本記事は、2022.6.29に足立慶友整形外科で行われた地域勉強会の内容を記事したものです。
その②についてもぜひご覧ください。
目次
変形性膝関節症に対する2つの治療方針
変形性膝関節症の治療方法には大きく分けて下記の2つがあります。
保存的治療
・非薬物療法 運動療法・装具療法
・薬物療法 鎮痛薬の内服・湿布剤の使用・ヒアルロン酸関節内注射
手術治療
・人工関節置換術(全置換術、部分置換術)
・高位脛骨骨切り術
保存療法:膝が痛いのに歩いていいの?
患者様から「膝が痛いのに歩いていいのか」とよく質問を受けることがあります。
かつては「運動することで膝の安定性が高まり痛みがなくなる」と考えられていましたが、近年の研究によって「運動によって膝関節内のコラーゲン産生が増加することや炎症を抑える成分は産生される」ことがわかってきました。
よって当院では先ほどの質問に対して、「膝の痛みをとるために軽度の運動は大切です。ゆっくりと歩くことはお勧めします」と答えています。
ただし、運動後に痛みが強くなる場合は、整形外科へ受診をするようにしてください。
保存療法:サポーターは効果があるの?
歩行に伴い膝関節の動揺性が増える場合は、積極的に装具療法を用いることも当院では行なっております。
保存療法:痛み止めの内服は効果があるの?
痛み止めとして変形性膝関節症に対して処方される薬には以下の2種類があります。
・非ステロイド性抗炎症薬(一般的な痛み止め)
炎症を抑えることで痛みを押させる効果があり、炎症性疾患ではお勧めですが、胃粘膜障害などのリスクがあるため使用には注意が必要です。
・デュロキセチン(抗うつ薬の一種)
最近変形性膝関節症の治療薬として注目されている薬です。
整形外科では抗うつ病の治療薬として処方するのではなく、あくまで痛み止めとして処方します。
デュロキセチンは、慢性的に体が痛みを感じていると痛みに対して体が過敏になってしまうため、これを元に戻す作用のある薬剤です。
変形性膝関節症などで3ヶ月以上痛みを感じている場合に用いることで、効果があると言われてる薬剤です。
保存療法:湿布は効果があるの?
湿布薬の効果についてもよく質問を受けます。
近年発売された変形性関節症に適応のある湿布は、通常の湿布剤よりも患部に多くの薬剤が染み込むため、効果があると言われいています。
保存療法:膝関節へヒアルロン酸の注射効果があるの?
ヒアルロン酸の関節内投与について米国と日本では考え方が大きく異なっています。
日本の研究では、ヒアルロン酸関節内投与によって手術までの期間を遅らせることができたという報告もあります。
保存療法:ヒアルロン酸の内服は効果があるの?
ヒアルロン酸の経口投与は効果はありません。
軟骨には血管がないため、経口でヒアルロン酸を摂取しても肝心な軟骨に届くことはありません。
その④に続く。