両膝の痛みが続くときの症状と治療法|早期発見のポイント
「最近、両膝がなんとなく痛い」「階段の上り下りがつらい」と感じることはありませんか?特に中高年以降になると、多くの方が膝の不調を経験します。
両膝の痛みが続く場合、その背後には様々な原因が隠れている可能性があります。代表的なものに「両側変形性膝関節症」がありますが、他にも注意すべき状態があります。
この記事では、両膝に痛みが生じる原因、具体的な症状、ご自身でできる対処法、そして医療機関で行う検査や専門的な治療法について詳しく解説します。
目次
両膝の痛みの主な原因とは?
両膝に同時に痛みが生じる場合、単なる使いすぎだけでなく、いくつかの要因が考えられます。これらの原因を理解することは、適切な対処法を見つける第一歩となります。
加齢による変化
年齢を重ねるとともに、私たちの体には様々な変化が現れます。膝関節も例外ではありません。関節の軟骨は、長年の使用によって徐々にすり減り、弾力性を失っていきます。
また、関節を支える筋肉や靭帯も弱くなる傾向があります。これらの変化が複合的に作用し、膝に痛みが生じやすくなります。特に、50代以降になると変形性膝関節症を発症する方が増えてきます。
軟骨の摩耗と関節の変化
変化する部分 | 主な変化 | 影響 |
---|---|---|
関節軟骨 | すり減り、薄くなる | 衝撃吸収能の低下、骨同士の摩擦 |
半月板 | 損傷、変性 | クッション機能の低下、不安定感 |
骨 | 骨棘(こつきょく)の形成 | 関節の変形、可動域制限 |
関節の使いすぎや負担
日常生活や仕事、スポーツなどで膝関節に繰り返し負担がかかると、炎症や損傷を引き起こすことがあります。特に、体重の増加は膝への負担を大きくする要因の一つです。
立っているときや歩いているとき、膝には体重の数倍の負荷がかかるといわれています。重い物を運ぶ作業や、長時間立ち仕事をする方、激しいスポーツを習慣にしている方は注意が必要です。
- 長時間の立ち仕事
- 重量物の運搬
- 激しい運動やトレーニング
- 肥満
外傷や過去の怪我の影響
過去に膝を強く打ったり、捻ったりした経験がある場合、それが数年後、あるいは数十年後に痛みの原因となることがあります。
例えば、靭帯損傷や半月板損傷といった怪我は、関節の安定性を損ない、将来的に変形性膝関節症を進行させるリスクを高めます。
若い頃のスポーツ外傷などが、後々影響することも少なくありません。
全身性の病気との関連
膝の痛みは、関節リウマチや痛風といった全身性の病気の一症状として現れることもあります。
関節リウマチは、免疫系の異常により関節に炎症が起こる病気で、複数の関節に同時期に症状が出ることが特徴です。痛風は、血液中の尿酸値が高い状態が続くことで、尿酸の結晶が関節に沈着し、激しい痛みを引き起こします。
これらの病気は、膝だけでなく他の関節にも症状が出ることが多いため、全身の状態を考慮した診断が重要です。
膝の痛みを引き起こす可能性のある全身性疾患
疾患名 | 主な特徴 | 膝への影響 |
---|---|---|
関節リウマチ | 自己免疫疾患、多関節炎 | 朝のこわばり、腫れ、痛み、変形 |
痛風 | 高尿酸血症、関節炎 | 突然の激しい痛み、発赤、腫れ(足の親指に多いが膝にも起こる) |
偽痛風 | ピロリン酸カルシウム結晶沈着症 | 痛風に似た急性の関節炎(高齢者の膝に多い) |
両膝の痛みが示す代表的な症状
両膝の痛みといっても、その現れ方は様々です。初期のわずかな違和感から、日常生活に支障をきたすほどの強い痛みまで、症状の程度は幅広いです。
症状を正しく把握することが、適切な対応につながります。
初期症状を見逃さないために
膝の不調は、多くの場合、軽い症状から始まります。これらの初期サインに気づき、早めに対処することで、症状の進行を遅らせることができる場合があります。
痛みの種類と特徴
