今回は、腰の手術を受けられる患者様に入院から退院までのリハビリテーションについてまとめました。
特に、今後手術を検討されている患者様や手術を受ける予定のある患者様に読んで頂ければ幸いです。
目次
今回の10秒まとめ
① 当院では主に腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症に対して手術加療を行なっております。
② 手術前日に40分~60分程リハビリテーションを行い、手術前の、筋力、歩容、痛み・しびれの範囲や強さ、日常生活動作などの手術前の身体状況を確認・把握させていただきます。
③ 手術時間は、手術範囲により異なりますが、通常は1~2時間程度です。手術当日は、リハビリテーション を行いません。
④ 手術翌日から、ベッド上でのリラクゼーションや軽負荷の運動など、40分程度のリハビリが始まります。
⑤ 入院期間は、椎間板ヘルニアの場合1~2週間程度、脊柱管狭窄症の場合2~3週間程度です。
⑥ 退院後は、定期的に外来リハビリを継続し、筋力の改善や歩行の安定性を高めていきます。
⑦術後の合併予防として、術後から積極的に足首の運動を行い、下肢に血流が停滞しないように心がけていただきます。
手術が必要な疾患は?
腰椎椎間板ヘルニア
腰椎椎間板ヘルニアとは、椎間板が後方に飛び出し、後ろにある神経とぶつかることで、神経を障害する病気です。脊椎の中にある神経は、臀部から足の先まで伸びています。この神経が障害されるとその走行に沿った痛みやしびれが生じます。
(腰椎椎間板ヘルニアに関しては下記の記事をご覧ください。)
腰椎椎間板ヘルニア:腰から足のしびれ・痛み
腰部脊柱管狭窄症
脊柱管狭窄症とは、脊髄の通り道を確保している脊柱に変形が生じ、その通り道が狭くなり脊髄を圧迫している状態をいいます。
症状としては、腰痛や下肢痛、しびれ、筋力低下、長時間歩くことができないなどが出現します。
(腰部脊柱管狭窄症に関しては下記の記事をご覧ください。)
腰部脊柱管狭窄症とは、原因・症状・治療法について
入院から退院までの主なリハビリテーションの流れ
手術を受ける前にはいくつかの準備が必要です。
手術前日 (入院日)
入院日は、手術前日になります。(手術前日が休日の場合は2日前となる場合もございます。)
前日までに心電図、血液検査、レントゲン・CT・MRIなどの必要な検査を行います。
※糖尿病をお持ちの方は、1週間前から血糖コントロールの為に入院となりますのでご注意下さい。
手術前日には、40分~60分程のリハビリがあります。手術前に身体の状況や、筋力、歩行の状態、痛み・しびれの範囲や強さ・日常生活動作などを把握させていただきます。
当院の外来リハビリに通っていた患者様は、外来リハビリから情報を引き継ぎ、現状や変化した点を精査していきます。
手術当日
手術は、全身麻酔下にうつ伏せの姿勢で行います。腰部の真ん中に皮膚切開を行い、腰椎の後方に付着している筋肉を剥離します。術後、創部ドレナージと呼ばれる細い排液用の管を留置して手術を終えます。手術範囲により手術時間は異なりますが、通常は1~2時間程度の手術です。
手術当日は、リハビリはありません。またご家族の方は、看護ステーションまでお越しください。
手術翌日以降
翌日から病室で、血圧などを確認しながらベッド上でのリラクゼーションや軽負荷の運動など、40分程度のリハビリが始まります。排液用の管がまだついている状態なので、積極的な運動は避けております。
2日目以降、排液用の管が外れるとリハビリ時間は60分となり、歩行器を使った歩行や下肢のストレッチやトレーニングを行っていきます。痛みがある時期は、特に睡眠不足になりやすい傾向にあります。睡眠不足は、翌日の運動の発揮低下にも繋がります。
慣れない環境での生活は、ストレスがかかりますので看護師への相談や、患者さん自身でケアすることもリハビリテーションを進める上で大事な要素でもありますので、お気軽にお申し付けください。
術後1週以降から退院まで
歩行器歩行が安定し、痛みやしびれが軽減し、動作が安定した後に歩行の段階・運動負荷を上げていきます。
