Jones骨折という言葉を聞いたことがあるでしょうか?第5中足骨に起こる疲労骨折の名称です。今回は手術治療が必要になるリスクが高い事で知られているJones骨折の治療やリハビリテーションについてお話します。
(今回も日本整形外科スポーツ医学会が発行するスポーツ損傷シリーズ「Jones骨折」の画像を一部使用しております。合わせてご参照下さい。)
目次
今回の10秒まとめ
①Jones骨折は第5中足骨への繰り返されるストレスによって引き起こる。
②第5中足骨近位骨幹部は血流が乏しいため、遷延治癒・偽関節が生じやすく再発も多い。
③Jones骨折術後のリハビリテーション目標は、第5中足骨へのストレスを減らす事。
④早期発見と予防策の徹底・継続、指導者や家族の理解が必要不可欠。
Jones骨折とは?
第5中足骨にみられる疲労骨折の事をJones骨折と呼びます。サッカー選手に多く発生し、ステップや切り返し動作で、第5中足骨にストレスが繰り返し加わる事で骨折に至ります。慢性的にストレスにさらされている中で、足を捻じったり、踏まれたりすることによって生じる事が多く、外傷を機に受診し発覚する事が多いです。ACL損傷と並んで発生頻度が高いにも関わらず認知度が低いのが現状です。
Jones骨折の診断は?
確定診断は単純X線画像で行いますが、早期診断にはMRI、詳細な骨折部の形状把握のためにはCTが有用です。エコーを使用して第5中足骨部の不全骨折の有無を確認することも可能です。エコーによる検査は簡易的に出来る点からも早期発見には重要な検査になります。
Jones骨折の治療は?
第5中足骨近位骨幹部は血流が乏しいため、遷延治癒・偽関節が生じやすく完全骨折に至っている場合には手術療法が推奨されます。
保存療法
不全骨折で疼痛によるパフォーマンス低下が無い選手に対しては原則的に保存療法が選択されます。不全骨折の時点で発見出来れば、保存療法で治療を行える可能性が高く、早期の運動再開が期待出来ます。そのため早期発見が重要な意味を持ちます。
【保存療法で行うリハビリテーション】
・足底板療法(第五中足骨へのストレス軽減)
・超音波治療器(骨癒合の促進)
・足趾筋力の強化
・足・股関節ストレッチ etc
手術療法
完全骨折に至った症例や不全骨折でパフォーマンスに影響を及ぼし、満足にプレー出来てない選手には手術療法が適応になります。現在行われている手術療法としては、スクリュー髄内固定法・プレート固定法・Tension band wiringなどがあります。この中で、スクリュー髄内釘固定法が主流となっています。
Jones骨折術後のリハビリテーションは?
競技復帰までには術後3か月程の期間が必要になります。Jones骨折の原因は第5中足骨に加わる繰り返しのストレスです。そのストレスを軽減させる為に、「母指球で体重を支える」と「第5中足骨周囲の関節の可動性」に重点を当ててリハビリテーションを行っていきます。
➡各動作(ステップや切り返し動作)で第5中足骨へ荷重が流れないようにしてストレスを軽減させる。
・「第5中足骨周囲の関節の可動性」
➡第5中足骨へ荷重負荷がかかっても衝撃を緩衝できるようにする。
上記のポイントを術後より各期のレベルに応じて行っていきます。
非荷重期(術後~2週間)
非荷重期には足関節可動域改善と第5中足骨周囲の小さな関節や筋肉の柔軟性の改善を図ります。またステップや切り返し動作で、第5中足骨へストレスがかからない様にするためには体幹や股関節機能が重要な役割を担います。この時期は足関節以外の部位の土台を作り上げていきます。
全荷重期~ジョギング開始期(2~8週)
荷重が許可されたら足関節の機能向上を図っていきます。カーフレイズ(踵上げ)で母指球荷重出来るように足関節を安定させる筋肉のトレーニングを行います。徐々に片脚立位やジョギングなど難易度を上げていき母指球荷重での安定性向上を目指します。足関節だけでなく股関節や体幹機能に対するトレーニングも各個人の身体機能に応じて弱点克服を図っていきます。
横方向への動作開始期~復帰期(10~12週)
横方向へのステップ動作や方向転換動作では、特に第5中足骨へのストレスがかかります。最終段階として外力に対する足部・体幹の安定性、リアクション・対人動作での足部安定性獲得を目指しスポーツ復帰に向けて負荷量を上げていきます。
何度も繰り返しますが、Jones骨折は、完全骨折に至ると手術が必要になり、再発も多いため、未然に防ぐ対策・早期の発見・適切なリハビリテーションがとても重要な意味を持ちます。認知度が低いことからも多少痛みがあっても無理をしてプレーを継続してしまう選手も少なくありません。予防や早期発見に対する指導者・家族の理解と協力は必須になります。
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