足立慶友医療コラム

膝の痛み改善に向けた体操と運動療法

2025.08.03

膝の痛みに悩んでいませんか。立ち上がる時や階段の上り下りで、膝に違和感や痛みを覚える方は少なくありません。この痛みは、日常生活の質を大きく下げる原因となります。

この記事では、膝の痛みを抱える方々が自宅で取り組める体操や運動療法について、詳しく解説します。

痛みの原因を理解し、ご自身の状態に合わせた適切なケア方法を知ることが改善への第一歩です。

無理のない範囲で継続できる体操を通じて、痛みを和らげ、健やかな毎日を取り戻すための一助となる情報を提供します。

なぜ膝の痛みは起こるのか?主な原因を知ろう

膝の痛みについて考えるとき、まずその原因を理解することが大切です。痛みは体からの重要なサインであり、その背景には様々な要因が隠れています。

ここでは、多くの人が経験する膝の痛みの主な原因を掘り下げ、ご自身の状況と照らし合わせながら読み進められるように解説します。

加齢による変化と軟骨のすり減り

膝の痛みの最も一般的な原因の一つが、加齢に伴う関節の変化です。

長年、体を支え続けてきた膝関節では、骨の表面を覆って衝撃を吸収する「関節軟骨」が、年齢とともに弾力性を失い、徐々にすり減っていきます。

この状態が「変形性膝関節症」です。軟骨がすり減ると、骨同士が直接こすれ合い、炎症や痛み、腫れを引き起こします。

特に朝起きた時や動き始めに膝がこわばる、正座が難しいといった症状は、この変化のサインかもしれません。

変形性膝関節症の進行イメージ

段階主な状態感じやすい症状
初期軟骨が少しすり減り始める立ち上がりや歩き始めの軽い痛み
中期軟骨のすり減りが進行し、骨の変形が始まる階段の上り下りでの明確な痛み
末期軟骨がほぼなくなり、骨の変形が進む安静時にも痛み、歩行が困難になる

筋力低下が膝に与える影響

膝関節は、太ももの前側にある「大腿四頭筋」や、裏側にある「ハムストリングス」といった大きな筋肉によって支えられています。

これらの筋肉は、歩行や走行時の衝撃を吸収し、関節を安定させる重要な役割を担います。

しかし、運動不足や加齢によってこれらの筋力が低下すると、膝関節にかかる負担が直接的に増加します。

このことにより、関節の安定性が損なわれ、軟骨のすり減りを加速させたり、関節周辺の組織に炎症を起こしたりして、痛みが生じやすくなります。

体重増加と膝への負担

体重と膝への負担は密接な関係にあります。歩行時、膝には体重の約3倍の負荷がかかるといわれています。例えば、体重が1kg増えるだけで、歩くたびに膝には3kgの追加負担がかかる計算です。

階段の上り下りでは、その負荷はさらに大きくなり、体重の6〜7倍にも達します。

体重が増加すると、この負荷が恒常的にかかり続けるため、関節軟骨の摩耗を早め、痛みを引き起こす大きな要因となります。適正体重を維持することは、膝を守る上で非常に重要です。

体重と膝への負荷の関係

動作膝にかかる負荷の目安体重60kgの場合の負荷
平地の歩行体重の約3倍約180kg
階段の上り体重の約6倍約360kg
階段の下り体重の約7倍約420kg

スポーツや事故による外傷

スポーツ活動中の急な方向転換やジャンプからの着地、あるいは交通事故や転倒などによって、膝に大きな力が加わることも痛みの原因となります。

このような外傷により、膝のクッション役である「半月板」や、関節の安定を保つ「靭帯」が損傷することがあります。

半月板損傷や靭帯損傷は、強い痛みや腫れ、膝がガクッと崩れるような不安定感(膝崩れ)を伴うことが多く、適切な処置をしないと後々まで痛みが残ったり、変形性膝関節症の進行を早めたりする可能性があります。

膝の痛みを和らげるための基本原則

膝の痛みを改善するためには、やみくもに運動を始めるのではなく、いくつかの基本的な原則を理解しておくことが大切です。

痛みの状態を見極め、適切な対応をすることで、安全かつ効果的に症状の緩和を目指せます。ここでは、運動療法を始める前に知っておきたい基本原則について解説します。

まずは安静?それとも動かすべき?

