状が進みやすく、膝を伸ばしたり曲げたりする動作が制限されることもあります。

内反膝の名称が示すもの

膝が内側へ曲がった形状を「内」へ「反」ると表現し、内反膝の呼称に結びつきました。

比較的初期の段階では外見の変化が分かりにくい場合がありますが、歩行や日常動作のなかで少しずつ違和感が生じるケースがあります。

内反膝が引き起こす主な症状

軽度の段階では痛みを伴わず、歩きづらさや足の疲れやすさを感じる程度にとどまることもあります。進行すると次のような症状が生じる可能性があります。

  • 膝の内側に強い痛みを感じる
  • 階段の昇降がつらくなる
  • 歩行速度が遅くなり疲れやすくなる

自己判断の難しさ

初期には、加齢や運動不足による筋力低下と混同し、内反膝原因を見過ごすことがあります。

外見的に大きな変形を起こさない限り、専門的な診察を受けないまま見落とされることがあるため、少しでも違和感があれば整形外科を受診してみることが大切です。

主な内反膝の特徴と変化

特徴具体的な変化
膝の内側への負荷増加膝関節の内側に体重がかかりやすく、痛みが出やすい
脚の軸が崩れる大腿骨や脛骨の配列が不均衡になり、重心バランスが乱れる
関節の変形長期間放置すると軟骨がすり減り、変形が進行する
日常動作への影響歩行や立ち上がりがつらくなり、生活の質が下がる

内反膝原因を探るための背景

見た目の変化や痛みの訴えによって気づくことが多い内反膝は、複数の要因が絡み合うことが少なくありません。

生活習慣や筋力、年齢による変性だけでなく、運動不足や肥満なども影響を及ぼすため、一概に1つの要素だけを改善しても十分な効果が得られにくい場合があります。

加齢と軟骨の変性

加齢に伴い、膝の軟骨がすり減ってしまうと骨同士の接触が増え、関節の変形リスクが高まります。

軟骨の弾力が失われると衝撃吸収能力が低下し、膝の内側への負担が蓄積しやすくなります。これが内反膝原因の代表的なひとつです。

筋力の低下が及ぼす影響

大腿四頭筋やハムストリングスなど、膝を支える筋力が低下すると関節を安定させる機能が弱まります。

筋力低下は特に中高年以降に顕著になりやすく、運動量の減少や体重増加と相まって変形が進行しやすくなるため、日常的なトレーニングが重要です。

生活習慣や姿勢による負担

長時間の立ち仕事や、片側荷重が多い日常動作などで、膝関節に偏った力が加わり続けると変形につながりやすくなります。猫背や足を組んで座る癖なども膝のバランスを崩す原因になります。

予防に向けた基本的な考え方

内反膝を予防するうえで欠かせないのは、早い段階から生活習慣を見直すことです。日常動作や姿勢を意識するだけでも膝への過度な負荷を軽減できます。

膝関節を安定させる筋肉を整えつつ体重コントロールを行うことが重要になります。

定期的な運動の大切さ

ウォーキングや筋力トレーニングなど、膝周囲の筋肉を強化するアプローチは、予防および改善の要になります。

無理なく継続できる軽めの運動から始めると、膝への過負荷を避けながら体力を養えます。

体重コントロール

体重増加は膝関節に大きな負担を与えやすく、内反膝を助長する要因になりがちです。

食事内容を見直し、カロリーを抑えつつ良質なたんぱく質を取り入れて筋肉量を維持することで、長期的な膝の健康に繋がります。

正しい姿勢を意識する

座り方や歩き方、立ち方を意識して骨盤の傾きを整えると、膝への負荷を軽くできます。

デスクワーク中に背筋を伸ばしたり、歩行時にはできるだけまっすぐ前を向くようにすると、負担の片寄りを予防できます。

予防時に考慮したい行動と注意点

行動例注意点
軽いウォーキング靴のサイズやクッション性に配慮し、急な負荷を避ける
下半身の筋力強化(スクワット等)正しいフォームを守り、痛みを感じたら一旦休む
食事バランスの見直し過度な制限は避け、栄養を偏らせない
姿勢の矯正(デスクワーク・スマホ使用時)背もたれや机との高さを調整して猫背を回避

