膝の骨が出ている症状|大人の方が気をつけるべきこと
「なんだか膝の骨が出っ張ってきた気がする」「膝の特定の場所を押すと痛い」と感じていませんか?
特に大人になってから膝の骨の突出が気になる場合、単なる体型の変化だけでなく、何らかの疾患が隠れている可能性も考えられます。
放置すると痛みが増したり、歩行に支障が出たりすることもあります。
この記事では、大人の膝の骨が出てくる原因や考えられる疾患、自分でできる対処法、そして整形外科での治療について詳しく解説します。
目次
膝の骨が出ていると感じる主な原因
大人が膝の骨の突出を感じる場合、いくつかの原因が考えられます。骨そのものが変形している場合や、周辺組織の腫れによって骨が出ているように見える場合があります。
加齢による骨の変化
年齢を重ねると、骨や軟骨は徐々にすり減ったり変形したりします。
特に膝関節は体重の負荷がかかりやすいため、変形性膝関節症などが原因で骨棘(こつきょく)と呼ばれる骨のとげができ、これが突出の原因となることがあります。
膝周辺の組織の腫れ
膝の使いすぎや外傷、関節炎などによって、膝関節の内部や周辺の組織(滑液包など)が炎症を起こして腫れることがあります。
この腫れが、外見上、骨が出ているように見える原因となることも少なくありません。
膝の腫れを引き起こす要因
要因 | 主な原因 | 特徴 |
---|---|---|
使いすぎ | スポーツ、長時間の立ち仕事 | 特定の動作で痛みや腫れが出やすい |
外傷 | 打撲、捻挫、靭帯損傷 | 急性の痛みと腫れ、内出血を伴うことも |
関節炎 | 変形性膝関節症、関節リウマチ | 慢性の痛み、こわばり、腫れ |
体重の増加
体重が増加すると、膝関節にかかる負担が大きくなります。
この負担が長期間続くと、関節軟骨のすり減りが早まったり、関節炎が悪化したりして、結果的に骨の変形や周辺組織の腫れにつながることがあります。
特定の疾患
変形性膝関節症や関節リウマチ、痛風、腫瘍(良性・悪性)など、特定の疾患が膝の骨の突出や腫れの原因となることもあります。
自己判断せず、専門医の診察を受けることが重要です。
考えられる膝の疾患
膝の骨が出ているように見える場合、以下のような疾患の可能性があります。症状が続く場合は、早めに整形外科を受診しましょう。
変形性膝関節症
加齢や体重増加、過去の怪我などが原因で、膝関節の軟骨がすり減り、骨が変形する疾患です。初期症状としては、立ち上がりや歩き始めの痛み、階段昇降時の痛みなどが見られます。
進行すると、膝が腫れたり、O脚やX脚変形が目立ったり、骨棘による骨の突出が見られたりします。
変形性膝関節症の進行度と症状
進行度 | 主な症状 | レントゲン所見 |
---|---|---|
初期 | 動き始めの痛み、こわばり | 軟骨の軽度な摩耗 |
中期 | 階段昇降時の痛み、正座困難、腫れ | 関節の隙間が狭くなる、骨棘の形成 |
末期 | 安静時痛、歩行困難、著しい変形 | 関節の隙間消失、骨の著しい変形 |
関節リウマチ
自己免疫疾患の一つで、関節の滑膜に炎症が起こり、進行すると軟骨や骨が破壊されます。膝関節にも発症しやすく、朝のこわばり、関節の腫れや痛み、熱感などが特徴です。
左右対称に関節症状が出やすい傾向があります。
滑液包炎(かつえきほうえん)
膝の周りには、衝撃を吸収したり、腱や筋肉の滑りを良くしたりするための滑液包という袋状の組織があります。
膝の使いすぎや打撲などが原因で滑液包に炎症が起こると、腫れて水が溜まり、骨が出ているように見えることがあります。膝蓋骨(お皿)のすぐ上や下に腫れが見られることが多いです。
オスグッド・シュラッター病(成人期遺残)
成長期に膝下の骨(脛骨粗面)が突出するオスグッド・シュラッター病は、通常は成長が止まると痛みは治まります。
しかし、成人になっても骨の突出が残り、スポーツや膝をつく動作で痛みが再発することがあります。これを成人期遺残オスグッド病と呼びます。
オスグッド・シュラッター病 成人期遺残の特徴
項目 | 内容 |
---|---|
原因 | 成長期の骨の突出が残存 |
症状 | 膝下の骨の突出、運動時や圧迫時の痛み |
なりやすい人 | 成長期にオスグッド病を経験した人 |
自分でできる対処法と注意点
