どのような場合に股関節の関節炎を疑うべきか
歩き始めや立ち上がりの際に、股関節にズキッとした痛みや違和感を覚えたことはありませんか。
あるいは、以前は簡単にできていた靴下を履く動作や足の爪を切る動作が、最近しづらくなったと感じることはないでしょうか。
これらのサインは、もしかすると股関節の関節炎が始まっている合図かもしれません。
股関節の関節炎は、初期段階では気づきにくいことも多く、放置すると徐々に進行して日常生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。
この記事では、どのような場合に股関節の関節炎を疑うべきか、その具体的な症状から原因、ご自身でできる簡単な状態の確認方法、そして医療機関で行う検査までを、順を追って詳しく解説します。
ご自身の股関節の状態を正しく理解し、今後の対策を考えるための一助となれば幸いです。
目次
股関節の関節炎とは?基本的な理解
股関節の痛みに悩む多くの方が耳にする「関節炎」という言葉。しかし、その実態を正確に理解している方は少ないかもしれません。
ここでは、股関節の関節炎がどのような状態なのか、基本的な知識から解説します。体の構造を理解することは、ご自身の状態を把握するための第一歩です。
股関節の構造と役割
股関節は、太ももの骨である「大腿骨(だいたいこつ)」の先端にある球状の「骨頭(こっとう)」が、骨盤の受け皿である「臼蓋(きゅうがい)」にはまり込む形をしています。
この構造は、肩関節と並んで体の中で最も可動域の広い関節の一つであり、歩く、走る、座る、立つといった私たちの基本的な動作を可能にしています。
関節の表面は「関節軟骨」という滑らかで弾力のある組織で覆われており、これがクッションのように衝撃を吸収し、関節の動きをスムーズにする役割を担っています。
また、関節全体は「関節包(かんせつほう)」という袋で包まれ、その内側は滑膜(かつまく)で覆われており、関節液を分泌して軟骨に栄養を与え、潤滑油の働きをします。
股関節が担う主な機能
- 体重の支持
- 歩行などの基本的な動作
- 衝撃の吸収
関節炎が起こる原因
股関節の関節炎は、主にクッションの役割を果たす関節軟骨が、様々な要因によってすり減ることで発症します。
軟骨がすり減ると、骨同士が直接こすれ合うようになり、痛みや炎症が生じます。
この状態が「関節炎」です。初期の段階では軟骨の摩耗が軽度であるため、症状も軽いことが多いですが、進行するにつれて軟骨のすり減りが広範囲に及び、骨の変形(骨棘:こつきょく)を伴うようになります。
これが「変形性股関節症」と呼ばれる状態で、股関節の関節炎の中で最も多く見られます。
主な股関節の関節炎の種類
股関節に炎症を引き起こす疾患はいくつかありますが、原因によって分類できます。それぞれ特徴が異なるため、ご自身の症状がどれに近いかを知ることは、状態を理解する上で役立ちます。
代表的な股関節の関節炎
種類 | 主な原因 | 特徴 |
---|---|---|
変形性股関節症 | 加齢、体重、臼蓋形成不全など | 最も一般的。軟骨の摩耗により進行する。 |
関節リウマチ | 自己免疫疾患 | 複数の関節に炎症が起こりやすい。朝のこわばりが強い。 |
大腿骨頭壊死症 | 血流障害 | ステロイド剤の使用やアルコール多飲と関連することがある。 |
なぜ早期発見が重要なのか
股関節の関節炎、特に変形性股関節症は、一度すり減った軟骨が元に戻ることはないため、進行性の疾患です。
しかし、早い段階で発見し、適切な対策を講じることで、進行の速度を緩やかにし、痛みをコントロールすることは十分に可能です。
症状が軽いうちから日常生活の工夫や運動療法に取り組むことで、長期的に良好な関節機能を維持し、手術を回避できる可能性も高まります。
そのため、些細なサインを見逃さず、早い段階でご自身の状態に気づくことが何よりも大切です。
これってサインかも?股関節の関節炎で現れる初期症状
股関節の関節炎は、静かに始まることが少なくありません。日常生活の中に潜む些細な変化が、実は重要なサインである可能性があります。
ここでは、関節炎を疑うべき初期症状を具体的に解説します。ご自身の経験と照らし合わせてみてください。
