足立慶友医療コラム

股関節が痛くて歩けない症状が出たときの対応

2025.11.30

股関節に激痛が走り歩けない状態は、日常生活を突然停止させるほどの大きな不安と不便をもたらします。

この症状が現れた際に最も優先すべきことは、患部への負担を徹底して減らし、安静を保つことです。無理に動かすことで関節内の炎症が悪化し、回復までの期間が長引くリスクがあります。

歩行が困難なほどの痛みは、変形性股関節症の急激な悪化、骨折、あるいは感染症など、早急な治療が必要な病気が隠れているサインです。

自己判断での放置は避け、適切な初期対応を行った上で、専門的な医療機関での診断を受けることが、痛みのない生活を取り戻すための確実な第一歩となります。

急な股関節痛で動けない場合の応急処置と初期対応

歩行が困難なほどの激痛が走った直後は、無理に動かず最も痛みが少ない姿勢で安静を保つことが、症状の悪化を防ぐために重要です。

体重をかけることで股関節には体重の数倍の負荷がかかるため、痛みが引くまでは患部への荷重を極力避けてください。

炎症が強く熱感がある場合は冷やし、慢性的なこわばりが原因の場合は温めるなど、状況に応じた対処が必要です。

痛みを最小限にする楽な姿勢の取り方

股関節への負担を減らすためには、関節にかかる圧力を逃がす姿勢を見つけることが大切です。

仰向けに寝る場合は、膝の下にクッションや丸めたバスタオルを入れると、股関節が軽く曲がった状態になり、関節包や筋肉の緊張が緩みます。

横向きで寝る場合は、痛い方の足を上にし、足の間に厚めの抱き枕やクッションを挟むことで、骨盤と脚のラインが平行になり、股関節へのねじれストレスを軽減できます。

座る必要があるときは、股関節が深く曲がりすぎないよう、座面の高い椅子やソファを選び、低い椅子や床への正座は避けるようにします。

患部を冷やすべきか温めるべきかの判断基準

痛みの性質によって、冷やすか温めるかの判断は異なります。

急激に痛みが出現し、患部が熱を持っていたり腫れていたりする場合は、炎症が起きている可能性が高いため、アイシングを行います。

氷嚢や保冷剤をタオルで包み、15分から20分程度患部に当てて血管を収縮させ、炎症物質の拡散を抑えます。

一方で、以前から股関節に違和感があり、動き始めに痛むような慢性的なケースでは、温めることで血流を改善し、筋肉のこわばりをほぐすことが有効です。

入浴やホットパックを利用し、筋肉の柔軟性を高めることで痛みの緩和を図ります。

移動が必要な場合の杖や松葉杖の活用法

痛みが強くてもトイレや食事などで移動しなければならない場合は、杖や松葉杖を使用して免荷(めんか)を行うことが必要です。

杖を使用する際は、痛い足とは反対側の手に持ちます。そうすることで、痛い足をつく際に杖に体重を分散させることができ、股関節にかかる負荷を大幅に減らせます。

松葉杖を使用する場合は、脇の下に体重をかけるのではなく、手でグリップをしっかり握り、腕の力で体を支えるようにします。

脇の下の神経を圧迫しないよう注意が必要です。自己流の歩行はさらなる痛みを招くため、道具を正しく使い、歩幅を小さくしてゆっくり移動することを心がけてください。

症状別の温度管理と対処法

症状の状態適切な処置目的と効果
急な激痛・熱感・腫れアイシング(冷却)炎症を抑え、痛みの感覚を麻痺させて苦痛を和らげます。血管を収縮させ内出血や腫脹の拡大を防ぎます。
慢性的な痛み・こわばりホットパック・入浴(温熱)血行を促進し、発痛物質を流します。筋肉や関節包を柔軟にし、動きをスムーズにします。
判断がつかない場合湿布や常温での安静無理な温度刺激を避け、安静を優先します。冷湿布は気化熱で穏やかに冷やし、鎮痛成分を経皮吸収させます。

直ちに救急車や医療機関へ連絡すべき危険なサイン

股関節の痛みの中には、一刻を争う重篤な疾患が原因であるケースが存在し、ためらわず救急要請や緊急受診を行う必要があります。

特に高齢者の転倒直後や、高熱を伴う激痛は、生命に関わる合併症や急速な関節破壊につながる恐れがあるため、様子を見ずに専門家の介入を求めることが大切です。

早期発見と早期治療が、後遺症を防ぐ鍵となります。

転倒や打撲直後に立てなくなった場合

転倒や衝突などの外傷があった直後に股関節が痛んで立てない場合、大腿骨頸部骨折などの骨折が疑われます。

特に高齢者や骨粗鬆症の方は、立った姿勢から尻もちをつくだけでも骨折することがあります。骨折した状態で無理に動かすと、骨のずれが大きくなり、血管や神経を傷つける危険性があります。

