今回は手のしびれの原因となる手根管症候群についてお伝えしていきます。
(文章中に日本整形外科学会の「手根管症候群」の図を利用させていただきました。こちらもご活用ください。)
同様に手のしびれを生じる疾患に、頸椎症性神経根症や頸椎ヘルニア、そして胸郭出口症候群がございます。これらの疾患については、下記の記事をお読みください。
頸椎症性神経根症:肩から腕の痛みや痺れの原因・治療
頸椎椎間板ヘルニアについて
胸郭出口症候群:肩から手にかけてのしびれや痛み、ダルさ
目次
今回の10秒まとめ
①手根管症候群とは、手根管において正中神経が障害を受けることで指先のしびれや痛み、親指の筋肉が低下する疾患です。
②手根管症候群の原因は、手首や手指のつかいすぎや骨折後のむくみなどで正中神経が圧迫されることです。
③手根管症候群の症状は、親指、人差し指、真中指、薬指半分の手のひら側のしびれ、前腕の回内、手首や手指を曲げる筋肉、母指球の筋肉の筋力低下が起こります。
④手根管症候群の診断は、チネル徴候やファーレン徴候を確認します。それに加え、手根管症候群特有のしびれの部位や筋力低下を確認し、その他の疾患と鑑別します。
⑤手根管症候群の治療は、保存的治療から開始し、改善が見られなければ手術治療を選択します。保存的治療では、患部の安静を保ち、症状の回復を図ります。安静で症状改善しない場合は、ステロイド注射等も行います。
⑥手術療法は、しびれや痛みが強い場合、母指球筋の萎縮が強い場合や、腫瘤などがある場合に行い、手術治療により、正中神経を圧迫している靭帯や腫瘤を除去して、症状の回復をはかります。
手根管症候群とは
手根管とは、手首の手のひら側にある骨と靭帯に囲まれた空間のことを言います。
手根管の中を、橈骨手根屈筋腱、長母指屈筋腱、浅指屈筋腱、深指屈筋腱、正中神経が通っています。
その手根管において、正中神経が障害を受けることで指先がしびれたり、痛みが出たり、親指の筋肉が弱ってしまう疾患を手根管症候群といいます。
手根管症候群の原因
手根管症候群は、手根管で何らかの原因により正中神経が圧迫されることで症状が出現します。
正中神経が圧迫されてしまう原因を挙げると、
・手首、手指の同じ動作の繰り返し
・橈骨遠位端骨折などの手首の骨折
・手根管内の腫瘍、腫瘤
・手根管での滑膜炎
骨折の炎症や滑膜炎などにより、手首周囲が「むくむ」ことで、圧迫されてしまいます。
そのため、橈骨遠位端骨折などでも随伴症状として手根管症候群が挙げられます。
橈骨遠位端骨折については、以下の記事を参照ください。
それ以外では、妊娠、出産期や更年期での女性に多い原因がはっきりしない特発性手根管症候群が多いと言われています。
手根管症候群の症状
手根管症候群は、正中神経が圧迫されることによる症状が起こります。
正中神経は、親指、人差し指、真中指、薬指半分の手のひら側の感覚と前腕の回内(反時計回りに捻る)をする筋肉、手首や手指を曲げる筋肉、母指球の筋肉を支配しています。
そのため、感覚をつかさどる部位でのしびれ、痛みや感覚低下、支配する筋肉の筋力低下が症状として起こります。
特に、母指球の筋力低下は日常生活に大きな影響を及ぼします。親指と人差し指できれいな丸の形を作ることができなくなり、細かい指先のコントロールや物をつかむことが不自由になる場合があります。
手根管症候群の診断
手根管症候群の症状が出ているかどうかを確認します。
手のしびれの訴えはとても多くの方にあります。頸椎の変形による神経症状などでもしびれが出現しやすいため、手根管症候群の症状と鑑別して診断をしていきます。
感覚検査では、小指側にしびれがないことがポイントになります。正中神経は、親指から薬指の半分にかけて感覚支配があるため、その領域でのしびれの訴えや感覚の鈍さを認めます。しかし、小指は神経支配が異なるためしびれを認めません。
手根管症候群の鑑別には、チネル徴候やファーレン徴候を行います。
チネル徴候は、手根管部を打腱器で軽くたたき、しびれや痛みが指先に放散する(響く)かどうかを診る検査です。しびれが放散すれば、チネル徴候陽性になります。
ファーレン徴候は、上の図右側のように、左右の手首同士を合わせて曲げる検査です。この動きをした際に、指先のしびれが強くなるなどの症状が出現すれば、ファーレン徴候陽性になります。
また、重症化してしまうと母指球筋の萎縮が強く出現している場合があるため、確認します。
手根管症候群の治療
手根管症候群の治療は、保存的治療から開始し、改善が見られなければ手術治療を選択します。
保存療法
保存的治療では、まず患部の安静を保ちます。そのため、日常生活で手を使わないようにして症状の改善を図ります。
場合によっては、手首に装具を装着することもあります。その他に治療として患部へのステロイド注射が有効な場合もあります。
手術療法
手術療法は、しびれや痛みが強い場合、母指球筋の萎縮が強い場合や、腫瘤などがある場合に行い、手術治療により、正中神経を圧迫している靭帯や腫瘤を除去して、症状の回復をはかります。
(当院では内視鏡を用いた手術も可能です。ご希望の方は一度ご相談ください。)
手術後のリハビリテーションでは、症状の回復に合わせて、指先や手首の運動を行っていき、日常生活で不自由がないように治療を行ってい行きます。
当院のご紹介
整形外科の診療に必要な設備が整った診療所
当院は、各種専門領域を持った医師の診療に加え、大学病院と同様の医療機器を有し、かつ、理学療法士・作業療法士によりリハビリテーションも積極的におこなっている診療所です。また、併設の慶友整形外科脊椎関節病院では手術加療も行なっております。
そのため当院では、整形外科疾患におけるほぼ全ての治療を提供することができます。
当院の『7つの特徴』や『ミッション』についてご案内いたします。
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