膝をぶつけた時の痛みと対処法 – 受診の判断基準
日常生活やスポーツ中に、机の角や地面に膝を強くぶつけた経験は誰にでもあるでしょう。
その直後から続くズキズキとした痛みに、「このまま様子を見て大丈夫だろうか」「病院に行くべきか」と不安になる方は少なくありません。
軽い打撲であれば数日で痛みは和らぎますが、中には骨や靭帯など、膝の重要な組織が損傷しているケースも隠れています。
この記事では、膝をぶつけて痛いと感じた時に、ご自身でできる初期対応から、考えられる怪我の種類、そして専門医の診察を受けるべき危険なサインまで、詳しく解説します。
適切な判断と対処で、膝の健康を守りましょう。
目次
膝をぶつけた直後に確認すべきこと
膝を強くぶつけた直後は、動揺してしまいがちですが、まずは落ち着いて膝の状態を観察することが大切です。
痛みの程度だけでなく、見た目の変化や動かせる範囲などを冷静にチェックすることで、怪我の重症度をある程度把握できます。
これらの初期情報は、その後の対処法を決めたり、医療機関を受診した際に医師へ的確に症状を伝えたりするために重要な手がかりとなります。
出血や傷の有無
まず、膝の表面に傷ができて出血していないかを確認します。もし出血がある場合は、清潔なガーゼやハンカチで傷口を直接圧迫して止血します。
傷口に砂や土などの異物が付着している場合は、きれいな水で洗い流しましょう。
傷が深い、出血が止まらない、異物が取り除けないといった場合は、感染症のリスクもあるため、早めに医療機関を受診する必要があります。
腫れや熱感の状態
次に、ぶつけた方の膝と、なんともない方の膝を見比べて、腫れの程度を確認します。
ぶつけた直後から急速に腫れてくる場合は、関節内での出血(関節内血腫)が起きている可能性があります。
また、手で触れてみて、明らかに熱を持っている(熱感がある)場合も、内部で強い炎症が起きているサインです。これらの症状は、単なる打撲以上の損傷を示唆していることがあります。
腫れの程度の比較
腫れの程度 | 考えられる状態 | 対処の方向性 |
---|---|---|
ほとんどない〜軽度 | 軽度の打撲、皮下出血 | 応急処置(RICE)で様子見が可能 |
明らかに腫れている | 中等度の打撲、靭帯損傷の可能性 | 応急処置後、痛みが引かなければ受診を検討 |
急速にパンパンに腫れる | 骨折、靭帯の完全断裂、関節内血腫 | 速やかな医療機関の受診が必要 |
膝の可動域の確認
痛みのない範囲で、ゆっくりと膝を曲げたり伸ばしたりしてみましょう。健康な膝と同じくらいスムーズに動かせますか?
もし、特定の角度で激痛が走る、動かせる範囲が極端に狭い、または「ロックされた」ように動かなくなってしまう場合は、半月板の損傷や骨のかけら(遊離体)が関節に挟まっている可能性を考えます。
無理に動かすと症状を悪化させる恐れがあるため、動かせない場合はその状態のまま安静にしてください。
体重をかけられるか
壁や椅子に手をついて支えながら、ゆっくりと体重をかけてみます。少し痛むけれどなんとか立てる程度か、それとも激痛で全く体重をかけられないかを確認します。
体重をかけることができないほどの強い痛みは、骨折や靭帯の重度な損傷が疑われる危険なサインです。
この場合は、自己判断で歩き回らず、速やかに医療機関を受診することが重要です。
膝をぶつけた痛みの種類と原因
膝をぶつけた後に感じる痛みは、その性質によって原因が異なります。
「ズキズキする」「じんわり痛い」「曲げると痛い」など、痛みの感じ方を詳しく分析することで、どの組織がダメージを受けているのかを推測する助けになります。
痛みの特徴を理解し、ご自身の状態と照らし合わせてみましょう。
ズキズキする鋭い痛み
ぶつけた直後から感じる、脈打つような「ズキズキ」とした鋭い痛みは、打撲による内出血や炎症が主な原因です。
特に、骨のすぐ上でこの痛みを感じる場合は、骨の表面を覆う「骨膜」という敏感な組織が刺激されている証拠です。
痛みが非常に強く、時間が経っても全く和らがない場合は、骨にひびが入っている、あるいは骨折している可能性も否定できません。安静にしていても痛みが続くのが特徴です。
じんわり続く鈍い痛み
鋭い痛みが少し落ち着いた後も、膝の奥の方から「じんわり」「じわじわ」と続くような鈍い痛みを感じることがあります。