初期には、「なんとなく重だるい」「動かし始めがこわばる」といった感覚や、特定の動作(立ち上がり、歩き始め、階段昇降など)の際に軽い痛みを感じることがあります。
痛みは持続的ではなく、休むと和らぐことが多いです。
初期に感じやすい痛みの特徴
タイミング | 痛みの性質 | 備考 |
---|---|---|
動き始め(起床時、長時間座った後) | こわばり感、鈍い痛み | しばらく動かすと軽減することが多い |
階段の上り下り | 膝の前側や内側の痛み | 特に下りるときに感じやすい |
長時間の歩行後 | 疲労感とともにズキズキする痛み | 安静にすると和らぐ |
腫れや熱感の確認
膝関節に炎症が起きると、腫れや熱っぽさを感じることがあります。左右の膝を見比べて、腫れの程度や熱感を指で触って確認してみましょう。
特に痛む側に腫れや熱感がある場合は、炎症が起きているサインかもしれません。
可動域の制限
「正座がしにくい」「膝が完全に伸びない・曲がらない」といった関節の動かせる範囲(可動域)の制限も、初期症状の一つです。
以前は問題なくできていた動作が難しくなってきたら注意が必要です。
進行したときに見られる症状
膝のトラブルが進行すると、症状はより顕著になり、日常生活に大きな影響を与えるようになります。
歩行時の困難さ
歩くだけで痛みが走り、びっこを引くようになることがあります。長距離を歩くのがつらくなり、外出がおっくうになる方もいます。
痛みをかばうことで、反対側の膝や腰にも負担がかかり、新たな痛みが生じることもあります。
安静時の痛み
初期には動いたときに痛むことが多いですが、症状が進行すると、じっとしていても痛む(安静時痛)ようになったり、夜間に痛みで目が覚める(夜間痛)ようになったりすることがあります。
この状態になると、生活の質(QOL)が大きく低下します。
日常生活への支障
膝の痛みや可動域制限が強くなると、着替え、入浴、トイレといった日常の基本的な動作も困難になることがあります。また、O脚やX脚といった脚の変形が目立つようになることもあります。
この段階になると、精神的なストレスも大きくなる傾向があります。
両側変形性膝関節症の理解を深める
両膝の痛みの原因として非常に多いのが「変形性膝関節症」です。特に両方の膝に症状が出る「両側変形性膝関節症」について、その特徴や進行について理解を深めましょう。
変形性膝関節症とは何か
変形性膝関節症は、膝関節のクッションである軟骨がすり減ったり、骨の変形が生じたりすることで、痛みや腫れ、動かしにくさなどが現れる病気です。
進行性であり、徐々に関節の機能が低下していきます。主に加齢、肥満、遺伝的要因、過去の膝の怪我などが原因となると考えられています。
なぜ両膝に起こりやすいのか
変形性膝関節症は片方の膝だけに起こることもありますが、両膝に発症することも珍しくありません。これは、加齢や体重といった全身的な要因が大きく関わっているためです。
また、生活習慣や体の使い方(歩き方や姿勢の癖など)が左右対称でない場合でも、長期的には両膝に影響が及ぶことがあります。
片方の膝をかばうことで、もう一方の膝への負担が増し、結果として両膝とも症状が出るケースもあります。
進行度と分類
変形性膝関節症の進行度は、主にX線(レントゲン)画像で評価します。関節の隙間の狭さ、軟骨の下の骨の変化、骨棘(こつきょく:骨のトゲ)の有無などから総合的に判断します。
X線による評価(Kellgren-Lawrence分類 Grade0~IV)
グレード | X線所見 | 主な症状 |
---|---|---|
Grade 0 | 正常 | 症状なし |
Grade I (疑い) | わずかな骨棘形成の疑い | 軽い痛みやこわばり、または無症状 |
Grade II (軽度) | 明らかな骨棘形成、関節裂隙の軽度狭小化の可能性 | 動作時の痛み、軽い可動域制限 |
Grade III (中等度) | 中等度の骨棘形成、明らかな関節裂隙狭小化、骨硬化 | 持続的な痛み、明らかな可動域制限、O脚変形など |
