今回は、人工膝関節置換術(TKA)の手術を受けられる患者様に入院から退院までのリハビリテーションについてまとめた記事です。
特に今後手術を検討されている患者様や手術を受ける予定のある患者様に読んで頂ければ幸いです。
目次
今回の10秒まとめ
①人工膝関節置換術(TKA)とは、傷んだ膝の軟骨を切り取り、変形を直し、切り取った部分を人工物で補う手術です。
②手術前日に、40分程のリハビリで手術前の身体状況や膝関節角度、筋力、歩き方、痛みなどを把握することで、術後のリハビリを効率良く行うことができます。
③手術は通常2時間程度で終了します。
④手術翌日から、膝を動かすリハビリを開始し、可能であれば立位まで活動を高めていきます。
⑤入院は、通常術後2~3週間で、杖歩行あるいは杖無しでの歩行で退院を目指します。
⑥退院後は、定期的に外来リハビリを継続し、関節可動域の改善や歩行の安定性を高めていきます。
Total Knee Arthroplasty(TKA)とは?
人工膝関節置換術(TKA)とは、傷んでしまった膝の表面の軟骨を切り取り、膝の変形を直し、その切り取った部分に人工物で出来ている人工関節をかぶせる手術のことです。イメージとしては虫歯に金歯をかぶせることを想像してもらえればよいかもしれません。
人工物には血流が無いため、細菌などの感染に非常に弱いです。そのため、膝や他の部位が化膿している方には人工関節手術を行うことができません。
(変形性膝関節症に関しては下記の記事をご覧ください。)
手術方法は膝関節の病態や患者さんの年齢に応じて異なります。TKAは、末期の変形性膝関節症で、なおかつ年齢が60歳以上であれば検討される手術方法です。
人工関節の設置後、術後に伴う痛みとそれに伴う関節の可動域制限や歩行能力・階段昇降能力を向上させるのがリハビリテーションの目的です。
入院から退院までの主なリハビリテーションの流れ
手術前の治療については、下記の記事をお読みください。
手術前日
前日(手術前日が休日の場合は2日前など)に入院し、レントゲン、心電図、血液検査、CT・MRIなどの必要な検査を行います。
手術の前日にも、40分~60分程のリハビリがあります。手術前に身体の状況や膝関節の曲げ伸ばしの角度、筋力、歩行の状態、痛みなどを把握させていただきます。当院の外来リハビリに通っていた患者様には、外来リハビリから情報を引き継ぎ、現状や変化した点を精査していきます。
手術当日
手術当日は、リハビリはありません。手術は、通常全身麻酔で行い、膝関節前面の皮膚を8〜15cm程切開します。滑膜や膝関節の損傷している部分を取り除き、人工関節に置き換えます。膝関節の損傷の程度にもよりますが、手術は通常2時間程度かかります。
手術翌日以降
車椅子に乗り移ったりや立ちあがり練習など、膝を動かすリハビリが始まります。平行棒や歩行器を使いながらの歩行練習も始まります。病室では、腫れや痛みを軽減するためにアイシング(冷やすこと)を行っていただきます。
痛みがある時期は、特に睡眠不足になりやすい傾向にあります。睡眠不足は、翌日の運動の発揮低下にも繋がります。特に慣れない環境での生活は、ストレスがかかりますので看護師に相談したり、患者さん自身でケアすることもリハビリテーションを進める上で大事な要素もあります。
手術から1週以降
歩行器歩行が安定したら、杖歩行に切り替えていきます。更に杖歩行が安定して、杖無し歩行になど段階を徐々に上げていきます。
段階を上げる時には、バランス検査などから判断し行っていきます。また段差昇降練習や屋外歩行なども退院に向けて行い、なるべく不安を取り除いて退院できるように支援をしていきます。
術前の状態や術後の経過にもよりますが、入院は通常術後2~3週間で、杖歩行あるいは杖無しでの歩行で退院になります。治療の経過には個人差があり、リハビリテーションの予定を若干変更することもあります。不明な点があれば、いつでも主治医、理学療法士、看護師にご相談ください。
退院後
退院後は、定期的に外来に通院していただき、必要に応じてリハビリを継続します。当院では、退院後の自主トレーニングを紙媒体でお配りしたり、スマートフォンに送るなどしております。
人工膝関節の耐久性
人工膝関節の耐用年数は、患者さんによって異なりますが一般的な患者さんは15~20年以上持つと言われています。長い人生の中で入れ替える手術が必要となる場合もあるため、以前は高齢者にこの手術が行われる傾向がありました。
しかし最近は、人工物の性能も向上し耐久性が飛躍的に良くなったこともあり、患者様の価値観や膝の痛みなく働きたい・家事がしたいなどのQOL(生活の質)が尊重され、中高年で人工膝関節置換手術を受ける患者様も増えてきています。
術後の合併症予防策
手術直後は、合併症などを予防する事も重要です。合併症として、以下が挙げられます。
感染(化膿)
人工関節の部位に、感染(化膿)が起きてしまうと人工関節を抜去する事になり、治療は長期間にわたってしまいます。感染を予防するために抗生剤の投与、定期的血液検査などの対策をとっています。
深部静脈血栓症(DVT)
下肢の静脈に血栓という血の塊ができる合併症は、肺塞栓症という呼吸困難を伴う可能性があります。
DVTは、場合によって死亡にいたる重症な合併症を引き起こします。
当院では、術後直後はフットポンプを用いた予防を行うとともに、フットポンプがとれた後は、弾性ストッキング着用することで血栓予防に努めています。
また術後から足首の運動を行うことによって、ふくらはぎの筋肉を使い下肢に血流が停滞しないようにお願いしております。
膝関節拘縮
当院では手術前より20°程度増加できるように目標が設定されています。手術直後は、痛みはありますが愛護的に訓練を行います。徐々に痛みが引いてきたら、日常生活動作に必要な110°~120°程度の可動域を目指していきます。
変形性膝関節症の治療としては、保存的治療と外科的治療があります。
通常は保存的治療で経過を見ていき、症状の改善が認められなければ、外科的治療として手術療法が適応となります。
さらに詳しく知りたい方は、以下の記事にQ&Aがまとめられているので、是非ご覧下さい。
当院は、一般的な関節の痛みや筋肉の痛みを診る整形外科の他に、膝関節専門外来を用意しております。
膝の痛みでお悩みの方は、是非一度当院の膝専門外来をご受診ください。
当院のご紹介
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当院は、一般的な関節の痛みや筋肉の痛みを診る整形外科の他に、「脊椎(首・腰)」、「肩関節」、「股関節」、「膝関節」、「手」、「足」とそれぞれの専門家が集まった専門外来を用意しております。
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当院は、整形外科専門医が交通事故治療を行う医療機関です。