このタイプの痛みは、関節内部の軟骨が傷ついたり、滑膜(関節を包む膜)に炎症が起きたりしているサインかもしれません。
急激な腫れはなくても、膝に水がたまる(関節水腫)原因になることもあり、慢性的な痛みに移行する可能性もあるため注意が必要です。
痛みの種類と主な原因
痛みの種類 | 主な原因 | 考えられる損傷部位 |
---|---|---|
ズキズキする鋭い痛み | 急性の炎症、内出血 | 骨膜、皮下組織、筋肉 |
じんわり続く鈍い痛み | 慢性の炎症、軟骨損傷 | 関節軟骨、滑膜 |
曲げ伸ばしで強くなる痛み | 組織の物理的な損傷 | 靭帯、半月板、腱 |
曲げ伸ばしで強くなる痛み
安静にしているとそれほどでもないのに、歩いたり、階段を上り下りしたり、椅子から立ち上がったりする際に痛みが強くなる場合は、膝の安定性に関わる組織の損傷が疑われます。
特に、膝の靭帯やクッションの役割を果たす半月板が傷つくと、このような動作時痛が顕著に現れます。膝が「カクン」と抜けるような不安定感を伴うこともあります。
特定の場所を押すと痛む(圧痛)
膝全体が痛いというより、指で押すと特定の場所に強い痛みを感じる場合、その直下にある組織が損傷している可能性が高いです。
例えば、お皿の骨(膝蓋骨)の上や、膝の内側・外側の関節の隙間などを優しく押してみて、激痛が走る場所がないか確認しましょう。
この「圧痛」の場所は、医師が診断を行う上で非常に重要な情報となります。
自宅でできる応急処置「RICE」
膝をぶつけて痛みや腫れがある場合、医療機関を受診するまでの間や、軽症で様子を見る場合に有効な応急処置が「RICE(ライス)処置」です。
これは、Rest(安静)、Icing(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の4つの処置の頭文字をとったもので、スポーツの現場などで広く用いられています。
この処置を損傷後すぐに行うことで、内出血や炎症、腫れを最小限に抑え、回復を早める効果が期待できます。
安静(Rest)
最も重要なのは、損傷した膝にそれ以上の負担をかけないことです。痛みを感じる動作はすべて中止し、歩行も最小限に留めましょう。
可能であれば、座ったり横になったりして、膝を安静な状態に保ちます。体重をかけると痛い場合は、松葉杖の使用も検討します。
無理して動くと、損傷が悪化するだけでなく、回復が遅れる原因になります。
冷却(Icing)
腫れや熱感がある場合は、患部を冷やして血管を収縮させ、内出血や炎症を抑えます。ビニール袋に氷と少量の水を入れ、タオルで包んで患部に当てます。
1回あたり15分から20分程度を目安に、感覚がなくなったら一度外し、数時間おきに繰り返しましょう。
冷やしすぎると凍傷になる恐れがあるため、直接氷を肌に当てないように注意が必要です。
RICE処置の概要
処置 | 目的 | 具体的な方法 |
---|---|---|
Rest (安静) | 損傷の悪化を防ぐ | 患部を動かさず、楽な姿勢をとる |
Icing (冷却) | 炎症、腫れ、痛みを抑える | 氷嚢などで1回15〜20分冷やす |
Compression (圧迫) | 内出血と腫れを抑制する | 弾性包帯やサポーターで軽く圧迫する |
Elevation (挙上) | 腫れを軽減する | 患部を心臓より高い位置に保つ |
圧迫(Compression)
患部を適度に圧迫することで、内出血や腫れが広がるのを防ぎます。弾性包帯やテーピング、膝用のサポーターなどを利用して、腫れている部分を中心に軽く巻きましょう。
ただし、強く巻きすぎると血行が悪くなり、しびれや変色の原因となります。圧迫した後に指先の色が悪くなったり、しびれが強くなったりした場合は、すぐに緩めてください。
挙上(Elevation)
横になる際や座っている時に、クッションや座布団などを利用して、患部を自分の心臓より高い位置に保ちます。
このことにより、重力を利用して過剰な体液が患部に溜まるのを防ぎ、腫れの軽減を促します。特に就寝時にこの体勢を保つと、翌朝の腫れが引きやすくなります。
痛みが続く場合に考えられる膝の怪我
応急処置をしても痛みが引かない、あるいは特定の症状が続く場合、単なる打撲ではなく、膝の内部構造に何らかの損傷が生じている可能性があります。