Grade IV (高度) | 大きな骨棘形成、著しい関節裂隙狭小化、著明な骨硬化、骨嚢胞形成 | 強い持続的な痛み、著しい可動域制限、歩行困難 |
※この分類はあくまでX線画像上の評価であり、実際の症状の強さと必ずしも一致するわけではありません。
関節の状態変化
変形性膝関節症が進行すると、関節軟骨の摩耗だけでなく、半月板の損傷や変性、滑膜(かつまく:関節を包む膜)の炎症、さらには関節を支える靭帯のゆるみなども起こりえます。
これらの変化が複合的に絡み合い、症状を悪化させることがあります。
関連する他の膝の病気
変形性膝関節症と症状が似ていたり、合併したりすることのある他の膝の病気も存在します。
例えば、半月板損傷、靭帯損傷、膝蓋骨(膝のお皿)周囲の障害(膝蓋大腿関節症など)、滑液包炎(かつえきほうえん)などがあります。
正確な診断のためには、これらの病気との鑑別が重要です。
自分でできる両膝の痛みへの対処法
医療機関を受診する前に、あるいは専門的な治療と並行して、ご自身でできる対処法もいくつかあります。
ただし、痛みが強い場合や悪化する場合は、自己判断せずに専門医に相談することが大切です。
安静と活動のバランス
痛みが強いときは無理せず安静にすることが基本です。
しかし、過度な安静は筋力低下や関節の拘縮(こうしゅく:固まって動きにくくなること)を招くため、痛みが許容できる範囲で適度に動かすことも重要です。
このバランスを見極めることが、症状管理のポイントになります。
日常生活での注意点
普段の生活習慣を見直すことで、膝への負担を軽減できる場合があります。
- 床に直接座る(正座、あぐら)のを避け、椅子を使う
- 和式トイレではなく洋式トイレを選ぶ
- 重い荷物を持つときは、膝に負担がかからないように工夫する
正しい姿勢と動作
猫背や反り腰といった不良姿勢は、膝への負担を増やす可能性があります。正しい姿勢を意識し、立ち上がりや歩行時の動作も膝に優しい方法を心がけましょう。
例えば、立ち上がるときは手すりや壁に手をつく、階段は手すりを利用するなど、小さな工夫が大切です。
靴選びのポイント
足に合わない靴やヒールの高い靴は、膝に余計な負担をかけます。クッション性があり、足底をしっかりサポートする靴を選びましょう。靴底がすり減った古い靴も避けた方が無難です。
膝に優しい靴選びのポイント
ポイント | 具体的な内容 | 理由 |
---|---|---|
クッション性 | 衝撃吸収材が入っている、靴底が厚め | 着地時の衝撃を和らげる |
安定性 | かかとがしっかりホールドされる、適度な硬さの靴底 | 歩行時のぐらつきを防ぐ |
フィット感 | つま先に余裕があり、甲の部分は紐やベルトで調整可能 | 足の変形を防ぎ、正しい歩行を促す |
市販薬やサポーターの活用
痛みが軽い場合は、市販の痛み止めや湿布、サポーターなどが症状緩和に役立つことがあります。薬剤師に相談の上、適切に使用しましょう。
湿布や塗り薬
消炎鎮痛成分が含まれた湿布や塗り薬は、比較的副作用も少なく手軽に使用できます。
温湿布と冷湿布がありますが、急性の炎症で熱感がある場合は冷湿布、慢性的な痛みで血行を良くしたい場合は温湿布が適していることが多いですが、どちらが心地よいかで選んでも構いません。
サポーターの種類と効果
膝用サポーターには、保温効果のあるもの、関節の動きをサポートするもの、不安定感を軽減するものなど、様々な種類があります。自分の症状や目的に合ったものを選ぶことが大切です。
ただし、サポーターに頼りすぎると筋力が低下する可能性もあるため、長期間の使用については専門家のアドバイスを受けるとよいでしょう。
温熱療法と冷却療法
温める(温熱療法)か冷やす(冷却療法)かは、症状の状態によって使い分けます。
一般的に、急性の炎症や腫れ、熱感がある場合は冷却し、慢性的な痛みやこわばりには温熱療法が効果的とされます。
温熱療法と冷却療法の使い分け
