足立慶友医療コラム

自分で治す!変形性膝関節症の予防・治療について

2020.03.28

膝関節

今回は、変形性膝関節症の治療法と予防についてまとめました。

変形性膝関節症は50歳以降の特に女性は、膝の痛みを感じた時に注意すべき疾患です。

この記事をお読みいただき、ご自身の治療に生かしていただけるとうれしいです。

今回の10秒まとめ

①日本における患者数は65歳以上では55%と高いため、国民病である。

②膝関節には、明らかな原因のない「一次性」と怪我や病気が原因なのは、「二次性」に分けられる。

③変形性膝関節症を予防する、進行を遅らせるためにも、膝関節を中心とした筋力強化や筋の柔軟性はとても重要である。

④体重が重ければ重いほど、膝関節にかかる負荷が高くなるため、適正な体重を維持するために生活習慣を見直す。

⑥膝関節周囲の安定性が乏しい場合は、日常生活の中で膝関節にかかる負担を減らすようにする。

高いヒールを履かないようにする。

変形性膝関節症とは?

変形性膝関節症とは、膝関節の痛みや日常生活動作障害等を特有の症状とする、膝の関節軟骨の変性を主体とした運動器疾患のことです。この変形性膝関節症は高齢者に多く、日本における患者数は65歳以上では55%と高いため、国民病であると言われています。

現在、自覚症状(膝の痛みや違和感)がある患者数は1000万人、また、自覚症状がない(レントゲン画像上の変化のみ)人数も合わせると3000万人の患者がいるといわれます。

患者の性別は、女性のほうが男性よりも1.5〜2倍多く認めます。膝の関節にある軟骨が徐々に摩り減って、「棘」ができたり、骨が変形してO脚やX脚になる病気です。膝を動かすと痛んだり、膝が曲げたり伸ばしにくいなどの症状が現れます。

そのため、現在健康なヒトに対しては、膝関節軟骨を正常に保ち続けることで、変形性膝関節症にならないように予防することが重要です。また、既に変形性膝関節症に罹患してしまった人に対しては、運動を中心としたリハビリテーションにより症状の進行を遅らせることが期待されています。

変形性性膝関節症についてさらに詳しくお知りになりたい方は以下の記事をお読みください。

変形性膝関節症とは:その原因・治療法・進行予防について

要因

変形性膝関節症の要因には、年齢や性別以外にも下記が挙げられます。

・遺伝

・肥満

・膝や股関節周囲の筋力低下

・半月板や靭帯損傷

・膝関節炎

変形性股関節症の原因は、一次性と二次性の大きく2つに分類されます。

一次性

明らかな原因がないが、関節軟骨が摩耗、変性して起こるものを「一次性」といいます。

原因として、加齢変化、体重増加、肉体労働、スポーツなどによる過負荷が考えられています。

二次性

怪我や病気など原因が明確なものを「二次性」といいます。

・膝周辺の骨折、捻挫や関節軟骨の損傷

・ACLなどの靭帯、半月板損傷

・反復性膝蓋骨脱臼 ・大腿骨内顆骨壊死などを過去に診断されている方

予防策

保存的治療では、変形性膝関節症が進行しないために、日常生活の中での膝関節の負荷を減らす生活に変えていきます。

膝関節への負担を減らすために下記のような治療及び注意が必要になります。

① 筋力強化し、関節を動かす

筋力は太ももの前の筋肉を鍛えることが、痛みの軽減するや予防に有効と言われています。

上の図のように、足上げ運動を左右交互に10回ずつ3セット行うなどから始めていき徐々に回数をふやしていきましょう。

またデスクワークの方は、膝を曲げている時間が長いため太もの裏の筋肉が硬くなりやすいです。座ったまま足を上げてキープするなども効果的です。

形性膝関節症を予防し進行を遅らせるためにも、膝関節を中心とした筋力強化や筋の柔軟性はとても重要になります。

膝関節の変形が進んでいくと、膝関節としての機能が低下し、痛みや可動域制限そして筋力低下が起こります。

痛みが出てしまうと、踏ん張れなくなったり、動かさなくなることで、さらに関節の動く範囲が狭くなったり、筋力低下が進んでいきます。そうなると負のサイクルが止まらなくなり、ますます膝関節の負担が大きくなり、変形が進行してしまいます。それを防ぐために、筋力強化や関節を動かすことが必要です。

