足立慶友医療コラム

今回は、変形性関節症の治療方法として注目を集めているPRP療法の効果についてまとめられた論文を紹介します。

PRP療法は、当院でも受けられる治療方法であるため、実際の効果や持続期間について興味のある方は是非参考にしてみてください。

今回の10秒まとめ

①PRP療法の効果は科学的に証明されてきている。

②PRP療法は、変形性関節症の重症度が軽度であるほど高い効果を発揮する。

③変形性関節症が進行し、重症度が高くなる前の受診が重要となる。

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PRP療法の簡単な復習

PRP療法の正式名称は、多血小板血漿( platelet-rich plasma : PRP)療法です。
手術療法とは異なり、関節内に注射を行う治療法であり、痛みに対する効果に加え、様々な効果が認められています。

PRP療法のメリット・デメリットについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

変形性関節症に対する新しい治療法ーPRP療法の特徴とメリットについてー

今回紹介する論文

今回紹介する論文は、2016年にRevista Brasileira de Reumatologiaという雑誌にて出版された"Platelet-rich plasma for osteoarthritis treatment"という論文です。

論文を詳しく読みたい方は下記を御覧ください。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27267529/

この論文は、システマティック・レビューという種類の論文に分類され、今までに行われた研究での結果を統括し、まとめあげた形式の論文です。1つの研究報告だけに偏るのではなく、 複数の研究をもとにまとめられている論文のため、比較的質の高い論文であると言われています。

論文の概要

変形性膝関節症の治療法として、PRP療法の効果を検討した文献を包括的に検討をしました。
その結果、PRP療法による治療を受けた患者グループは、プラセボ(偽薬)群やヒアルロン酸注射による治療群と比較して、痛みと関節の機能において有意に改善しました。
治療効果は2年まで継続し、変形性関節症が軽度な症例では良好な結果を示しました。
しかし、PRP療法による治療回数・治療期間・治療量などは統一されておらず、どのような患者群に治療を行ったのかも明確でない場合がありました。
そのため、これらの研究結果の解釈は慎重にされるべきであり、今後より標準化されたさらなる研究が必要であると考えられます。

主な結果

変形性関節症の改善度合いとして、痛み・日常生活・生活の質(Quolity of Life:QOL)などを評価する指標を用いて治療の有効性を確認しているものが多いです。
ヒアルロン酸注射との比較を行った研究が多くありました。
変形性関節症の改善度合いは、ヒアルロン酸注射と比べて改善をした、または同等であったと報告する研究が多かったことから、PRP療法は、従来の治療法に比べて優れた効果を発揮することが期待できます。

以前のコラム記事でも変形性関節症に対するPRP療法やヒアルロン酸注射について述べています。

変形性膝関節症とは:その治療法・進行予防について

結果を解釈する上での注意点

今回の研究の結果を解釈する上での注意点がいくつかあります。
一見すると、PRP療法によって良好な結果が示されており、素晴らしい治療法のように見えますが、今回の論文でも述べられているように結果の解釈には注意が必要です。

これまでに行われてきていたPRP療法の効果についての研究では、

  • 治療効果の判定のための治療患者数が少ない。
  • 治療効果の判定のための観察期間が短い。
  • 治療対象となった変形性膝関節症の特徴が厳格に決められていない。

などの問題点があります。

そのため、今回の論文で記載されているPRP療法の有効性のみに目を向けるのではなく、こういった注意点も踏まえて結果を解釈する必要があります。
ちなみに、今回の論文ではPRP療法についてはさらなる検討が必要である、と締めくくられています。

とはいえ、PRP療法はまだまだ新しい治療法なので、今後さらなる研究が行われることで科学的な効果が実証されていく可能性は十分にあります。
現に、近年PRP療法は普及率を高めてきております。

PRP療法は変形性関節症が軽度なほど効果がある

今回の論文でも、それ以降の論文でも報告されていることとして、PRP療法は、変形性関節症の重症度が軽度な症例ほど効果が現れやすいということがあります。

効果が現れやすいとは、痛みや生活機能の改善度合いが高く、その効果の持続期間も長いということです。

変形性関節症の重症度の判定方法として、主に用いられる検査はX線による画像検査です。

変形性関節症は関節の間にある軟骨がすり減ることで関節内のストレスが高まり、痛みを生じる疾患であるため、変形性関節症の進行に伴い、軟骨がすり減り、関節の空間が狭まるという特徴があります。
それらの状態を画像検査で診断することが可能です。

当院では、X線・CT・MRIによる画像検査が可能なため、変形性関節症の進行度合いを判断し、PRP療法や手術療法などの治療法の中から何が適切であるか、判断し治療方法を提案することが可能です。

上記にもある通り、変形性関節症の進行度合いが軽度な症例ほど、PRP療法は効果を発揮します。
PRP療法の効果が最大限発揮される症状の初期段階で受診をしていただくことが、重要になります。

まとめ

今回は、PRP療法の効果を検討した論文について紹介させていただきました。
PRP療法の効果は科学的にも根拠があるもので、変形性関節症に対する治療効果が証明されつつあります。

PRP療法の特徴としては、変形性関節症の進行度合いが軽度であるほど効果を発揮します。
当院では画像診断を用いて変形性関節症の進行度合いを判断することが可能なため、手術療法・PRP療法どちらが適応であるかを判断し、患者様とともに治療方針を決定することが可能です。

痛みが強くなり日常生活が困難となる前に、医療機関を受診し適切な治療を受けるようにしましょう。

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整形外科の診療に必要な設備が整った診療所

当院は、各種専門領域を持った医師の診療に加え、大学病院と同様の医療機器を有し、かつ、理学療法士・作業療法士によりリハビリテーションも積極的におこなっている診療所です。また、併設の慶友整形外科脊椎関節病院では手術加療も行なっております。

そのため当院では、整形外科疾患におけるほぼ全ての治療を提供することができます。

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当院の『7つの特徴』や『ミッション』についてご案内いたします。

各部門の専門家が集まった特殊外来を設置

当院は、一般的な関節の痛みや筋肉の痛みを診る整形外科の他に、「脊椎(首・腰)」、「肩関節」、「股関節」、「膝関節」、「手」、「足」とそれぞれの専門家が集まった専門外来を用意しております。

他院で診断がつかない症状に関して、各領域の専門家が診察をいたします。

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当院では交通事故診療に強い整形外科専門医が治療を行います。ぜひ一度ご相談ください。

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Author

虎岩太朗

理学療法士

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