療法 | 適した状態 | 主な効果 |
---|---|---|
温熱療法(入浴、ホットパックなど) | 慢性的な痛み、こわばり、血行不良 | 血行促進、筋肉の弛緩、痛みの緩和 |
冷却療法(アイスパック、冷湿布など) | 急性の痛み、腫れ、熱感、運動後の炎症 | 炎症抑制、腫れの軽減、痛みの鎮静 |
医療機関で行われる検査と診断
両膝の痛みが続く場合や、日常生活に支障が出始めた場合は、整形外科を受診することを推奨します。医療機関では、痛みの原因を正確に特定するために、様々な検査を行います。
問診と視診・触診
まず、医師が患者さんから詳しく話を聞きます(問診)。いつから、どのようなときに、どの程度痛むのか、過去の病歴や怪我の経験、生活習慣などを伝えます。
その後、膝の状態を直接見て(視診)、触って(触診)、腫れや熱感、圧痛点(押すと痛む場所)、関節の動き具合、O脚やX脚の変形の有無などを確認します。
画像検査の種類と目的
膝の状態をより詳しく調べるために、画像検査を行います。代表的なものにX線検査、MRI検査、CT検査があります。
X線(レントゲン)検査
X線検査は、骨の状態を簡便に評価できる基本的な検査です。関節の隙間の狭さ、骨棘の有無、骨の変形などを確認し、変形性膝関節症の進行度を評価します。
立位で撮影することで、体重がかかった状態での関節の状態も把握できます。
MRI検査
MRI(磁気共鳴画像)検査は、X線では写らない軟骨、半月板、靭帯、筋肉といった軟部組織の状態を詳しく評価できる検査です。
変形性膝関節症の初期変化や、半月板損傷、靭帯損傷などの診断に有用です。ただし、検査に時間がかかり、閉所恐怖症の方や体内に金属がある方は受けられない場合があります。
CT検査
CT(コンピュータ断層撮影)検査は、X線を使って体の断面を撮影する検査です。骨の立体的な構造や骨折、骨腫瘍などを詳細に評価するのに役立ちます。
MRIほどではありませんが、軟部組織もある程度評価できます。
関節液検査の必要性
膝に関節液(いわゆる「水」)が溜まっている場合、注射器で関節液を少量抜き取り、その性状や成分を調べる検査(関節穿刺・関節液検査)を行うことがあります。
関節液の色や濁り具合、含まれる細胞の種類や結晶の有無などを調べることで、変形性膝関節症、関節リウマチ、痛風、偽痛風、化膿性関節炎などの鑑別に役立ちます。
血液検査でわかること
関節リウマチや痛風など、全身性の病気が疑われる場合には血液検査を行います。
炎症反応(CRP、血沈など)の程度、リウマトイド因子や抗CCP抗体(関節リウマチの指標)、尿酸値(痛風の指標)などを調べることで、診断の手がかりを得ます。
両膝の痛みに対する専門的な治療法
診断結果に基づいて、個々の患者さんの状態や生活スタイルに合わせた治療計画を立てます。治療法は大きく分けて、手術をしない「保存療法」と、手術を行う「手術療法」があります。
保存療法
多くの場合、まずは保存療法から開始します。保存療法の目的は、痛みを和らげ、関節機能の維持・改善を図り、病気の進行を遅らせることです。
薬物療法
痛みをコントロールするために薬物を使用します。
内服薬の種類
痛みや炎症を抑えるために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェンなどが処方されます。
NSAIDsには胃腸障害などの副作用のリスクがあるため、医師の指示に従って適切に使用することが重要です。神経性の痛みに対しては、別の種類の薬剤が用いられることもあります。
注射療法の選択肢
膝関節内に直接薬剤を注入する治療法です。代表的なものに、ヒアルロン酸注射とステロイド注射があります。
代表的な膝関節内注射
注射の種類 | 主な目的・効果 | 注意点 |
---|---|---|
ヒアルロン酸注射 | 関節の潤滑、軟骨保護、痛みの軽減 | 効果には個人差あり。週1回を3~5回程度行うことが多い。 |