足の付け根に激痛があり、足を動かせない、あるいは痛い方の足が外側を向いて短く見えるような場合は、骨折の可能性が極めて高いため、絶対に動かさず、その場で救急車を呼ぶ必要があります。

高熱や悪寒を伴う激しい痛みと腫れ

股関節の痛みと共に38度以上の発熱や悪寒、震えがある場合は、化膿性股関節炎などの感染症が疑われます。細菌が関節内に侵入し、急速に軟骨や骨を破壊する病気です。

小児や免疫力が低下している方に発症しやすく、進行が早いため、数日の放置で関節機能が廃絶する恐れがあります。

また、全身に菌が回ると敗血症となり、命に関わる事態に発展することもあります。夜間であっても救急外来を受診し、抗生物質の投与や洗浄手術などの緊急処置を検討する必要があります。

安静にしていても痛みが激化する場合

どのような姿勢をとっても痛みが治まらず、むしろ時間とともに痛みが激しくなる場合も注意が必要です。

これは、骨の中に腫瘍ができている場合や、大腿骨頭壊死症による骨の圧潰(あっかい)、あるいは内臓疾患からの放散痛である可能性があります。

特に冷や汗が出るほどの激痛や、意識が遠のくような痛みは、大動脈解離や重篤な腹部疾患が股関節痛として感じられているケースも稀にあります。

一般的な筋肉痛や関節痛とは明らかに異なる耐えがたい痛みを感じた際は、迷わず医療機関に助けを求めてください。

緊急対応が必要な症状チェックリスト

  • 転倒後、足の付け根が痛くて全く動かせない、または足が不自然な方向を向いている。
  • 股関節の痛みと同時に38度以上の発熱があり、患部が赤く腫れあがっている。
  • 安静にしていても激痛が続き、夜も眠れないほどの痛みが数日以上続いている。
  • 足の感覚がなくなり、つま先を動かすことができない、または排尿排便のコントロールができない。
  • 過去にがんの治療歴があり、股関節に原因不明の強い痛みが出現した。

股関節が痛くて歩けなくなる主な原因と病気

歩行困難を引き起こす股関節の痛みには、加齢による変性、血流障害、免疫異常など、多岐にわたる原因が存在します。

それぞれの病気には特徴的な発症パターンや痛みの性質があり、原因を正しく理解することは、適切な治療方針を決定するために不可欠です。ここでは代表的な疾患について詳しく解説します。

中高年に多い変形性股関節症の進行

股関節痛の原因として最も多くの割合を占めるのが変形性股関節症です。

長年の使用や先天的な臼蓋形成不全(被りが浅い状態)などが原因で、関節の軟骨がすり減り、骨同士が直接ぶつかるようになります。

初期は立ち上がりや動き始めの痛みから始まりますが、進行すると安静時にも痛むようになり、関節の可動域が著しく制限されます。

末期になると、股関節が伸びなくなり、歩行時に体が左右に揺れるような歩き方になるのが特徴です。歩けなくなるほどの痛みは、急激な炎症期や、軟骨が消失した末期に見られます。

突発的な激痛を生む大腿骨頭壊死症

大腿骨頭壊死症は、大腿骨の頭(ボール部分)への血流が途絶え、骨組織が壊死してしまう病気です。

アルコールの多飲やステロイド薬の大量使用がリスク因子として知られていますが、原因不明の特発性も多く存在します。

壊死しただけでは痛みはありませんが、体重を支えきれずに壊死した骨が陥没(圧潰)した瞬間に、突然の激痛に襲われるのが特徴です。

それまで健康に生活していた人が、ある日突然歩けなくなるような痛みに見舞われる場合、この疾患を疑う必要があります。

女性に多い関節リウマチと股関節への影響

関節リウマチは、免疫システムが自分自身の関節を攻撃し、炎症を引き起こす自己免疫疾患です。手足の指の関節に症状が出ることが多いですが、股関節に病変が及ぶこともあります。