膝の骨の突出や痛みが軽度な場合、セルフケアで症状が和らぐこともあります。ただし、症状が悪化する場合や原因がはっきりしない場合は、必ず医療機関を受診してください。
安静とアイシング
痛みや腫れがある場合は、まず膝への負担を減らすことが大切です。無理な運動や長時間の歩行は避け、安静にしましょう。
特に運動後や痛みが強いときは、患部を冷やす(アイシング)ことで炎症を抑える効果が期待できます。ただし、冷やしすぎには注意が必要です。
適度な運動とストレッチ
痛みが落ち着いている時期には、膝周りの筋肉を強化する運動や、柔軟性を高めるストレッチが有効です。特に太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)を鍛えることは、膝関節の安定につながります。
ただし、痛みを感じる場合は無理に行わないでください。
自宅でできる簡単な膝周りの運動
運動名 | 方法 | 注意点 |
---|---|---|
大腿四頭筋セッティング | 仰向けで膝を伸ばし、膝裏を床に押し付けるように太ももに力を入れる | 5秒キープを10回程度。腰が反らないように注意 |
膝伸ばし(椅子) | 椅子に座り、片方の膝をゆっくり伸ばしきる。 | 5秒キープしゆっくり下ろす。左右10回ずつ |
足首の曲げ伸ばし | 椅子に座るか仰向けで、足首をゆっくり曲げ伸ばしする | ふくらはぎの血行促進 |
体重管理
肥満は膝への負担を増大させます。適正体重を維持することは、膝の痛みの予防や改善に非常に重要です。
バランスの取れた食事と、膝に負担の少ない運動(水泳など)を組み合わせ、健康的な体重管理を心がけましょう。
サポーターの使用
膝用のサポーターは、関節の安定性を高めたり、保温効果によって痛みを和らげたりするのに役立つ場合があります。
ただし、種類やサイズが合わないと逆効果になることもあるため、選ぶ際は医師や理学療法士に相談することをお勧めします。
整形外科での検査と診断
膝の骨の突出や痛みが続く場合、自己判断せずに整形外科を受診することが大切です。医師は症状や経過を詳しく聞き取り、必要な検査を行って正確な診断を下します。
問診と視診・触診
いつから症状があるか、どのような時に痛むか、過去の怪我や病気の有無などを詳しく伺います。
その後、膝の腫れや熱感、変形、押して痛む場所(圧痛点)、関節の動き(可動域)などを注意深く観察・確認します。
画像検査
診断を確定するために、画像検査を行います。一般的にはレントゲン(X線)検査で骨の変形や骨棘の有無、関節の隙間の状態を確認します。
必要に応じて、MRI検査で軟骨や靭帯、半月板、滑液包などの軟部組織の状態を詳しく調べたり、超音波(エコー)検査で炎症や水が溜まっている様子を確認したりします。
主な画像検査とその目的
検査名 | 主な目的 | わかること |
---|---|---|
レントゲン (X線) | 骨の状態を確認 | 骨の変形、骨棘、関節裂隙の狭小化 |
MRI | 軟部組織の状態を詳しく確認 | 軟骨、靭帯、半月板、滑液包の損傷や炎症 |
超音波 (エコー) | 炎症や水腫の確認 | 滑膜の肥厚、関節液の貯留、血流増加 |
関節液検査
膝に関節液(水)が溜まっている場合、注射器で関節液を少量抜き取り、その性状や成分を調べることがあります。これにより、感染症や痛風、関節リウマチなどの鑑別に役立ちます。
整形外科で行う治療法
診断に基づき、患者さん一人ひとりの状態やライフスタイルに合わせた治療計画を立てます。治療は大きく分けて、保存療法と手術療法があります。
保存療法
多くの場合、まずは手術以外の保存療法から開始します。症状の改善と進行の抑制を目指します。
- 薬物療法: 痛みや炎症を抑えるための内服薬(消炎鎮痛剤)や外用薬(湿布、塗り薬)を使用します。
- 関節内注射: ヒアルロン酸注射で関節の潤滑性を高めたり、ステロイド注射で強い炎症を抑えたりします。
- リハビリテーション: 理学療法士の指導のもと、筋力トレーニング、ストレッチ、温熱療法、電気療法などを行います。
- 装具療法: 膝サポーターや足底板(インソール)を使用して、膝への負担を軽減します。
保存療法の種類と目的
治療法 | 主な目的 | 具体例 |
---|---|---|
薬物療法 | 痛み・炎症の軽減 | 消炎鎮痛剤(内服・外用) |
関節内注射 | 潤滑・抗炎症 | ヒアルロン酸、ステロイド |