動き始めの痛みやこわばり
「立ち上がりの一歩目が痛い」「長時間座った後、歩き出すときに股関節が固まったように感じる」。
これは股関節の関節炎における非常に典型的な初期症状で、「始動時痛(しどうじつう)」と呼ばれます。
関節を動かさないでいると、関節液の循環が滞り、軟骨やその周辺の組織が一時的に硬くなるために起こります。
しばらく動いているうちに痛みやこわばりが和らぐのが特徴ですが、これは関節が温まり、潤滑が改善されるためです。
この症状に心当たりがある場合、関節からの注意信号と捉えることが重要です。
長時間歩いた後の股関節の違和感
以前は何ともなかった距離を歩いただけで、股関節の付け根あたりにだるさや重いような痛みを感じるようになります。
これは、関節軟骨のクッション機能が低下し始め、歩行による衝撃を十分に吸収しきれなくなっているサインです。
初期の段階では、少し休めば痛みは治まりますが、関節炎が進行すると、より短い時間や距離で痛みが出るようになり、回復にも時間がかかるようになります。
痛みが現れやすい動作
動作 | 具体的な場面 | 感じやすい症状 |
---|---|---|
立ち上がり | 椅子やソファから立つ時 | ズキッとした鋭い痛み |
歩き始め | 長時間座った後の一歩目 | こわばり、鈍い痛み |
長距離歩行 | 買い物や散歩の後 | だるさ、重い痛み |
階段の上り下りがつらい
階段の上り下りは、平地を歩くよりも股関節に大きな負担がかかる動作です。特に、階段を上る際には体重の何倍もの負荷がかかります。
関節軟骨がすり減っていると、この負荷に耐えられず、股関節に痛みを感じやすくなります。
手すりを使わないと不安だったり、無意識に痛い方の足をかばって一段ずつ上り下りしたりするようになったら、注意が必要です。
靴下を履く、爪を切るなどの動作の困難さ
股関節の関節炎が進行すると、痛みだけでなく「可動域制限」も現れます。
これは、関節が動く範囲が狭くなることです。特に、股関節を深く曲げたり、外に開いたりする動作がしづらくなります。
そのため、「靴下を履く」「足の爪を切る」「あぐらをかく」といった日常的な動作が困難になります。
痛みはないけれど、以前より足が開きにくくなった、股関節が曲がりにくくなったと感じる場合も、関節炎が潜んでいる可能性があります。
症状の進行と変化 日常生活への影響
初期症状を放置していると、股関節の関節炎は徐々に進行し、痛みや機能障害がより深刻になります。
日常生活の様々な場面で支障が生じ、生活の質(QOL)の低下につながることも少なくありません。ここでは、症状が進行した場合にどのような変化が現れるのかを解説します。
安静にしていても痛む
初期の痛みは動作時に限定されることが多いですが、関節炎が進行し、炎症が強くなると、何もしていない安静時にも痛みを感じるようになります。
これを「安静時痛(あんせいじつう)」と呼びます。特に、夜寝ている時に痛みで目が覚めてしまう「夜間痛(やかんつう)」は、生活の質を大きく損なうつらい症状です。
この段階になると、炎症がかなり進行していると考えられます。
初期症状と進行した症状の比較
項目 | 初期症状 | 進行した症状 |
---|---|---|
痛みのタイミング | 動き始め、長時間の活動後 | 安静時、夜間 |
痛みの強さ | 軽い、鈍い痛み | 持続的、鋭い痛み |
日常生活 | 少し気になる程度 | 大きな支障が出る |
可動域の制限が顕著になる
初期に見られた可動域の制限が、さらに顕著になります。股関節が固まってしまい、曲げ伸ばしや開く動作がほとんどできなくなることもあります。
和式トイレでの動作や、お風呂で体を洗うといった日常の基本的な動作さえ困難になる場合があります。この状態は、関節軟骨の消失や骨の変形がかなり進んでいることを示唆しています。
歩行困難や跛行(はこう)
痛みが強くなり、股関節の機能が低下すると、正常な歩行が困難になります。痛みを避けるために、無意識のうちに患部をかばうような歩き方になります。
これを「跛行(はこう)」と呼びます。体を左右に揺らしながら歩いたり、痛い方の足を引きずるように歩いたりするのが特徴です。