膝の筋肉お尻の筋肉を鍛えることが、膝関節の負担を減らすために特に重要になります。

② 適正体重にする

膝関節は、股関節と膝関節のつなぎ目であり、体重の重みがかかる関節です。特に歩く時には、片足で支えなければならないため、さらに負荷が高くなります。つまり、体重が重ければ重いほど、膝関節にかかる負荷が高くなります

歩いているだけでも、膝関節には体重の3~4倍の負荷がかかると言われています。日常生活を送っていく中で、体重が重いまま歩き続けると、変形性膝関節症が進行して、痛みや関節の制限が増強していきます。体重を減らすことは、膝関節への負荷を減らすことになります。なので、適正な体重管理を心がけて生活していきましょう。

すでに適切な体重をオーバーしている方は、ランニングや階段などよりも平地を歩くことや、近くにプールなどある場合は、プールでのウォーキングなどをお勧め致します。

また肥満が体重を減らないという方は、低糖質・高たんぱくの食事を摂取することを推進します。

どうしてもダイエットとなると、食事量を減らすことから始める方が多い印象があります。

エネルギーやたんぱく質を制限してしまうと、身体は筋肉を分解して不足したエネルギーを作り出そうとします。そのため過剰な食事制限は、筋肉量を低下させる原因にもなりかねません。筋肉量が低下すると、代謝が低下し脂肪が落ちにくい身体になってしまいます。

そこで、糖質(炭水化物や甘いもの)をやや少なくし、野菜やたんぱく質(大豆製品やお肉・魚など)は積極的に摂取して頂く食事の方が好ましいと考えます。

③ 日常生活の習慣を見直す

膝周囲の筋力が低下している状態で膝関節への負担ががかる動作を繰り返すと、変形性膝関節症は進行してしまいます。

そこでどの年代の方でも日常生活の習慣で、膝関節の負担のかかる習慣や動作を変えることが必要です。

以下のような習慣は、膝関節に負担のかかる習慣になります。

・長距離を徒歩で移動が必要
・階段の上り下りが多い
・重いものを持ち運びする仕事
・長時間の立ち仕事
・和式のトイレや正座など過剰に膝を曲げる習慣がある

上記のような習慣は、日常的に膝関節へのストレスを増大させ、変形性膝関節症を進行させています。そういった膝関節にストレスがかかっている要因を変えていかなければ、変形の進行を防ぐことができません。

膝関節への負担を減らすために、「階段の利用を減らすこと」も手段の一つです。

繰り返しになりますが、膝関節周囲の筋力不足しているとストレスに耐えられず、変形性膝関節症は進行してしまいます。

よって、最も大切なことは膝関節周囲の安定性を高めるためのトレーニングです。

この『膝関節周囲の安定性と膝関節周囲へのストレスのバランスを意識する』ことが重要です。

「階段の昇り降りって健康にいいんじゃないの?」という意見もありますが、階段昇降時には体重の5~8倍の負荷が膝関節にかかります。膝関節の安定性が乏しい場合は、階段の昇降を最小限にするのも予防になります。

また、自宅や職場環境など変えることが難しい習慣もあります。それについては、身体の状態を説明して、職場や家族で相談して協力してもらうことも必要になります。

靴選び

これは仕事でヒールが必要な方や、若い女性の場合に気を付けて頂きたい予防策になります。

ヒールは、身長を高く見せたり脚が綺麗に見えるアイテムでもありますが、膝に負担がかかる場合があります。

ヒールの高さが5〜6㎝以上になると、前足部に負担がかかると言われており、高いヒールを履くと足のアーチの低下し、偏平足や外反母趾につながり膝関節への負荷を増大させます。

ヒール高3cm までであれば,歩行速度および歩幅やストライド長には影響が少ないとされています。よってヒールを履きたい方は、少し高さを抑えましょう。

杖の使用

これはすでに変形性膝関節症と診断された方や、自覚症状を覚えた方におすすめします。

前述した通り、日常生活の中で立ったり、歩いたりすることで、膝関節には体重の負荷がかかります。その負荷を減らす方法として、杖を使用します。歩く時の片脚にかかる負担を、杖を使用することで分散します。