「膝が痛い時は、動かさずに安静にしているべきか、それとも動かした方が良いのか」と悩む方は多いでしょう。答えは、痛みの性質によって異なります。

急に発生した強い痛みや、熱感、腫れを伴う場合は、炎症が起きているサインです。

このような「急性期」の痛みでは、無理に動かすと症状を悪化させる可能性があるため、まずは安静を優先し、痛みが強い動作を避けることが賢明です。

一方、慢性的な鈍い痛みや、動かさないでいると逆にこわばってしまうような場合は、無理のない範囲で動かすことが、血行を促進し、筋肉の柔軟性を保つ上で効果的です。

痛みの種類に応じた初期対応

痛みの種類主な原因推奨される初期対応
急性の強い痛み(腫れ・熱感あり)外傷、急な炎症安静、冷却(アイシング)、圧迫、挙上
慢性的で鈍い痛み変形性膝関節症、筋力低下無理のない範囲での運動、温熱療法

温める?冷やす?状況に応じた対処法

温める「温熱療法」と冷やす「冷却療法(アイシング)」は、どちらも痛みを和らげるために有効ですが、使い分けることが重要です。

打ち身や捻挫、運動後などで膝が腫れて熱を持っている場合は、血管を収縮させて炎症と腫れを抑えるために、氷のうなどで15〜20分程度冷やします。

一方、変形性膝関節症のような慢性的な痛みで、特に腫れや熱感がない場合は、温めることで血行が良くなり、筋肉の緊張がほぐれて痛みが緩和します。

蒸しタオルや入浴などで心地よいと感じる程度に温めるのが良いでしょう。

運動前の準備と運動後のケア

体操や運動療法を始める前には、必ずウォーミングアップを行いましょう。

軽い足踏みやゆっくりとした屈伸運動などで筋肉を温め、関節の動きを滑らかにしておくことで、怪我の予防につながります。

運動中も、常に自分の体の声に耳を傾け、痛みを感じたら強度を落とすか、その運動を中断する勇気が必要です。

そして、運動後にはクールダウンとして、使った筋肉を中心にゆっくりとしたストレッチを行いましょう。このひと手間が、筋肉の疲労回復を助け、次回の運動へとつながります。

専門家への相談の重要性

この記事で紹介する体操や運動は、一般的な膝の痛みを想定したものです。しかし、痛みの原因や程度は人それぞれ異なります。

痛みが長期間続く場合や、日常生活に支障が出るほど強い場合、あるいは外傷が原因である場合は、自己判断で運動を続けるのではなく、必ず整形外科などの専門医に相談してください。

正確な診断に基づいた上で、理学療法士などの専門家から個々の状態に合ったリハビリ指導を受けることが、根本的な改善への最も確実な道です。

自宅でできる!膝の痛みを改善する基本の体操

膝周りの筋肉が硬くなると、関節の動きが悪くなり、痛みを引き起こしやすくなります。

ここでは、硬くなった筋肉をゆっくりと伸ばし、関節の柔軟性を取り戻すための基本的なストレッチを紹介します。

痛みを感じない、心地よい範囲で行うことがポイントです。呼吸を止めずに、リラックスして取り組みましょう。

膝を伸ばすストレッチ(大腿四頭筋)

太ももの前側にある大腿四頭筋は、膝を支える最も重要な筋肉です。この筋肉が硬くなると、膝のお皿(膝蓋骨)の動きが悪くなり、痛みの原因となります。

このストレッチで、大腿四頭筋の柔軟性を高めましょう。 まず、壁や椅子の近くに立ち、片手で支えにします。次に、伸ばしたい方の足の甲を持ち、かかとをお尻にゆっくりと引き寄せます。

太ももの前側が心地よく伸びているのを感じながら、20〜30秒間キープします。

この時、腰が反らないように注意し、膝が体よりも後ろに行き過ぎないようにしましょう。左右の足を入れ替えて、同様に行います。

大腿四頭筋ストレッチのポイント

項目内容注意点
姿勢壁や椅子で体を支えるバランスを崩さないようにする
動作かかとをお尻にゆっくり引き寄せる腰を反らさない、膝を後ろに引きすぎない
時間20〜30秒キープ呼吸を止めず、リラックスして行う

太ももの裏側を伸ばす(ハムストリングス)