滑膜(かつまく)という組織が増殖し、軟骨や骨を溶かしていくため、進行すると関節の破壊が起こります。

朝方に関節のこわばりが強く、日中に少し和らぐ「朝のこわばり」が特徴的です。

股関節に強い炎症が起きると、荷重時の痛みだけでなく、安静時にもズキズキとした痛みが生じ、歩行が困難になります。

主な股関節疾患の特徴比較

病名好発年齢・性別痛みの特徴と進行
変形性股関節症40代以降の女性に多い動き始めや長時間の歩行で痛む。進行は比較的緩やかだが、末期には安静時痛も出現する。
大腿骨頭壊死症30代〜50代(男性はアルコール、女性はステロイド関連)骨が潰れた瞬間に突然の激痛が走る。それまでは無症状のことが多い。
股関節唇損傷20代〜40代のスポーツ愛好家や女性足を深く曲げたり捻ったりすると痛む。引っかかり感やクリック音を伴うことがある。

股関節以外に原因がある関連痛と見分け方

股関節部分に痛みを感じていても、実際の問題は腰や内臓など、離れた場所に存在することが珍しくありません。

これを関連痛や放散痛と呼び、痛みの場所だけを治療しても改善しないため、痛みの発生源を正確に突き止めることが重要です。神経の走行や内臓の位置関係から、原因を推測します。

腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症の影響

腰の神経が圧迫されることで、お尻や股関節、太ももに痛みやしびれが出ることがあります。腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症では、坐骨神経痛や大腿神経痛として症状が現れます。

見分けるポイントとして、腰を前かがみにした時や、逆に反らした時に股関節付近の痛みが強くなる場合、腰椎に原因がある可能性が高まります。

また、股関節自体の動き(あぐらをかく、膝を抱えるなど)では痛みが誘発されず、歩行や立位の持続で痛む場合も、腰からの神経痛を疑います。

鼠径ヘルニアやリンパ節炎との違い

鼠径部(足の付け根)の痛みは、いわゆる脱腸である鼠径ヘルニアや、リンパ節の炎症でも起こります。

鼠径ヘルニアの場合、立った時やお腹に力を入れた時に足の付け根に膨らみを確認できることが多く、手で押すと戻ることもあります。

嵌頓(かんとん)といって腸が戻らなくなると激痛になります。リンパ節炎は、足の怪我や感染症に反応して鼠径部のリンパが腫れるもので、触るとしこりがあり、押すと痛みを感じます。

これらは関節の動きとは無関係に痛みが発生する点が、整形外科的な股関節疾患との違いです。

婦人科系疾患や内臓疾患からのサイン

女性の場合、子宮内膜症や卵巣嚢腫などの婦人科系疾患が、股関節の奥の方の痛みとして感じられることがあります。生理周期に合わせて痛みが強くなる場合は、婦人科の受診も検討します。

また、稀ですが、尿管結石や虫垂炎などの内臓疾患の痛みが、関連痛として鼠径部に放散することもあります。

内臓由来の痛みは、姿勢や動作に関係なく、波のある痛みや冷や汗を伴う激痛として現れることが多く、安静にしていても痛みが変化しないのが特徴です。

痛みの場所と原因の可能性

疑われる原因主な痛みの場所見分けるための特徴的症状
腰椎疾患(ヘルニア等)お尻から太ももの裏・外側腰を動かすと痛む。足にしびれがある。股関節自体の可動域は保たれていることが多い。
鼠径ヘルニア足の付け根(鼠径部)腹圧をかけると膨らみが出る。消化器症状を伴うことがある。
内臓・婦人科疾患下腹部から鼠径部深部動作に関係なく痛む。発熱、腹痛、生理周期との連動などが見られる。