ステロイド注射 | 強力な抗炎症作用、痛みの即効性 | 頻繁な使用は軟骨や組織に悪影響の可能性。使用間隔や回数に注意。 |
理学療法(リハビリテーション)
理学療法士の指導のもと、運動療法や物理療法を行います。
運動療法の重要性
膝関節周囲の筋力(特に太ももの前の筋肉である大腿四頭筋)を強化する運動や、関節の可動域を維持・改善するためのストレッチングを行います。
水中ウォーキングなど、膝への負担が少ない運動も効果的です。適切な運動は、膝の安定性を高め、痛みを軽減し、日常生活動作の改善につながります。
物理療法の活用
温熱療法(ホットパック、超音波など)、電気刺激療法(TENSなど)、寒冷療法などを症状に応じて行い、痛みの緩和や血行改善、筋肉の緊張緩和などを図ります。
装具療法
膝関節の負担を軽減し、安定性を高めるために装具を使用することがあります。足底板(インソール)は、足のアーチをサポートし、歩行時のアライメント(骨の配列)を補正することで膝への負担を軽減します。
膝サポーターは、保温効果や関節の固定、不安定感の軽減などに役立ちます。O脚変形が強い場合には、O脚矯正用の装具(外側ウェッジ付き足底板など)が用いられることもあります。
手術療法
保存療法で十分な効果が得られない場合や、症状が進行し日常生活に大きな支障が出ている場合には、手術療法を検討します。
手術の目的は、痛みの除去、関節機能の再建、変形の矯正などです。
手術が必要となるケース
- 保存療法を続けても痛みが改善しない
- 日常生活が著しく困難になっている(歩行困難、身の回りのことができないなど)
- 関節の変形が高度である
代表的な手術方法
変形性膝関節症に対する代表的な手術には、関節鏡視下手術、高位脛骨骨切り術、人工膝関節置換術があります。
関節鏡視下手術(かんせつきょうしか しゅじゅつ)
小さな切開から関節鏡(カメラ)と手術器具を挿入し、モニターを見ながら行う低侵襲な手術です。主に、損傷した半月板の切除や縫合、遊離した軟骨片の除去などを行います。
変形性膝関節症の根本的な治療ではありませんが、痛みの原因となっている特定の病変を取り除くことで症状の改善が期待できます。
高位脛骨骨切り術(こういけいこつ こつきりじゅつ)
O脚変形が強く、膝の内側に負担が集中している場合に適応されることが多い手術です。
脛骨(すねの骨)の一部を切って角度を矯正し、体重がかかるラインを膝の外側に移動させることで、内側の軟骨への負担を減らします。
自分の関節を温存できるのが利点ですが、リハビリ期間が比較的長く、適応年齢も考慮されます。
人工膝関節置換術(じんこうひざかんせつ ちかんじゅつ)
傷んだ関節面を金属やポリエチレンなどでできた人工関節に置き換える手術です。痛みの除去効果が高く、関節機能の改善が期待できます。
主に進行した変形性膝関節症で、他の治療法では効果が得られない場合に行われます。人工関節には耐用年数があり、将来的に再置換が必要になる可能性も考慮します。
主な手術方法の比較
手術方法 | 主な目的 | メリット | デメリット・注意点 |
---|---|---|---|
関節鏡視下手術 | 半月板損傷の処置、軟骨片除去など | 低侵襲、回復が比較的早い | 変形性膝関節症の根本治療ではない |
高位脛骨骨切り術 | O脚変形の矯正、荷重分散の改善 | 自分の関節を温存できる | リハビリ期間が長い、適応に制限あり |
人工膝関節置換術 | 疼痛除去、関節機能の再建 | 除痛効果が高い、早期の歩行開始が可能 | 耐用年数、感染リスク、脱臼リスクなど |
手術後のリハビリ
どの手術方法を選択した場合でも、手術後のリハビリテーションは非常に重要です。
関節可動域の回復、筋力の再獲得、歩行訓練などを計画的に行い、早期の社会復帰と良好な術後成績を目指します。
早期発見・早期治療の重要性
両膝の痛み、特に変形性膝関節症のような進行性の病気においては、早期に発見し、適切な治療を開始することが、将来の膝の健康を大きく左右します。