そうすることで進行を遅らせていきますが、自分の年齢には早い・荷物になるなど抗感がある方も多い印象です。杖の使用にあたって、オシャレなデザインなものや折り畳み式などもあります。

また高さの調節も大切です。杖を使用されている方は、一度当院までご相談ください。

関節水腫はクセにならない

患者さんからよく質問を受ける内容の一つに『関節に水が溜まるのを抜くと、癖になりますか?』というものがあります。

結論から言うと『癖にはなりません』

関節に水が溜まる関節水腫は、関節内に炎症が起こっている結果生じるものです。

よって、炎症が続けば関節内の水を抜いてもまた貯まります

水腫が起こらないようにするために、炎症を抑える治療と、炎症を起こさないようにする治療、の2つの視点から治療を行う必要があります。

変形性膝関節症の治療法について

変形性膝関節症の治療としては、保存的治療と外科的治療があります。

通常は保存的治療で経過を見ていき、症状の改善が認められなければ、外科的治療として手術療法が適応となります。

人工膝関節の手術前や手術後のリハビリテーションについては、下記の記事を参考にしてください。

変形性膝関節症の治療法:人工膝関節置換術を受けるまで

人工膝関節置換術(TKA):当院での入院から退院までリハビリテーションについて

また膝の痛みでお悩みの方は、是非一度当院の膝専門外来をご受診ください。

オンライン予約はこちら

当院のご紹介

整形外科の診療に必要な設備が整った診療所

当院は、各種専門領域を持った医師の診療に加え、大学病院と同様の医療機器を有し、かつ、理学療法士・作業療法士によりリハビリテーションも積極的におこなっている診療所です。また、併設の慶友整形外科脊椎関節病院では手術加療も行なっております。

そのため当院では、整形外科疾患におけるほぼ全ての治療を提供することができます。

初めての患者さまへ当院のご紹介

当院の『7つの特徴』や『ミッション』についてご案内いたします。

各部門の専門家が集まった特殊外来を設置

当院は、一般的な関節の痛みや筋肉の痛みを診る整形外科の他に、「脊椎(首・腰)」、「肩関節」、「股関節」、「膝関節」、「手」、「足」とそれぞれの専門家が集まった専門外来を用意しております。

他院で診断がつかない症状に関して、各領域の専門家が診察をいたします。

整形外科のご案内

手や足が痺れる、膝や股関節は痛い、背中が曲がってきたなどの症状でお困りの方へ。

都内最大級のリハビリ室を完備

患者様の健康を取り戻すため、当院ではリハビリテーションに力を入れております。

国家資格を有するセラピスト達が、責任を持って治療を行います。

リハビリテーション科のご案内

腰が痛い、姿勢が悪い、歩くとふらつくなどの症状でお困りの方へ。

交通事故診療に強い整形外科専門医が診察

不幸にも交通事故に遭われた患者様の多くは、「事故のことは保険屋さんに聞けば良いが、体の不調をどこに相談すれば良いのかわからない」という悩みを抱えていらっしゃいます。

当院では交通事故診療に強い整形外科専門医が治療を行います。ぜひ一度ご相談ください。

交通事故にあわれた方へ

当院は、整形外科専門医が交通事故治療を行う医療機関です。

Author

竹内 雄登

理学療法士・ピラティスインストラクター・住環境福祉コーディネーター

Symptoms 症状から探す

症状から探す

Latest Column 最新のコラム

第14回日本ダンス医科学研究会学術集会参加の活動報告

2024.09.09

北部九州総体(インターハイ)2024 埼玉県代表男子バレーボール部サポート活動報告

北部九州総体(インターハイ)2024 埼玉県代表男子バレーボール部サポート活動報告

2024.09.02

第31回JOCジュニア・オリンピック・カップ・フェンシング大会兼2024年世界ジュニア・カデ・フェンシング選手権大会選考会サポート活動報告

第31回JOCジュニア・オリンピック・カップ・フェンシング大会兼2024年世界ジュニア・カデ・フェンシング選手権大会選考会サポート活動報告

2024.05.02

活動報告(天皇杯 第49回日本車いすバスケットボール選手権大会)

活動報告(天皇杯 第49回日本車いすバスケットボール選手権大会)

2024.05.01

埼玉県中体連柔道練成会サポート活動報告

2023.10.24

Ranking よく読まれているコラム

information 診療案内