整形外科で行われる検査と診断の流れ

医療機関では、問診と身体診察に加え、精密な画像検査を行うことで痛みの原因を特定します。

正確な診断を受けることで初めて、薬物療法で済むのか、リハビリが必要なのか、あるいは手術が必要なのかという治療方針が明確になります。

専門医は患者の訴えと客観的なデータを照らし合わせ、最適な解決策を導き出します。

医師による問診と可動域チェック

診察室では、いつから痛いか、どのような動作で痛むか、過去の怪我や病歴などの詳細な聞き取りが行われます。

続いて、ベッドに横になり、股関節を曲げたり開いたりねじったりして、関節の動く範囲(可動域)や、特定の動きで痛みが出るか(誘発テスト)を確認します。

パトリックテストと呼ばれる、足を組んで膝を開く検査などは、股関節の異常を検出する代表的な徒手検査です。

この検査を通して、筋肉の問題か、関節内部の問題か、あるいは神経の問題かをおおまかに推測します。

レントゲン検査で見える骨の状態

レントゲン(X線)検査は、骨の形や並び方を調べる基本の検査です。

変形性股関節症であれば、関節の隙間が狭くなっている様子や、骨棘(こつきょく)という骨のトゲ、骨嚢胞(こつのうほう)という空洞などが確認できます。

臼蓋形成不全の有無や程度も、レントゲン画像から角度を計測することで判断します。立った状態で撮影することで、荷重時の骨のバランスを見ることもあります。

骨折の有無もまずはこの検査で確認します。

MRIやCT検査が必要なケース

レントゲンでは写らない軟骨、筋肉、靭帯、関節唇などの軟部組織の状態を詳しく見るためには、MRI検査が必要です。

特に大腿骨頭壊死症の初期段階や、股関節唇損傷、微細な骨折、炎症の広がりなどはMRIでないと診断がつかないことが多々あります。

CT検査は、骨の形状を3次元的に詳細に把握するために用いられ、骨折の複雑な形状の確認や、手術計画を立てる際の精密な骨評価に役立ちます。

これらは必要に応じて追加で行われる検査です。

主な検査方法と分かること

検査の種類検査の目的発見できる主な異常
身体所見(理学所見)痛みの誘発・可動域の確認関節の硬さ、筋力低下、特定の動作での痛み、神経症状の有無。
単純X線(レントゲン)骨の形状・関節の隙間の評価骨の変形、関節裂隙の狭小化、骨棘、明らかな骨折、脱臼、骨の腫瘍。
MRI(磁気共鳴画像)軟部組織・骨内部の評価軟骨のすり減り、関節唇損傷、筋肉の断裂、骨頭壊死の初期、骨髄浮腫、炎症の範囲。

歩けるようになるための保存療法と治療選択

多くの股関節疾患において、まずは手術を行わない保存療法が検討されます。痛みを取り除き、関節の機能を回復させるために、薬物療法と運動療法を組み合わせることが一般的です。

患者自身の治癒力を助け、日常生活の質を向上させるための具体的なアプローチを行い、症状の改善を目指します。

炎症を抑える薬物療法と注射

痛みが強く歩行困難な場合、まずは痛み止め(消炎鎮痛剤)を使用して炎症を鎮めます。

NSAIDsと呼ばれる非ステロイド性抗炎症薬が一般的ですが、痛みの種類によっては神経障害性疼痛治療薬などが処方されることもあります。

飲み薬で効果が不十分な場合や、即効性を求める場合は、関節内にヒアルロン酸やステロイド、局所麻酔薬を直接注射することもあります。

こうした処置によって痛みの悪循環を断ち切り、リハビリを行える状態を作ります。

股関節を守る筋力トレーニングとリハビリ

痛みが落ち着いてきたら、理学療法士の指導のもとでリハビリテーションを開始します。

股関節周りの筋肉、特にお尻の筋肉(中殿筋)や太ももの筋肉を鍛えることで、関節にかかる負担を筋肉が吸収し、安定性が増します。

また、硬くなった関節包や筋肉をストレッチでほぐし、可動域を広げることも重要です。

水中ウォーキングなどは浮力を利用して体重負担を減らしつつ筋力を鍛えられるため、股関節のリハビリとして非常に有効です。

体重コントロールと生活習慣の見直し

股関節には歩行時に体重の約3倍、階段昇降時には数倍の負荷がかかります。そのため、体重の増加はダイレクトに股関節へのダメージとなります。

適正体重を維持することは、最も強力な保存療法の一つです。

また、重い荷物を持たない、長時間の連続歩行を避ける、和式トイレではなく洋式トイレを使用するなど、股関節に過度な負担をかけない生活スタイルを確立することが、痛みの再発防止に必要です。

保存療法の種類と役割

治療法具体的な内容期待される効果
薬物療法内服薬、外用薬(湿布)、座薬炎症物質の産生を抑え、安静時の痛みや夜間痛を軽減する。
物理療法・注射温熱療法、電気療法、関節内注射血行促進、痛みの閾値を上げる、関節の潤滑を良くし摩擦を減らす。
運動療法筋力強化、ストレッチ、可動域訓練関節の安定性を高め、衝撃を吸収する。関節の拘縮(固まり)を防ぐ。

日常生活で股関節の負担を減らす工夫

治療と並行して、自宅や職場での環境を整えることが、早期回復と悪化防止に大きく寄与します。毎日の動作一つひとつの負担を少しずつ減らすことで、股関節を長持ちさせることができます。