日常生活の中でできる改善策

痛みがある程度進行した内反膝でも、日々の生活に少しの工夫を取り入れるだけで改善に向けた手助けになります。

痛みをいきなり消すことは難しいですが、習慣化した小さなケアが将来的な症状悪化の抑制に繋がります。

家庭で簡単に取り組めるストレッチ

膝周りだけでなく、足首や股関節を柔らかく保つストレッチを行うと関節可動域が広がり、痛みを和らげるきっかけになります。

ストレッチ時は呼吸を止めずにリラックスし、筋肉の伸びを感じる程度に留めることがポイントです。

立ち上がり方の工夫

椅子から立ち上がるときに、手すりや机に軽く手を添えながら体重を移動すると膝に負担をかけすぎずに動作を安定させやすくなります。

急激に立ち上がるのではなく、重心移動を意識して膝周りの負荷を分散します。

生活空間の整備

玄関やキッチン、トイレなどの高さを自分の身長や膝の状態に合わせて調整すると膝を深く曲げなくても済みます。安全性も高まるため、膝への負荷と転倒リスクの軽減を同時に図れます。

日常改善のポイントと具体例

改善のポイント具体例
ストレッチ習慣の導入お風呂上がりや朝起きた直後に膝周りを伸ばす
立ち上がり時の負担軽減少し前傾姿勢を意識しながら、手で体重を支える
バランスを整える空間づくり室内の段差を減らし、滑らないマットを敷いて安全に
  • 柔らかい敷物で滑るリスクを下げる
  • 扉や壁に手を添えやすい動線を確保しておく
  • 履き慣れた靴を定期的に点検し、靴底のすり減り具合を把握する

リハビリテーションのアプローチ

内反膝原因への包括的な対策としてリハビリテーションが挙げられます。

医療専門職の指導のもと、筋力強化や可動域訓練などを組み合わせると、痛みの緩和や変形の進行を抑えられる可能性があります。

早期に開始するほど成果を得やすい場合が多く、定期的な通院や自主トレーニングの両立が望ましいです。

筋力強化プログラム

太ももの前側と後ろ側の筋肉を中心に、股関節周囲や体幹部の筋力も同時に強化すると、膝関節の安定性が増します。

スクワットやレッグプレスなど、適切な負荷設定のもとで段階的に負担を高めていくと効果を得やすいです。

リハビリで取り入れたい運動例

運動名方法と注意点
軽いスクワット背筋を伸ばして膝を曲げる角度を浅めにし、痛みが出たら中止
レッグエクステンション器具を用い、大腿四頭筋を意識して伸ばす。反動を使わない
ヒップアブダクション横向きに寝て上側の脚をゆっくりと持ち上げ、股関節外側を鍛える
  • 運動前後にはアイシングや軽いストレッチを行う
  • 痛みが出たら中断し、専門家に確認する
  • 継続的な筋力強化によって膝の安定を高める

可動域訓練とマッサージ

リハビリテーションでは、膝や股関節の可動域を確保するための軽いストレッチやマッサージも取り入れられます。

筋膜リリースや圧迫療法などを併用して筋肉の緊張をやわらげると、膝の曲げ伸ばしが楽になることがあります。

装具の活用

内反膝の変形が進んでいる場合、膝を安定させるサポーターやインソールなどの装具を取り入れると歩行時の痛みや不安定感を軽減できることがあります。

装具はあくまで補助的な役割のため、専門家の指示を受けながら運動療法と併用することが勧められます。

手術療法の選択肢と特徴

痛みが強く、日常生活に大きな支障をきたすほど内反膝が進んだ場合、手術によって変形を矯正する方法が検討されます。

手術を受けるかどうかは、患者さんの年齢、活動レベル、変形の度合い、痛みの状態などによって異なります。

骨切り術による矯正

膝の骨の一部を切り、角度を変えて再度固定する方法が骨切り術です。比較的若年層やスポーツなどで活動量が高い人に用いられることがあります。

自分自身の関節を温存しながら変形を調整できる利点がありますが、術後のリハビリテーションは継続的に行う必要があります。

骨切り術に関する主な利点・留意点

利点留意点
自分の関節を温存できる術後のリハビリが長期に及ぶ場合がある
スポーツなどの活動継続が見込める骨の癒合期間中は日常生活に制限がかかる
ある程度の変形を矯正しやすい痛みの緩和には個人差がある

人工関節置換術

変形が高度で骨の摩耗も激しい場合は、人工関節置換術が選択肢となります。摩耗した軟骨や骨の一部を人工の素材で置き換えて痛みを軽減し、関節機能の回復を図ります。

高齢の方で変形が大きく進行しているケースなどでは有力な方法です。

術後のリハビリとフォローアップ

手術後は痛みの軽減が期待できますが、膝の可動域を広げたり筋力をつけたりするためにリハビリが必要です。また、経過観察や再発防止のための定期的な通院が求められます。

手術だけで完結させず、術後の日常生活の管理にも注意が必要です。

整形外科クリニックでできるサポート

内反膝に対するケアは、医療機関の専門的な支援を受けることでより充実します。整形外科クリニックでは、患者一人ひとりの状態を把握し、適切な治療方針やリハビリメニューを提案できます。