段階を上げる時には、バランス検査や連続歩行距離などから判断しながら行っていきます。
特に脊柱管狭窄症の方に対しては、間欠性跛行(歩く距離が長くなるとでてくるしびれや痛み)が改善されたかも重要になります。
また段差昇降練習や屋外歩行なども退院に向けて行い、なるべく不安を取り除いて退院できるように支援させていただきます。
術前の状態や術後の経過にもよりますが、入院期間は腰椎椎間板ヘルニアの場合で術後1~2週間程度、腰部脊柱管狭窄症の場合で術後2~3週間程度です。
※治療経過には個人差があり、リハビリテーションの予定を若干変更することもあります。
ご不明な点があれば、いつでも主治医、理学療法士、看護師にご相談ください。
退院後
退院後は、定期的に外来に通院していただき、必要に応じてリハビリを継続します。
当院では、退院後の自主トレーニングを紙媒体でお配りしたり、スマートフォンに送るなどもしております。
また術後の注意点は、以下の記事をご覧ください。
腰椎疾患で手術をお受けになる患者様へ:腰椎術後の注意点
術後の合併症予防策や再発予防
手術直後は、合併症などを予防する事も重要です。合併症として、以下が挙げられます。
深部静脈血栓症(DVT)
下肢の静脈に血栓という血の塊ができる合併症が起こる可能性があります。
これは他の手術でも一緒ですが、血管を修復する過程や止血しようとする身体の反応により形成されることがあります。
深部静脈血栓(DVT)は、血流によって肺に運ばれてしまうと肺塞栓症という呼吸困難を伴い、場合によって死亡にいたる重症な合併症を引き起こします。
当院では、術後直後はフットポンプを用いた予防を行うとともに、フットポンプがとれた後は、弾性ストッキング着用することで血栓予防に努めています。
また術後から足首の運動を行うことによって、ふくらはぎの筋肉を使い下肢に血流が停滞しないようにお願いしております。
再発予防のための注意すべき日常生活動作に関する記事は、別で記載しております。
腰椎疾患の治療としては、保存的治療と外科的治療があります。
通常は保存的治療で経過を見ていき、症状の改善が認められなければ、外科的治療として手術療法が適応となります。
当院には、脊椎脊髄外科指導医がおります。充分にお話を聞き、診察を行った上で、最も適切な治療法をお薦めさせて頂きます。腰痛や下肢の痺れなどでお悩みの方は、是非ご相談ください。
当院のご紹介
整形外科の診療に必要な設備が整った診療所
当院は、各種専門領域を持った医師の診療に加え、大学病院と同様の医療機器を有し、かつ、理学療法士・作業療法士によりリハビリテーションも積極的におこなっている診療所です。また、併設の慶友整形外科脊椎関節病院では手術加療も行なっております。
そのため当院では、整形外科疾患におけるほぼ全ての治療を提供することができます。
当院の『7つの特徴』や『ミッション』についてご案内いたします。
各部門の専門家が集まった特殊外来を設置
当院は、一般的な関節の痛みや筋肉の痛みを診る整形外科の他に、「脊椎(首・腰)」、「肩関節」、「股関節」、「膝関節」、「手」、「足」とそれぞれの専門家が集まった専門外来を用意しております。
他院で診断がつかない症状に関して、各領域の専門家が診察をいたします。
手や足が痺れる、膝や股関節は痛い、背中が曲がってきたなどの症状でお困りの方へ。
都内最大級のリハビリ室を完備
患者様の健康を取り戻すため、当院ではリハビリテーションに力を入れております。
国家資格を有するセラピスト達が、責任を持って治療を行います。
腰が痛い、姿勢が悪い、歩くとふらつくなどの症状でお困りの方へ。
交通事故診療に強い整形外科専門医が診察
不幸にも交通事故に遭われた患者様の多くは、「事故のことは保険屋さんに聞けば良いが、体の不調をどこに相談すれば良いのかわからない」という悩みを抱えていらっしゃいます。
当院では交通事故診療に強い整形外科専門医が治療を行います。ぜひ一度ご相談ください。
当院は、整形外科専門医が交通事故治療を行う医療機関です。