リハビリテーション | 筋力強化、可動域改善 | 運動療法、物理療法 |
装具療法 | 負担軽減、安定化 | サポーター、足底板 |
手術療法
保存療法で十分な効果が得られない場合や、症状が重度で日常生活に大きな支障が出ている場合に、手術療法を検討します。
代表的な手術には、関節鏡視下手術(関節の中をカメラで見て、損傷した組織を修復・切除する)や、人工膝関節置換術(傷んだ関節を人工の関節に置き換える)などがあります。
代表的な手術療法
手術名 | 対象となる主な状態 | 概要 |
---|---|---|
関節鏡視下手術 | 半月板損傷、滑膜炎など | 小さな切開からカメラや器具を挿入し処置 |
高位脛骨骨切り術 | O脚変形を伴う変形性膝関節症(比較的若年者) | 脛骨の一部を切り、角度を矯正して固定 |
人工膝関節置換術 | 重度の変形性膝関節症、関節リウマチ | 傷んだ関節表面を金属やポリエチレン製の人工関節に置換 |
再生医療
近年、自身の血液や脂肪組織を利用した再生医療(PRP療法、APS療法、脂肪幹細胞治療など)も選択肢の一つとして注目されています。
これは、組織の修復を促し、炎症を抑えることを目的とした治療法です。ただし、保険適用外となることが多く、効果にも個人差があります。
実施可能な医療機関は限られるため、関心がある場合は医師に相談してください。
日常生活での注意点と予防
膝の健康を保ち、症状の悪化を防ぐためには、日頃の生活習慣を見直すことが大切です。
膝に負担をかけない動作
日常生活の中で、膝に負担がかかる動作を避ける工夫をしましょう。
- 床からの立ち座りより、椅子を使う。
- 重いものを持つときは、膝を曲げて腰を落とす。
- 階段昇降は手すりを使う。
- 正座やあぐらを避ける。
靴選び
クッション性が高く、足に合った靴を選ぶことも重要です。かかとが不安定な靴や、硬すぎる靴底は膝への衝撃を増やします。必要であれば、インソール(足底板)の使用も検討しましょう。
食生活の見直し
バランスの取れた食事は、骨や軟骨の健康維持、そして体重管理に役立ちます。特にカルシウム、ビタミンD、ビタミンK、タンパク質などを意識して摂取しましょう。
よくある質問 (Q&A)
膝の骨の突出に関して、患者さんからよく寄せられる質問にお答えします。
Q1 膝の骨が出ているのは、必ず病気ですか?
A1 必ずしも病気とは限りません。体型や筋肉の付き方によって、もともと骨が目立ちやすい方もいます。
しかし、以前より目立つようになった、痛みや腫れを伴う、左右差があるなどの場合は、何らかの疾患が隠れている可能性があるため、一度整形外科で相談することをお勧めします。
Q2 痛み止めを飲み続けても大丈夫ですか?
A2 消炎鎮痛剤は痛みを和らげる効果がありますが、根本的な治療ではありません。また、長期間の使用は胃腸障害などの副作用のリスクも伴います。
医師の指示に従い、漫然と使用し続けることは避け、原因に対する治療を進めることが大切です。
Q3 サプリメントは効果がありますか?
A3 グルコサミンやコンドロイチンなどのサプリメントは、膝の健康維持を目的として広く利用されていますが、医学的な効果については、まだ十分な証拠があるとは言えません。
効果には個人差があり、治療の基本はあくまで適切な診断と医学的根拠に基づいた治療(運動療法、薬物療法、注射、手術など)です。サプリメントを使用したい場合は、まず医師に相談してください。
Q4 手術を勧められましたが、不安です。
A4 手術にはメリットだけでなく、リスクや合併症の可能性も伴います。不安を感じるのは当然です。
手術の必要性、具体的な方法、期待できる効果、リスク、術後のリハビリなどについて、納得いくまで医師の説明を聞きましょう。
セカンドオピニオン(他の医師の意見を聞くこと)も選択肢の一つです。十分な情報を得て、ご自身で納得した上で治療法を選択することが重要です。
膝の骨の突出や痛みは、様々な原因によって起こります。気になる症状があれば、放置せずに早めに整形外科を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。
以上
参考文献
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