太ももの裏側にあるハムストリングスが硬いと、骨盤が後ろに傾き、歩行時の姿勢が悪くなることで膝に負担がかかります。椅子に浅く腰掛け、片方の足を前に伸ばし、かかとを床につけます。

つま先は天井に向けましょう。背筋を伸ばしたまま、股関節から体を前にゆっくりと倒していきます。太ももの裏側が伸びているのを感じる位置で20〜30秒間静止します。

この時、背中が丸まらないように意識することが重要です。反対の足も同じように行います。

お尻の筋肉をほぐすストレッチ

お尻の筋肉(臀筋群)は、歩行や立ち上がり動作で重要な役割を果たし、この部分が硬いと股関節の動きが制限され、結果として膝に負担がかかります。

仰向けに寝て、両膝を立てます。片方の足首を、反対側の膝の上に乗せます。次に、床についている方の足の太ももを両手で抱え、胸の方にゆっくりと引き寄せます。

お尻から太ももの外側にかけて伸びを感じるでしょう。この状態で20〜30秒間保持し、反対側も同様に行います。

ストレッチを行う頻度と時間

種類1回あたりの時間1日のセット数
各種ストレッチ20秒~30秒2~3セットを目安に

膝周りの筋力を強化する運動療法

膝の痛みを根本的に改善するためには、ストレッチで柔軟性を高めるだけでなく、膝関節を支える筋力を強化することが必要です。

筋力トレーニングは、膝への衝撃を和らげ、関節を安定させる効果が期待できます。ここでは、膝に過度な負担をかけずに、安全に行える基本的な筋力強化運動を紹介します。

椅子に座って行う膝伸ばし運動

これは、太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)を効果的に鍛える運動です。まず、背筋を伸ばして椅子に深く腰掛けます。片方の足を床から少し浮かせ、ゆっくりと膝を伸ばしていきます。

太ももの前に力が入っていることを意識しながら、膝が完全に伸びきる手前で5秒間静止します。その後、ゆっくりと元の位置に戻します。

この動作を10回程度繰り返し、反対の足も同様に行います。足首に軽い重り(アンクルウェイト)を巻くと、負荷を高めることも可能です。

横になって行う足上げ運動

この運動は、お尻の横にある中殿筋を鍛えます。中殿筋は、歩行時に骨盤を安定させ、膝が内側に入るのを防ぐ重要な筋肉です。体の側面を下にして横になり、下側の腕で頭を支えます。

両膝は軽く曲げましょう。上側の足を、膝を伸ばしたまま、ゆっくりと天井方向へ上げていきます。

体が前後に倒れないように注意しながら、お尻の横の筋肉が使われているのを感じましょう。上げたところで少し止め、ゆっくりと下ろします。

この動きを10〜15回繰り返し、反対側も行います。

運動療法の強度設定

運動の種類回数の目安セット数の目安
膝伸ばし運動10回1~3セット
足上げ運動10~15回1~3セット
クッション寄せ運動5秒キープを10回1~3セット

クッションを使った膝寄せ運動

内ももの筋肉(内転筋群)を鍛える運動です。内転筋群は、膝の安定に関わっています。椅子に座り、両膝の間にクッションや丸めたタオルを挟みます。

そのクッションを潰すように、両膝で内側に向かってゆっくりと力を入れ、5秒間その状態を保ちます。その後、ゆっくりと力を抜きます。この動作を10回ほど繰り返します。

簡単に見えますが、内ももの筋肉を意識して行うことで、良いトレーニングになります。

水中ウォーキングの効果

もしプールを利用できる環境にあれば、水中での運動は膝の痛みを抱える方にとって非常に有効なリハビリ方法です。水中では浮力が働くため、膝関節への体重負荷が大幅に軽減されます。

このため、地上では痛みが出てしまう方でも、楽に運動を行うことができます。水の抵抗が適度な負荷となり、全身の筋力アップや心肺機能の向上にもつながります。

前に歩くだけでなく、後ろ歩きや横歩きなどを取り入れると、普段使わない筋肉もバランス良く鍛えることが可能です。

運動療法を行う上での注意点とポイント

膝の痛みを改善するための体操や運動療法は、正しく行うことで初めて効果を発揮します。焦って無理をしたり、間違った方法で続けたりすると、かえって膝を痛めてしまうこともあります。