膝をぶつけたという衝撃で起こりうる代表的な怪我について理解し、ご自身の症状と照らし合わせてみましょう。
正確な診断は医師が行いますが、可能性のある怪我を知っておくことは大切です。
打撲(打ち身)
最も頻度が高いのが打撲です。皮膚や筋肉、皮下組織が損傷し、内出血(青あざ)や腫れ、痛みを引き起こします。
多くはRICE処置と時間の経過で改善しますが、衝撃が強いと筋肉の深い部分に血腫(血のかたまり)ができ、しこりとして残ったり、痛みが長引いたりすることもあります。
通常、骨や靭帯に異常がなければ、数日から数週間で回復に向かいます。
膝蓋骨骨折(お皿の骨折)
膝の正面を強くぶつけた場合に起こりうるのが、お皿の骨である膝蓋骨の骨折です。骨折すると、激しい痛みと腫れが生じ、膝を自分で伸ばすことが困難になります。
骨折のズレが大きい場合は、手術が必要になることもあります。膝のお皿の周りを押すと激痛が走る、膝が伸ばせない、歩行が困難といった症状があれば、骨折を強く疑います。
考えられる怪我の特徴
怪我の種類 | 主な症状 | 特徴的なサイン |
---|---|---|
打撲 | 痛み、腫れ、内出血(あざ) | 時間とともに軽快することが多い |
膝蓋骨骨折 | 激しい痛みと腫れ、圧痛 | 自力で膝を伸ばせない |
靭帯損傷 | 痛み、腫れ、不安定感(膝崩れ) | 受傷時に「ブチッ」という断裂音を感じることがある |
半月板損傷 | 曲げ伸ばし時の痛み、引っかかり感 | 膝が動かなくなる「ロッキング」現象 |
靭帯損傷
膝には、前後左右の安定性を保つための4本の主要な靭帯があります。
膝をぶつけた際に、不自然な方向に力が加わることでこれらの靭帯が伸びたり、部分的に切れたり、完全に断裂したりすることがあります。
靭帯を損傷すると、痛みや腫れのほかに、膝がグラグラするような不安定感(膝崩れ)を感じるのが特徴です。特に前十字靭帯や内側側副靭帯の損傷が多く見られます。
- 前十字靭帯 (ACL)
- 後十字靭帯 (PCL)
- 内側側副靭帯 (MCL)
- 外側側副靭帯 (LCL)
半月板損傷
半月板は、大腿骨と脛骨の間にあるC字型の軟骨組織で、クッションの役割を果たしています。膝をぶつけた衝撃で、この半月板に亀裂が入ったり、割れたりすることがあります。
半月板を損傷すると、膝の曲げ伸ばしの際に痛みや引っかかり感が生じます。
損傷した半月板の一部が関節に挟まると、膝が急に動かなくなる「ロッキング」という状態になり、歩行が困難になります。
医療機関を受診するべき危険なサイン
膝をぶつけた後、多くの場合は自宅での応急処置で症状が和らぎますが、中には専門的な治療を必要とする重篤な怪我が隠れていることもあります。
どのような場合に病院へ行くべきか、その判断基準を知っておくことは非常に重要です。
以下に示すような「危険なサイン」が見られる場合は、自己判断で様子を見ずに、速やかに整形外科を受診してください。
見た目に明らかな変形がある
ぶつけた膝が、反対側の健康な膝と比べて明らかに形がおかしい、お皿の位置がずれている、通常ではありえない方向に曲がっているなど、見た目の変形がある場合は、骨折や脱臼の可能性が非常に高いです。
これは緊急を要する状態で、すぐに専門医による整復(骨を元の位置に戻すこと)や固定が必要です。患部を無理に動かさず、できるだけ早く医療機関に向かいましょう。
全く体重をかけられない、歩けない
痛みがあまりにも強くて、少しでも体重をかけると激痛が走る、あるいは全く足をつくことができない場合も、重度の損傷を示唆しています。
これは、体重を支えるべき骨(大腿骨や脛骨)の骨折や、膝の安定性に不可欠な靭帯の完全断裂などが考えられます。
このような状態で無理に歩こうとすると、損傷をさらに悪化させる危険があります。
受診の目安チェックリスト
チェック項目 | 該当する場合 |
---|---|
膝が明らかに変形している | すぐに受診 |
全く体重をかけられない | すぐに受診 |
膝がガクガクして不安定 | 早めに受診 |
強い腫れと熱感が数日引かない | 早めに受診 |
膝が動かなくなった(ロッキング) | 早めに受診 |
膝が不安定でガクガクする
歩いている時や、階段の上り下りの際に、膝が「ガクッ」と崩れるような感覚(膝崩れ)がある場合、靭帯損傷の可能性が高いです。