痛みが強い場合や変形が顕著な場合には、医師や理学療法士との連携が大切です。

診察と画像検査による状態把握

まずは問診や視診、触診などで痛みの部位や程度、日常生活における支障を確認し、必要に応じてレントゲンやMRIなどの画像検査を行います。

これにより、変形の度合いや関節内の損傷の有無を正確に捉え、治療の方向性を決定します。

適切な運動指導や物理療法の活用

クリニックでは、リハビリ専門スタッフによる個別の運動指導を受けられることが多いです。

痛みを軽減させながら筋力強化やストレッチを行う指導を受けると、自宅でも無理なくトレーニングを続ける一助になります。

併せて温熱療法や電気治療などの物理療法を行い、痛みや腫れの緩和を図ることも可能です。

患者とのコミュニケーションとフォロー

内反膝の原因は生活習慣や加齢など多岐にわたるため、継続的なフォローが重要です。

クリニックで定期的に受診し、進捗状況や不安点を相談しながら治療計画を見直すことで、痛みの制御や変形の進行を抑えやすくなります。

整形外科クリニックでの取り組み一覧

取り組み内容
詳細な検査と診断問診や画像診断で膝の状態を正確に評価
理学療法士による運動指導痛みを加味しながら筋力強化や柔軟性向上を図る
物理療法の実施温熱や電気刺激などで痛みや腫れを緩和
カウンセリング患者の不安や疑問を話し合い、生活習慣へのアドバイス
  • 通院スケジュールを決めて経過をチェックする
  • 自分に合った器具や装具の選定を行う
  • 食事や運動に関して細やかな指導を受ける

生活習慣を見直すポイントとセルフケア

内反膝の改善や予防には日常生活での習慣づくりが欠かせません。特に食事や運動、休養のバランスを整え、膝への負荷を少しずつ軽減していくことが大切です。

継続的なセルフケアによって、クリニックでの治療効果も高まりやすくなります。

運動と休養のバランス

運動ばかりを重視すると膝を痛める場合があります。適度に休養日を設け、筋肉疲労を回復させることも大切です。

ウォーキングや自宅での軽い筋力トレーニングと、しっかりとした睡眠を組み合わせると効果的です。

日常的に取り入れたいセルフケア

ケアの種類方法と留意点
サポーターの使用関節を安定させ、痛みをやわらげることが期待できる
温熱ケア入浴や蒸しタオルを用い、血行促進を図る
アイシング運動後や痛みが強いときに冷却し炎症を抑える

栄養バランスを考えた食事

たんぱく質やビタミン、ミネラルなどをバランスよく摂取すると、筋肉や関節の健康をサポートできます。

例えば大豆製品や魚、肉、卵などの良質なたんぱく質と、緑黄色野菜などのビタミンを意識して取り入れることが大切です。

長期的な視点をもつこと

内反膝は一朝一夕で大きく変化するわけではありません。リハビリや運動、栄養面での取り組みを少しずつ続ける姿勢が痛みの軽減や変形の進行抑制に繋がります。

焦らずにできることを続ける意識が将来的な状態の維持に役立ちます。

よくある質問

内反膝については、生活習慣や運動に関して多くの疑問が寄せられます。痛みの程度や変形の進み具合も人によって異なるため、参考として一般的に尋ねられる内容を挙げます。

具体的な対処方法や治療方針は医師の診察を通じて得られる情報をもとに検討してください。

Q:運動すると膝が痛むのですが、続けるべきでしょうか?

A:痛みが続くときは無理をせず、専門医や理学療法士に相談したうえで運動強度を調整すると良いでしょう。膝が痛むまま無理に続けると、かえって状態が悪化する場合があります。

痛みが和らいでから再開し、運動量を少しずつ増やす方法が安全です。

Q:歩くときにガニ股になるのは内反膝と関係がありますか?

A:ガニ股の原因には膝だけでなく股関節や足首のアライメントにも影響が考えられます。

内反膝によって歩行時に膝の向きが不自然になり、ガニ股のように見える場合もありますが、正確な原因を判断するには専門家による評価が必要です。

Q:体重を落としただけで内反膝が良くなることはありますか?

A:体重コントロールは膝への負担を軽くするうえで有効です。ただし、体重管理だけで内反膝原因をすべて解消できるわけではありません。

筋力強化や姿勢改善など、多方面からのアプローチを併用するほうが望ましい結果につながりやすいです。

Q:手術を受けるタイミングはどのように決まりますか?

A:痛みの程度や変形の進行具合、日常生活への支障度合いなどを総合的に判断して決まります。

医師との相談のうえ、運動療法や装具による対策で痛みや変形を十分に抑えられないときに選択肢として検討するケースが多いです。

以上

参考文献

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Author

北城 雅照

医療法人社団円徳 理事長
医師・医学博士、経営心理士

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