ここでは、安全に運動を続け、その効果を最大限に引き出すための重要な注意点とポイントを解説します。

痛みを感じたら無理をしない

運動療法の最も大切な原則は「無理をしない」ことです。運動中に鋭い痛みや、これまでとは違う種類の痛みを感じた場合は、すぐにその運動を中止してください。

少し休んでも痛みが引かない場合や、運動後に膝が腫れたり熱を持ったりした場合は、その運動が現在のあなたの膝の状態に合っていない可能性があります。

痛みを我慢して続けることは、症状の悪化を招くだけです。「痛いけれど気持ちいい」と感じるストレッチは問題ありませんが、「危険な痛み」との違いを自分で見極めることが重要です。

運動を中止すべき痛みのサイン

  • 運動中に生じる鋭い、刺すような痛み
  • 運動を終えた後も続く、または悪化する痛み
  • 運動に伴って現れる膝の腫れや熱感
  • 膝が不安定になる、力が抜けるような感覚

正しいフォームを意識する

回数や時間をこなすことよりも、一つ一つの動作を正しいフォームで行うことの方がはるかに重要です。

間違ったフォームで運動を続けると、ターゲットとすべき筋肉に効かないばかりか、膝関節や他の部位に余計な負担をかけてしまいます。

初めは鏡を見ながら自分のフォームを確認したり、可能であれば専門家に一度フォームをチェックしてもらったりすると良いでしょう。

ゆっくりとした動作で、どの筋肉を使っているのかを意識しながら行うことが、正しいフォームを身につけるコツです。

継続することが最も重要

膝の痛みの改善には、ある程度の時間が必要です。数日運動しただけですぐに効果が現れるわけではありません。

大切なのは、短期間に集中して行うことではなく、少しずつでも良いので長期間にわたって「継続する」ことです。そのためには、日常生活の中に運動を組み込む工夫が必要です。

「テレビを見ながらストレッチをする」「朝起きたら必ず膝の運動をする」など、自分なりのルールを作ると続けやすくなります。

結果を焦らず、気長に取り組む姿勢が成功への鍵です。

継続のための目標設定例

目標の種類具体例ポイント
短期目標まず1週間、毎日ストレッチを続ける達成しやすい小さな目標から始める
中期目標1ヶ月後、痛みなく10分歩けるようになる具体的な行動目標を設定する
長期目標半年後、趣味の散歩を再開する生活の質の向上をイメージする

運動に適した服装と環境

運動を行う際は、動きを妨げない伸縮性のある服装を選びましょう。ジーンズのような硬い生地の服は、関節の動きを制限してしまうため適していません。

また、運動する場所の環境も大切です。滑りやすい床の上で行う場合は、滑り止めのついた靴下を履くか、ヨガマットなどを敷くと安全です。

周囲に物がない、手足を伸ばせる十分なスペースを確保することも、怪我の予防につながります。

日常生活で膝の負担を減らす工夫

体操や運動療法で膝周りを強化することと並行して、日々の生活の中で膝への負担を意識的に減らすことも、痛みの管理と改善において非常に重要です。

無意識に行っている動作や習慣が、知らず知らずのうちに膝にダメージを与えているかもしれません。ここでは、すぐに実践できる日常生活での工夫を紹介します。

歩き方を見直す

歩き方一つで、膝にかかる負担は大きく変わります。背筋を伸ばし、あごを引いて、視線は少し遠くを見るように意識しましょう。

着地する際は、かかとから静かに入り、足裏全体で体重を支え、最後につま先で地面を蹴り出すように歩きます。

大股で歩くよりも、歩幅をやや小さくして、歩くペースを少し上げる方が膝への衝撃は少ないとされています。

ドスンドスンと音を立てて歩くのは、膝に衝撃を与えている証拠なので注意が必要です。

靴の選び方とインソールの活用

履いている靴も、膝の健康に大きく影響します。クッション性が高く、かかとをしっかりとホールドしてくれる、安定感のある靴を選びましょう。

靴底が薄すぎる靴や、ヒールの高い靴は、地面からの衝撃が直接膝に伝わりやすいため、痛みを抱えている場合は避けるのが賢明です。

また、靴の中敷き(インソール)を活用するのも一つの方法です。

土踏まずをサポートしたり、衝撃を吸収したりする機能的なインソールは、足のアライメント(骨の配列)を整え、膝への負担を軽減する助けになります。

膝に優しい靴の選び方

  • かかと部分がしっかりしていて、足を安定させる
  • 靴底に適度な厚みとクッション性がある
  • つま先部分にゆとりがあり、足指が自由に動かせる

和式から洋式の生活へ

床に座る、正座をする、和式トイレを使用するといった動作は、膝を深く曲げるため、関節に大きな負担をかけます。可能な範囲で、生活様式を和式から洋式に切り替えることを検討しましょう。