跛行が続くと、長距離を歩くことができなくなり、杖や歩行器などの補助具が必要になることもあります。
股関節以外の部位への影響
股関節の異常は、体全体のバランスを崩す原因となります。痛い股関節をかばう歩き方(跛行)を長期間続けると、健康な方の股関節や膝、さらには腰にも過剰な負担がかかります。
このことにより、二次的に腰痛や膝の痛みを引き起こすことがあります。「股関節が痛いと思っていたら、腰まで痛くなってきた」というケースは少なくありません。
これは、体が連動して動いている証拠であり、根本的な原因である股関節の問題に対処することが重要です。
自宅でできる股関節の状態チェック
医療機関を受診する前に、ご自身の股関節がどのような状態にあるのか、ある程度把握しておきたいと考える方もいるでしょう。
ここでは、自宅で安全に行える簡単なセルフチェック方法を紹介します。ただし、痛みが強い場合は無理に行わず、あくまで目安として活用してください。
簡単なセルフチェック方法
以下の動作を、ゆっくりと慎重に行ってみましょう。左右の足で比べてみると、違いが分かりやすいかもしれません。
股関節のセルフチェック項目
チェック項目 | 確認するポイント | 注意すべきサイン |
---|---|---|
あぐらをかく | 左右の膝が同じくらい床に近づくか | 片方の膝だけが浮く、股関節に詰まり感や痛みがある |
靴下を履く動作 | 椅子に座り、スムーズに足を引き寄せられるか | 足が上がりにくい、股関節の外側や前に痛みが出る |
片足立ち | 壁などに手をついて、10秒程度安定して立てるか | 体が大きくぐらつく、支えている側の股関節に痛みが出る |
チェック時の注意点
セルフチェックは、あくまで簡易的なものです。痛みを感じた場合は、その時点ですぐに中止してください。無理に動かすと、かえって症状を悪化させる可能性があります。
また、これらのチェックで問題がなかったからといって、関節炎の可能性がゼロとは言い切れません。違和感が続く場合は、専門家である医師の判断を仰ぐことが大切です。
痛みの度合いを記録する
もし股関節に痛みがある場合、日々の痛みの変化を記録しておくことをお勧めします。
「どのような時に痛むか(朝、夜、歩行時など)」「どのような痛みか(ズキズキ、ジンジンなど)」「痛みの強さは10段階でどのくらいか」などを簡単なメモに残しておくと、医療機関を受診した際に、医師に症状を正確に伝えるための貴重な情報となります。
どのような時に医療機関を受診すべきか
以下のような状態が続く場合は、自己判断で様子を見るのではなく、整形外科の受診を検討しましょう。早期の対応が、将来の股関節の健康を守ることにつながります。
- 股関節の痛みが2週間以上続いている
- 痛みのために歩くのがつらい
- 日常生活の動作(靴下を履くなど)に支障が出ている
- 安静にしていても痛む、夜に痛みで目が覚める
股関節の関節炎になりやすい要因とは
なぜ、股関節の関節炎になる人とならない人がいるのでしょうか。発症には、生まれ持った体の特徴や、長年の生活習慣など、様々な要因が関わっています。
ご自身に当てはまるものがないか、確認してみましょう。これらの要因を知ることは、予防や対策を考える上で役立ちます。
加齢による影響
年齢を重ねることは、股関節の関節炎の最も大きな要因の一つです。長年にわたって体重を支え、動き続けてきた関節軟骨は、少しずつ弾力性を失い、すり減りやすくなります。
これは自然な変化であり、誰にでも起こりうることです。しかし、他の要因が加わることで、その進行が早まることがあります。
性別による違いとホルモンの関係
統計的に、変形性股関節症は女性に多く見られます。その背景には、骨盤の形状の違いや、女性ホルモン(エストロゲン)の影響があると考えられています。
エストロゲンには骨を丈夫に保ち、軟骨を保護する働きがありますが、閉経後に分泌が減少すると、軟骨が傷つきやすくなる可能性があります。
また、日本人の女性には、次に述べる「臼蓋形成不全」が多いことも、大きな理由の一つです。
体重と股関節への負担
股関節は、立っているだけで体重を支え、歩くときには体重の3〜4倍、階段の上り下りではさらに大きな負荷がかかります。