道具を活用し、動作のパターンを変えることで、痛みと上手に付き合いながら活動的な生活を維持することが可能です。

靴選びとインソールの活用

地面からの衝撃を吸収するのは靴の重要な役割です。クッション性が高く、かかとがしっかり固定されるスニーカーやウォーキングシューズを選びます。

ヒールの高い靴や底の硬い革靴は衝撃が股関節に伝わりやすいため避けます。

また、足の長さ左右差がある場合や扁平足がある場合は、医療用のインソール(足底板)を作成し、足元のバランスを整えることで、股関節への異常なねじれや突き上げを軽減できます。

椅子やベッドの高さ調整

立ち座りの動作は股関節に大きな力がかかります。深く沈み込むソファや低い椅子は、立ち上がる際に関節を深く曲げ、強い筋力を必要とするため負担となります。

膝の高さよりも座面が高い椅子を使用するか、座布団で高さを調整します。寝具も、床からの起き上がりが必要な布団よりも、ベッドの方が負担が少なくて済みます。

ベッドの高さも、腰掛けた時に足の裏が床につき、膝が90度以上曲がらない高さが理想的です。

家事や動作のサポートグッズ

床にある物を拾う動作や、靴下を履く動作も股関節には辛いものです。

マジックハンド(リーチャー)を利用して物を拾ったり、ソックスエイドという自助具を使って股関節を深く曲げずに靴下を履いたりする工夫が役立ちます。

また、お風呂場では高いバスチェアを使用し、浴槽に出入りする際は手すりを設置・活用することで、転倒リスクと関節負担の両方を減らすことができます。

家庭でできる負担軽減のポイント

  • 脱ぎ履きしやすく、衝撃吸収材(ソルボなど)が入った靴を選ぶ。
  • 正座やあぐら、横座り(お姉さん座り)などの床座りを避け、椅子生活中心にする。
  • キッチンでの立ち仕事の際は、足元に低い台を置き、片足を乗せることで腰と股関節の緊張を緩める。
  • 階段は「行きは良い良い(良い足から)、帰りは怖い(悪い足から)」の順番で昇り降りする。
  • 寝る際は痛い側を下にしない。仰向けなら膝下枕、横向きなら膝の間へのクッション使用を徹底する。

よくある質問

急な股関節の痛みに直面した際に多くの患者さんが抱く、運動の是非や治療方針に関する疑問にお答えします。

ストレッチは痛くてもやったほうがいいですか?

痛みが強く出ている急性期や、炎症が起きている時期に無理なストレッチを行うのは避けるべきです。

組織が損傷している状態で無理に伸ばすと、かえって炎症を広げ、修復を遅らせる原因になります。

痛みが落ち着いている慢性期であれば、「イタ気持ちいい」範囲でのストレッチは有効ですが、強い痛みを感じる場合は直ちに中止し、安静にしてください。

痛くても我慢して歩いたほうが筋力は落ちませんか?

「歩かないと寝たきりになる」という不安から、激痛を我慢して歩こうとする方がいますが、これは逆効果です。

痛みがある状態で無理に歩くと、痛みをかばう異常な歩き方が身についてしまい、腰や膝など他の部位を痛める原因になります。

また、炎症が悪化し、結果として安静期間が長引くことになります。痛みが強い時は安静にし、痛みのない範囲で行えるベッド上の筋力トレーニングなどから始めることが大切です。

市販のグルコサミンやコンドロイチンは効きますか?

サプリメントの効果については個人差があり、医学的に完全に効果が証明されているわけではありません。

あくまで食品としての補助的な役割であり、すり減った軟骨がサプリメント摂取によって元通りに再生することはありません。

気休めや栄養補助として使用するのは問題ありませんが、これだけに頼って治療を遅らせることのないよう、医療機関での治療を優先してください。

手術は必ずしなければなりませんか?

歩けないほどの痛みがあっても、必ずしもすぐに手術が必要とは限りません。

まずは保存療法(薬、リハビリ、生活指導)を行い、それでも痛みが改善せず日常生活に大きな支障がある場合に初めて手術が検討されます。

年齢、活動レベル、骨の変形の程度などを総合的に判断して決定されます。

近年では人工関節の手術成績も向上していますが、まずは保存療法で改善の余地がないかを探ることが第一選択となります。

参考文献

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Author

北城 雅照

医療法人社団円徳 理事長
医師・医学博士、経営心理士

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