靭帯は膝関節を安定させるロープのような役割を担っているため、これが切れると関節が不安定になります。
この状態を放置すると、周囲の軟骨や半月板に二次的な損傷を引き起こし、将来的に変形性膝関節症に進行するリスクを高めます。
強い腫れと熱感が引かない
RICE処置を行っても、2〜3日経ってもパンパンに腫れた状態が改善しない、あるいは触ると明らかに熱い状態が続く場合は、関節内での持続的な出血や、強い炎症が起きている証拠です。
関節内に大量の血液や関節液が溜まると、痛みを増強させるだけでなく、関節軟骨に悪影響を及ぼす可能性があります。
関節の水を抜く処置(関節穿刺)が必要な場合もあります。
病院での検査と診断の流れ
整形外科を受診すると、医師はまず丁寧な問診と身体診察を行い、怪我の状態を把握します。その上で、必要に応じて画像検査などを追加し、正確な診断を下します。
どのような検査が行われるのか、その目的は何なのかを事前に知っておくと、安心して診察に臨むことができるでしょう。
ここでは、一般的な検査と診断の進め方について解説します。
問診と身体診察
最初に、いつ、どこで、どのように膝をぶつけたのか、詳しく状況を伝えます。その後、どのような痛みがあるか、どの動きで痛むか、不安定感はあるかなどを医師が質問します。
次に、医師が膝を直接見て、触って、動かして、腫れや圧痛の場所、可動域、靭帯の緩みなどをチェックします。この身体診察は、診断を下す上で非常に重要な情報源となります。
レントゲン(X線)検査
骨の状態を確認するために、まず行われる基本的な画像検査です。レントゲン検査により、骨折の有無や骨のズレ、脱臼などを明確に診断できます。
また、骨折はなくても、関節の隙間の広さなどから、軟骨のすり減り具合などを評価することもあります。多くの整形外科クリニックで迅速に撮影が可能です。
検査の種類と目的
検査方法 | 主な目的 | この検査でわかること |
---|---|---|
レントゲン検査 | 骨の異常を確認する | 骨折、脱臼、骨の変形 |
MRI検査 | 軟部組織(靭帯、半月板など)を詳しく見る | 靭帯損傷、半月板損傷、軟骨損傷、骨の内部の損傷(骨挫傷) |
CT検査 | 骨の立体的な構造や複雑な骨折を評価する | 微細な骨折、骨片の位置 |
MRI検査やCT検査
レントゲン検査で骨に異常が見られないにもかかわらず、靭帯損傷や半月板損傷が強く疑われる場合、より詳しい検査としてMRI検査が行われます。
MRIは磁気を利用して体の断面を撮影する検査で、レントゲンには写らない靭帯、半月板、軟骨、筋肉といった軟部組織の状態を詳細に描出できます。
また、CT検査はレントゲンを3Dで見るような検査で、複雑な骨折の評価に有用です。
関節穿刺(関節の水を抜く検査)
膝がパンパンに腫れて水(関節液)が溜まっている場合、注射器で関節液を抜くことがあります。これを関節穿刺といいます。
この処置は、痛みを和らげる治療的な意味合いと同時に、抜いた関節液の色や性状を調べる検査的な意味合いも持ちます。
例えば、血液が混じっていれば、関節内での骨折や靭帯断裂が強く疑われます。
膝をぶつけた後の注意点と回復を促す過ごし方
診断がつき、治療方針が決まった後も、日常生活での過ごし方が回復のスピードを大きく左右します。
痛みが強い時期の過ごし方から、症状が改善してきた後のリハビリテーションまで、段階に応じた適切なケアが重要です。
焦らず、しかし着実に回復を目指すためのポイントを理解しましょう。
痛みが引くまでの過ごし方
急性期(受傷後2〜3日)は、RICE処置を基本とします。医師から処方された消炎鎮痛薬があれば、指示通りに服用しましょう。痛みが強い間は、無理に動かす必要はありません。
歩行時に痛みがある場合は、松葉杖や杖を使用して膝への負担を減らすことが大切です。
日常生活においても、膝に負担のかかる長時間の立ち仕事や、重いものを持つ作業は避けるように心がけます。
温めるタイミングはいつからか
急性期の「冷やす」処置に対し、いつから「温める」べきか迷う方も多いでしょう。温める目的は血行を促進し、硬くなった筋肉をほぐし、回復を促すことです。
一般的には、強い腫れや熱感が引き、ズキズキとした痛みが落ち着いた後(受傷後3日〜1週間程度が目安)から温めるのが良いとされています。
