お尻から太腿の裏、そして足の裏にかけてしびれや痛みを生じる『梨状筋症候群』を疑う必要があります。
今回はその梨状筋症候群の原因・診断・治療についてお伝えしていきます。
目次
今回の10秒まとめ
① 梨状筋症候群とは、「梨状筋」という筋肉が硬くなったり、引き伸ばされたりすることで、その下を通っている坐骨神経や殿部の神経を圧迫してお尻や太もも裏にかけてしびれが出現する疾患です。
② 梨状筋症候群の原因は、梨状筋の収縮や圧迫により坐骨神経が圧迫されることです。
③ 梨状筋症候群は、特徴的な画像所見に乏しいのが特徴です。
⑤ 梨状筋症候群には、仙腸関節障害や椎間関節障害が合併している場合もあります。
⑥ 梨状筋症候群の治療は、保存的治療が基本。
⑦ 鎮痛薬などの薬物療法やブロック注射で痛みの軽減を図ります。
⑧ リハビリテーションにおいて、ストレッチや運動をおこない、梨状筋の緊張を解除します。
梨状筋症候群とは?
梨状筋症候群とは、上記の水色に示した「梨状筋」という筋肉が硬くなったり、引き伸ばされたりすることで、その下を通っている坐骨神経や殿部の神経を圧迫してお尻や太もも裏にかけてしびれが出現する疾患です。
梨状筋症候群は、運動による股関節の筋肉の使い過ぎや長時間座っていることにより梨状筋によって坐骨神経が圧迫されることが原因として挙げられます。
坐骨神経の上には、梨状筋がトンネルのように走っています。この筋肉は通常柔らかいのですが、負担がかかって硬くなってしまうと、坐骨神経をつぶしてしまいしびれがでてきます。
多くの方がご存知な坐骨神経痛は、疾患名ではなく症状を表す言葉です。坐骨神経痛とは、上記の水色の神経で腰から枝分かれしながら足までつながっている「坐骨神経」にさまざまな原因によって圧迫または、刺激が加わることで現れる、痛みやしびれなどの症状のことです。
坐骨神経痛に関しては、以下の記事をご覧下さい。
お尻や太もも裏のしびれや痛み:坐骨神経痛の原因・診断・治療
梨状筋症候群の原因
梨状筋症候群の原因は、
① 運動・姿勢・骨盤の変形などにより梨状筋が長時間にわたり強く収縮することで坐骨神経が圧迫される
② 長時間の座位により梨状筋が圧迫され、その結果、坐骨神経が圧迫される
の2つが挙げられます。
上記のうち、①については運動以外に反り腰や臼蓋形成不全などが梨状筋症候群の原因となります。
反り腰と梨状筋症候群
左が正常な骨盤、右が反り腰になり骨盤が傾いている人の模型になります。
右の図の様に反り腰になり、骨盤が前に傾むくと梨状筋が通常位置より引き伸ばされてしまいます。
よって反り腰は梨状筋症候群の原因の1つになります。
反り腰については、下記の記事をお読みください。
反り腰について
臼蓋形成不全と梨状筋症候群
臼蓋形成不全という言葉をご存知でしょうか?
股関節は、骨盤で作られたお椀の中に、大腿骨で作られたボールが収まるような形の関節になっています。
臼蓋とは、このお椀の部分を指す言葉です。
この臼蓋部分が成長・発育過程でうまく作られない方がいらっしゃいます。
よって臼蓋形成不全とは、「臼蓋が発育不全( 形成不全)によって股関節が不安定になっている状態」です。
この臼蓋形成不全に伴う股関節の不安定性を補うために、梨状筋は硬くなり安定性を作り出します。
しかし、この硬さが梨状筋症候群発症の原因となります。
臼蓋形成不全やその進行による変形性股関節症については詳しく知りたい方は、下記の記事をお読みください。
変形性股関節症について
梨状筋症候群の症状
梨状筋症候群の症状には下記の3つが挙げられます。
1)坐骨神経痛に伴う症状
お尻から足にかけての部位に、
① 鋭い痛みやしびれ
② 張り
③ 冷感や灼熱感
④ 締めつけ感
上記症状は、上記の部位の「一部分だけ」に強く感じることもあれば、「下肢全体」に強く感じる場合もあります。
2)座位にて坐骨神経痛が出現
前述の通り、梨状筋症候群は長時間座り続けること原因であり、そのため座位が困難になることもあります。
デスクワークがきつい、映画館・車で長時間座ってられないなどで気付くことがあります。
3)臀部周囲の筋力低下、跛行
殿筋を支配する神経(上殿・下殿神経)を絞扼した場合、お尻の筋力が低下します。
殿筋の筋力が低下すると、跛行と言われるモデル歩きのような外側に揺れる歩き方になる可能性もあります。
梨状筋症候群の検査・診断
梨状筋症候群は、特徴的な画像所見に乏しいのが特徴です。
そのため診断・治療に難渋することが多いと言われています。
症状について問診を行い、痛みやしびれの部位を確認し、圧痛等を確認していきます。
梨状筋を緊張させた状態で臀部痛が出現するか、臀部に筋力低下がないかも重要な所見になります。
また梨状筋症候群には、仙腸関節障害や椎間関節障害が合併している場合もあります。
その場合、腰椎レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査と照らし合わせながら診断していきます。
梨状筋症候群の治療
梨状筋症候群の治療は、保存的治療が基本となります。
薬物療法
鎮痛薬などの薬物療法やブロック注射で痛みの軽減を図ります。
リハビリテーション
リハビリテーションにおいて、ストレッチや運動をおこない、症状の軽減を図ります。
特に梨状筋症候群に関しては、梨状筋の硬さが問題となるため、ストレッチやリラクゼーションにて緊張をほぐしていきます。
その際に、梨状筋が硬くなる原因を把握し改善することで、坐骨神経の圧迫を解除することを目指します。
反り腰・骨盤の傾きなどが問題の場合は、背骨の可動性や姿勢の修正を中心に行います。
股関節の可動性が乏しい場合には、股関節運動や更に股関節運動を阻害している要因を探していきます。
当院では、下肢の痺れを認める患者様に対して、脊椎疾患の専門家が診察を行っております。
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そのため当院では、整形外科疾患におけるほぼ全ての治療を提供することができます。
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