足立慶友医療コラム

腰椎分離症とは?症状・診断・治療について

2020.03.21

腰背部

今回は、腰椎に生じる疲労骨折で、発育期のアスリートに多い「腰椎分離症」についてお話をします。

(文章中に、日本整形外科スポーツ医学会が配布しているスポーツ損傷シリーズ「腰椎分離症」の図を利用させて頂きました。ぜひこちらもご活用下さい。)

今回の10秒まとめ

①腰椎分離症は、腰椎への繰り返されるストレスにより生じる疲労骨折である。

②腰椎分離症の診断は、単純X線検査・MRI検査・CT検査にて行われる。

③腰椎分離症の治療は、安静と硬性体幹装具の着用が基本。

④腰椎分離症のリハビリテーションは腰椎へのストレス軽減を目的に行う。

腰椎分離症とは?

腰椎分離症は、腰椎の回旋を含むスポーツによって腰椎の関節突起に生じる疲労骨折です。
一般的には、骨折線のない「骨髄浮腫」「偽関節化」まで全ての状態を含めて腰椎分離症と定義されています。

まだ骨の形成が不十分は10代の成長期に発症します。

腰椎分離症の症状とは?

症状

① 腰痛(安静時には痛みが少なく、体幹後屈・回旋時に誘発される):初期段階

② 時に大腿部の痺れや痛み:偽関節の可能性あり

分離症が発生した初期の段階では、腰を反らしたときや体感の回旋運動をしたときなどに、限局した範囲(多くは痛みの場所を指し示せる)腰痛を感じることが多いです。また、ほとんどがスポーツ中やスポーツ直後に腰痛を自覚します。

上記のような症状が活発に運動を行っている成長期の方に、上記のような症状が2週間以上続く場合、腰椎分離症の存在を強く疑います。

分裂部分の骨が完全に折れてしまい、そのまま長期間放置していると骨折部がつかなくなってしまう偽関節(ぎかんせつ)という状態になってしまいます。このような状態になると、骨折部はグラグラと不安定な状態になります。この不安定な状態が続くとその部分での炎症が神経に波及する、または、機械的に神経を刺激すること大腿部や下腿に痺れや痛みが生じ場合があります。

つまり、下肢症状が出現した場合は偽関節の可能性を強く疑う必要があります。

正確な病期を知るためには、後述するような画像検査が必要になります。

腰椎分離症の診断は?

単純X線検査・MRI検査・CT検査にて疾患の診断を行います。

1)単純X線検査
 -急性腰痛の方に対して最初に行う検査
 -単純X線検査で検出できない分離症がある可能性が否定できない
 -MRI検査とCT検査の結果と合わせて診断する必要がある
2)MRI検査
 -椎弓根から関節突起間部にかけての骨髄浮腫像を検出可能
3)CT検査
 -分離の程度による病気分類が可能
 -CT検査にて関節突起間に亀裂を認めれば急性期腰椎分離症の確定診断となる

上記のような画像検査を行い、病気を判断することで治療方針が決定します。

腰椎分離症の治療は?

急性期腰椎分離症の治療目的は骨癒合、で初期治療の原則は保存療法です。

保存療法

保存治療は、安静とコルセットの着用が基本です。症状に応じてパフォーマンスの維持・再発予防を目的とした運動療法も行います。

コルセットでの3ヶ月ほど固定を行います。

この期間、基本的には運動は禁止ですが、骨癒合の状況をみながら段階的に運動を再開します。

当院では、固定開始から3ヶ月でのスポーツ復帰を目指し、治療を行います。

手術療法

腰痛や下肢痛が強い場合には、薬物療法・ブロック療法などにより疼痛改善を目指します。それでも効果が得られない場合には手術療法を考慮する必要があります。
椎間板変性やすべり症が認められない場合は分離部修復術、認められる場合には椎体固定術が選択されます。

腰椎分離症に対するリハビリテーションは?

発育期の腰椎分離症の病態は大きく2つに分けられます。

①関節突起間部に疲労骨折が生じた状態
 治療方針:骨癒合 
 1)腰部の局所安静目的で硬性体幹装具の外固定と運動休止を行う。
 2)腰部にストレスが加わらない範囲で股関節を中心とした柔軟性改善と体幹筋の等尺性収縮トレーニングを行う。
 3)腰痛軽減後は、運動の強度を漸増していき安静期間中に弱化しやすい持久力の向上を目的としたトレーニングを行う。

②疲労骨折が完成して分離部が完全に偽関節化した終末期
 治療方針:疼痛のコントロール
1)偽関節化した場合は骨癒合が期待できないため腰痛の原因となる関節周囲の滑膜炎に対する疼痛コントロールを行う。2)すべり症などの続発性障害の予防が必要。
3)疼痛に応じて再発予防を目指したリハビリテーションを開始して競技への完全復帰を目指す。

※偽関節:骨折部の治癒が遷延または停止して、実際には関節でない部分が関節のように動いてしまう状態。

再受傷予防のためのリハビリテーション

発育期腰椎分離症の治療成績は良好ですが、復帰後の再分離や腰痛の再発が多く、その後の構造的破綻の進行(すべり症への進行)が問題視されています。そのためスポーツ復帰後は再発予防を目的としたリハビリテーションが重要な意味を持ちます。

腰椎へのストレスは、腰椎の伸展と回旋の複合運動にて増大します。予防には、腰部への伸展・回旋ストレスを減少させるための動作獲得が必要です。その為に以下の身体機能に着目してリハビリテーションを進めていきます。

・体幹筋力の向上(体幹の安定性向上)
・隣接部位の可動性確保(股関節や胸椎)
・腰椎-骨盤部の運動制御能の向上

リハビリテーションについては、下記の記事に詳細をまとめております。

こちらの記事も参考にしてください。

腰椎分離症のリハビリテーション

発育期のアスリートで腰痛にお悩みの方は、当院に一度ご相談下さい。

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当院のご紹介

整形外科の診療に必要な設備が整った診療所

当院は、各種専門領域を持った医師の診療に加え、大学病院と同様の医療機器を有し、かつ、理学療法士・作業療法士によりリハビリテーションも積極的におこなっている診療所です。また、併設の慶友整形外科脊椎関節病院では手術加療も行なっております。

そのため当院では、整形外科疾患におけるほぼ全ての治療を提供することができます。

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当院では交通事故診療に強い整形外科専門医が治療を行います。ぜひ一度ご相談ください。

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Author

田中哲志

理学療法士 認定理学療法士(運動器・脳卒中・地域理学療法) CSCS

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