体重が増加すると、その分だけ股関節への負担も増大し、軟骨の摩耗を早める直接的な原因となります。
例えば、体重が1kg増えるだけで、歩行時の股関節への負荷は約3kgも増加すると言われています。適正体重を維持することは、股関節を守る上で非常に重要です。
体重増加による股関節への負荷
動作 | 股関節にかかる負荷の目安 |
---|---|
平地歩行 | 体重の3〜4倍 |
階段の上り | 体重の4〜5倍 |
走る | 体重の5倍以上 |
過去の怪我やスポーツ歴
過去に股関節を骨折したり、脱臼したりした経験がある場合、関節の形状がわずかに変化し、将来的に関節炎を発症するリスクが高まることがあります。
また、激しいスポーツを長年続けてきた方も注意が必要です。ジャンプや急な方向転換を繰り返す競技は、股関節に大きな負担をかけ、軟骨を傷つける可能性があります。
特に、成長期に過度なスポーツを行うと、骨の発育に影響を及ぼし、関節炎の原因となることがあります。
股関節に負担をかけやすいスポーツの例
- サッカー
- ラグビー
- 体操
- バレエ
医療機関で行う検査と診断の流れ
股関節の痛みが続き、整形外科を受診した場合、どのような診察や検査が行われるのでしょうか。
事前に流れを知っておくことで、不安が和らぎ、医師に症状を的確に伝える準備ができます。ここでは、一般的な検査と診断の進め方について解説します。
問診で伝えるべきこと
診察は、まず医師が患者さんの話を聞く「問診」から始まります。診断のための非常に重要な情報源となるため、できるだけ具体的に伝えることが大切です。
事前にメモを準備しておくと良いでしょう。
医師に伝えると良い情報
項目 | 伝える内容の例 |
---|---|
いつから痛むか | 「約3ヶ月前から」「先週、転倒してから」など |
どこが痛むか | 「足の付け根の前側」「お尻のあたり」など、指で示しながら |
どんな時に痛むか | 「歩き始め」「階段を上る時」「夜寝ている時」など |
どんな痛みか | 「ズキズキする」「重だるい」「電気が走るような」など |
困っていること | 「靴下が履けない」「長く歩けない」「仕事に集中できない」など |
身体診察の内容
問診の後は、医師が実際に股関節の状態を見て、触って確認する「身体診察」を行います。
これには、視診(歩き方や足の長さに左右差がないかなどを見る)、触診(押して痛みがある場所を確認する)、そして徒手検査(医師が患者さんの足を動かして、股関節の可動域や痛みが出る角度を調べる)などがあります。
少し痛みを感じることもありますが、診断のために重要な情報なので、正直に伝えましょう。
レントゲン(X線)検査でわかること
股関節の関節炎の診断において、レントゲン検査は基本となる重要な検査です。骨の状態を画像で確認することができます。
医師はレントゲン画像から、関節の隙間(関節裂隙:かんせつれつげき)の広さ、骨の変形の有無(骨棘)、骨嚢胞(こつのうほう)と呼ばれる骨の中にできる空洞などを評価し、関節炎の進行度を判断します。
必要に応じて行う追加の画像検査(MRIなど)
レントゲン検査だけでは診断が難しい場合や、より詳しい情報が必要な場合には、追加で他の画像検査を行うことがあります。
MRI検査は、レントゲンでは写らない軟骨や筋肉、靭帯といった軟部組織の状態を詳しく見ることができます。特に、初期の関節炎や、大腿骨頭壊死症が疑われる場合に有用です。
CT検査は、骨の立体的な形状をより詳細に評価するのに役立ちます。
股関節の痛みを和らげるためのセルフケア
股関節の関節炎と診断された場合でも、すぐに特別な治療が必要になるわけではありません。
多くの場合、まずは日常生活の中でできる工夫や運動によって、痛みをコントロールし、進行を予防することを目指します。ここでは、ご自身で取り組めるセルフケアについて紹介します。
日常生活での工夫
日々の暮らしの中に、股関節への負担を減らすヒントがたくさんあります。少し意識を変えるだけで、痛みの軽減につながることがあります。
日常生活での注意点
- 床に座る生活から、椅子やベッドを使う洋式の生活へ切り替える。
- 和式トイレは避け、洋式トイレを使用する。
- 重いものを持つときは、台車を利用するなど工夫する。