なぜ早く気づくことが大切か
症状が軽いうちに対処を始めれば、病気の進行を遅らせたり、痛みをコントロールしやすくなったりする可能性が高まります。
軟骨のすり減りが少ない初期の段階であれば、保存療法で良好な状態を維持できることも少なくありません。
放置して重症化すると、治療の選択肢が限られたり、回復に時間がかかったりすることがあります。
進行を遅らせるためにできること
早期発見に加え、生活習慣の見直しも進行予防には大切です。適切な体重管理、膝に負担の少ない運動習慣、正しい姿勢や動作の習得などが挙げられます。
これらは、医療機関での治療と併行して、あるいは予防的に取り組むことが望ましいです。
定期的な検診のすすめ
特に50歳を過ぎたら、明らかな症状がなくても、一度整形外科で膝の状態をチェックしてもらうことを検討してもよいでしょう。
遺伝的な要因や過去の怪我など、リスク因子がある場合は、より早期からの検診が推奨されることもあります。
このことにより、自覚症状がない初期の変形性膝関節症を発見できる可能性があります。
医療機関を受診するタイミング
以下のようなサインが見られたら、早めに整形外科を受診しましょう。
- 膝の痛みが2週間以上続く
- 特定の動作(階段昇降、立ち座りなど)で常に痛む
- 膝が腫れたり、熱を持ったりしている
- 正座ができない、膝が完全に伸びない・曲がらない
- 歩くときに膝が不安定な感じがする
この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医学的アドバイスを代替するものではありません。
膝の痛みや不調でお悩みの方は、自己判断せず、必ず専門の医療機関を受診し、医師の診断と指示に従ってください。
よくある質問 (FAQ)
Q. 両膝の痛みに効果的な運動は?
A. 膝に負担をかけずに筋力を維持・向上させる運動が推奨されます。
具体的には、太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)を鍛える運動(例:椅子に座って膝を伸ばす運動)、水中ウォーキング、エアロバイクなどが挙げられます。
ただし、痛みが強いときや運動方法が分からない場合は、自己流で行わず、医師や理学療法士に相談し、適切な指導を受けるようにしてください。
Q. サプリメントは効果がありますか?
A. グルコサミンやコンドロイチン、ヒアルロン酸などのサプリメントが膝の健康のために市販されていますが、その効果については医学的に明確な結論が出ていないのが現状です。
一部の方には症状の緩和が見られることもありますが、効果には個人差が大きいです。サプリメントはあくまで補助的なものと考え、頼りすぎないようにしましょう。
使用する場合は、医師や薬剤師に相談することをおすすめします。
Q. 手術を避ける方法はありますか?
A. 変形性膝関節症などの進行を完全に止めることは難しいですが、進行を遅らせたり、症状をコントロールしたりすることで、手術を回避できる、あるいは手術の時期を遅らせることができる可能性はあります。
そのためには、早期からの適切な保存療法(体重管理、運動療法、薬物療法、装具療法など)を根気強く続けることが重要です。
医師とよく相談し、自分に合った治療計画を立て、積極的に取り組みましょう。
Q. 治療期間はどのくらいですか?
A. 治療期間は、膝の痛みの原因、症状の重症度、選択する治療法、患者さん自身の回復力や生活習慣など、多くの要因によって大きく異なります。
保存療法の場合、数週間から数ヶ月、場合によっては年単位で継続的なケアが必要になることもあります。
手術療法の場合でも、手術後のリハビリ期間を含めると、数ヶ月から半年程度の期間を見込むのが一般的です。個別の状況については、担当医に確認することが大切です。
以上
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