例えば、食事はテーブルと椅子を使い、寝具は布団からベッドに変えるだけでも、膝を深く曲げる機会を大幅に減らすことができます。

これらの変更により、日常生活における膝の負担が軽減され、痛みの予防につながります。

食生活の改善と体重管理

前述の通り、体重管理は膝の負担を減らす上で極めて重要です。バランスの取れた食事を心がけ、過剰なカロリー摂取を避けることが基本となります。

特に、骨や軟骨、筋肉の材料となる栄養素を意識して摂取すると良いでしょう。

カルシウム、ビタミンD、タンパク質などを日々の食事にしっかり取り入れることが、膝の健康を内側から支えることにつながります。

急激なダイエットは筋肉量の低下を招くこともあるため、適度な運動と組み合わせながら、健康的に体重をコントロールすることが大切です。

膝の健康を支える栄養素

栄養素主な働き多く含まれる食品
カルシウム骨を丈夫にする牛乳、乳製品、小魚、大豆製品
ビタミンDカルシウムの吸収を助けるきのこ類、魚類、卵
タンパク質筋肉や軟骨の材料となる肉、魚、卵、大豆製品

膝の体操と運動療法に関するよくある質問

ここまで膝の痛みを改善するための様々な情報をお伝えしてきましたが、実際に体操や運動を始めるにあたって、さらに具体的な疑問が浮かんでくることでしょう。

ここでは、多くの方から寄せられる質問とその回答をまとめました。ご自身の状況と照らし合わせながら、リハビリを進める上での参考にしてください。

体操は1日に何回くらい行うのが良いですか?

運動の頻度は、その方の体力や膝の状態によって異なりますが、一般的には「毎日少しずつ」が理想です。

例えば、各種ストレッチや筋力トレーニングを、それぞれ10回1セットとして、1日に2〜3セット行うのが一つの目安です。

一度にまとめて行うよりも、朝と晩に分けるなど、生活の中に組み込んで習慣化させることが継続のコツです。

大切なのは回数よりも、正しいフォームで、痛みを感じない範囲で行うことです。

効果はどのくらいで現れますか?

効果が現れるまでの期間には個人差が大きく、一概には言えません。痛みの原因や重症度、運動を継続する頻度などによって変わります。

一般的に、筋肉の柔軟性の改善は比較的早く、数週間で感じられることがあります。

一方、筋力がついて膝が安定し、痛みが明らかに軽減したと実感するまでには、2〜3ヶ月以上かかることも珍しくありません。

焦らずに、長期的な視点でコツコツと続けることが何よりも重要です。

サポーターは使った方が良いですか?

膝用のサポーターは、関節を安定させたり、保温したりすることで、痛みを一時的に和らげる効果が期待できます。

特に、歩行時に膝の不安定感がある方や、痛みが強くて運動に踏み出せない方にとっては、安心感を得るための有効な補助具となり得ます。

ただし、サポーターに頼りすぎると、本来鍛えるべき筋肉が衰えてしまう可能性も指摘されています。

運動時や痛みが辛い時など、場面に応じて使用し、常に装着し続けるのは避けた方が良いでしょう。種類も様々なので、選ぶ際は専門家に相談することをお勧めします。

痛みが強い日でも体操は必要ですか?

痛みが普段よりも明らかに強い日や、膝が腫れて熱を持っているような日は、無理に運動を行うべきではありません。そのような日は、炎症が悪化しないように安静を優先してください。

ただし、全く動かないでいると関節が硬くなってしまうため、痛みのない範囲で足首を動かしたり、椅子に座ったまま足の指をグーパーしたりする程度の軽い動きは、血行を促進するために有効です。

痛みの波に合わせて、その日のコンディションに応じた対応をすることが大切です。

以上

参考文献

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Author

北城 雅照

医療法人社団円徳 理事長
医師・医学博士、経営心理士

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