温めることで痛みがぶり返す場合は、まだ炎症が残っているサインなので、冷却に戻しましょう。
冷やす?温める?判断の目安
対応 | タイミング | 目的 |
---|---|---|
冷やす (Icing) | 受傷直後〜3日程度(腫れ・熱感・ズキズキする痛みがある時) | 炎症を抑え、腫れと痛みを軽減する |
温める (Heating) | 急性期を過ぎてから(腫れ・熱感が引き、鈍い痛みに変わったら) | 血行を促進し、組織の回復を促す |
痛みが改善した後のリハビリ
痛みが和らいできたら、徐々に膝を動かすリハビリテーションを開始します。長期間安静にしていると、膝周りの筋力が低下し、関節が硬くなってしまう(拘縮)からです。
まずは痛みのない範囲で膝の曲げ伸ばし運動から始め、次に太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)に力を入れる運動などを行います。
医師や理学療法士の指導のもと、適切なプログラムを進めることが重要です。
- 足首の曲げ伸ばし運動
- 膝の曲げ伸ばし運動(痛みのない範囲で)
- 大腿四頭筋セッティング(太ももに力を入れる)
再発防止のためにできること
一度膝を痛めると、再発しやすくなることがあります。再発を防ぐためには、膝周りの筋力を維持・強化することが最も重要です。
特に大腿四頭筋を鍛えることで、膝関節が安定し、膝蓋骨への負担も軽減します。
また、スポーツを行う際は、適切なウォーミングアップとクールダウンを欠かさず行い、膝に負担のかかりにくいフォームを習得することも大切です。
よくある質問
ここでは、膝をぶつけた患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。ご自身の疑問や不安の解消にお役立てください。
湿布は貼っても良いですか?
はい、使用して問題ありません。市販の湿布薬には、炎症や痛みを抑える成分(消炎鎮痛剤)が含まれています。
冷感タイプと温感タイプがありますが、受傷直後の熱感や腫れがある時期は、冷感タイプが適しています。ズキズキする痛みが和らいだ慢性期には、温感タイプで血行を促進するのも良いでしょう。
ただし、湿布はあくまで補助的な対症療法であり、かぶれなどの皮膚トラブルには注意が必要です。
お風呂に入っても大丈夫ですか?
強い腫れや熱感がある急性期(受傷後2〜3日)は、湯船に浸かって体を温めると血行が良くなりすぎて、かえって炎症や腫れを悪化させる可能性があります。
この時期はシャワーで済ませるのが無難です。急性期を過ぎ、症状が落ち着いてきたら、ぬるめのお湯で短時間から入浴を再開しましょう。
温めることで筋肉の緊張がほぐれ、痛みが和らぐ効果も期待できます。
サポーターは有効ですか?
サポーターは、膝の安定性を高め、安心感を得る上で有効です。ただし、目的に応じて適切な種類を選ぶことが大切です。
単純な保温や圧迫が目的であれば筒状のサポーター、靭帯の不安定性がある場合は支柱付きのサポーターなど、様々な種類があります。
長時間着用しすぎると筋力低下につながる可能性もあるため、医師や理学療法士に相談の上、適切なものを必要な場面で使うようにしましょう。
サポーターの種類と主な目的
サポーターの種類 | 主な目的 | 適した状態 |
---|---|---|
スリーブタイプ(筒状) | 圧迫、保温、軽度の固定 | 軽度の打撲、痛みの軽減 |
ストラップタイプ | 膝蓋骨下を圧迫 | ジャンパー膝など |
支柱(ヒンジ)付きタイプ | 左右のブレを抑制、強力な固定 | 靭帯損傷後、スポーツ復帰時 |
子供が膝をぶつけた場合、大人と注意点は違いますか?
基本的な対処法は大人と同じですが、子供の場合は特に注意が必要です。
子供の骨には「骨端線」という成長に関わる軟骨部分があり、この部分を損傷する「骨端線損傷」を起こすことがあります。
これを放置すると、骨の成長に影響が出る可能性があります。また、子供は痛みをうまく表現できないこともあります。
大人が見て、歩き方がおかしい、膝をかばっている、腫れがひどいといった場合は、軽視せずに小児の診察に慣れた整形外科を受診させることをお勧めします。
以上
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