- 痛みが強いときは、杖を使用することも検討する。
推奨される運動と避けるべき運動
関節炎があるからといって、全く動かないのは逆効果です。適度な運動は、股関節周りの筋力を維持・向上させ、関節を安定させるために重要です。
また、血行を促進し、痛みを和らげる効果も期待できます。ただし、運動の種類を選ぶことが大切です。
運動選択のポイント
推奨される運動 | 避けるべき運動 | 理由 |
---|---|---|
水中ウォーキング、水泳 | ランニング、ジャンプ | 浮力により関節への負担が少なく、筋力強化ができるため。 |
エアロバイク(サドルは高め) | 深いスクワット、登山 | 衝撃が少なく、自分のペースで安全に行えるため。 |
股関節周囲の筋力トレーニング | コンタクトスポーツ | 関節を支える筋肉を鍛え、安定性を高めるため。 |
体重管理の重要性
前述の通り、体重は股関節の負担に直結します。もし体重が標準よりも多い場合は、減量に取り組むことが最も効果的なセルフケアの一つです。
食事内容の見直しと、股関節に負担の少ない運動を組み合わせることで、無理なく減量を目指しましょう。体重が減少すれば、痛みが劇的に改善することも少なくありません。
温熱療法と冷却療法の使い分け
痛みの性質に応じて、温める「温熱療法」と冷やす「冷却療法」を使い分けることも有効です。どちらが適切かを知っておくと、急な痛みに対応する際に役立ちます。
慢性的な鈍い痛みや、こわばりがある場合には、入浴などで股関節を温めると良いでしょう。血行が促進され、筋肉の緊張がほぐれて痛みが和らぎます。
一方、運動後などに熱感を持ってズキズキと痛む「急性痛」の場合は、炎症が起きているサインです。この場合は、氷のうなどで15分程度冷やすと、炎症を鎮めるのに役立ちます。
股関節の関節炎に関するよくある質問
最後に、股関節の関節炎に関して多くの方が抱く疑問について、Q&A形式でお答えします。
Q. 痛みは自然に治りますか?
A. 筋肉の疲労などによる一時的な痛みであれば、安静にすることで自然に治まることもあります。
しかし、関節軟骨のすり減りが原因である変形性股関節症の場合、残念ながら放置して自然に治ることはありません。
症状は徐々に進行する傾向があるため、痛みが続く場合は早めに医療機関を受診し、適切なアドバイスを受けることが重要です。
Q. サプリメントは効果がありますか?
A. グルコサミンやコンドロイチンといったサプリメントが、股関節の痛みに効果があるという話を耳にすることがあるかもしれません。
これらの成分が関節の健康に役立つ可能性を示唆する研究もありますが、現在のところ、その効果については科学的に明確な結論は出ていません。
痛みの改善を実感する方もいますが、効果には個人差が大きいのが実情です。
サプリメントに頼りすぎるのではなく、あくまで補助的なものと考え、基本となる運動療法や体重管理をしっかりと行うことが大切です。使用を考える場合は、かかりつけの医師に相談しましょう。
Q. どのような運動が良いですか?
A. 股関節に負担をかけずに筋力を強化できる運動が推奨されます。具体的には、水中ウォーキングや水泳、エアロバイクなどが代表的です。
また、お尻の筋肉(中殿筋)や太ももの筋肉(大腿四頭筋)を鍛える筋力トレーニングも、関節を安定させるために非常に有効です。
どのような運動がご自身の状態に適しているかについては、医師や理学療法士などの専門家に相談し、指導を受けることをお勧めします。
Q. 手術が必要になるのはどのような場合ですか?
A. 手術は、あくまで最終的な選択肢の一つです。
運動療法や体重管理、薬物療法といった保存的な方法を続けても痛みがコントロールできず、歩行が困難になるなど、日常生活に大きな支障が出ている場合に検討されます。
代表的な手術には、自分の骨を活かす「骨切り術」や、関節を人工のものに置き換える「人工股関節置換術」があります。
手術を行うかどうかは、年齢や活動レベル、関節の状態などを総合的に判断し、医師と十分に相談した上で決定します。
以上
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