今回は、皆様が悩むことの多い腰痛についてお伝えしたいと思います。
目次
今回の10秒まとめ
① 腰痛は『病名』ではなく『症状』。
② 腰痛の15%は『特異的腰痛』と呼ばれ、背景にある疾患が明確な腰痛であり、85%は原因が不明な『非特異的腰痛』である。
③ 『非特異的腰痛』には、生活習慣に伴う『不良姿勢』が大きく関与している。
④ 腰痛が生じるのは、人間が直立二足歩行を獲得した結果と考えられる。
⑤ 腰部ばかりが原因ではなく、股関節の可動域低下も腰痛の原因と1つと考えられる。
⑥ 原因に対して適切に対処していくことが、腰痛治療にとって最も大切なことである。
腰痛は病名ではなく症状
腰痛は、その名の通り腰部を中心とした痛みや張りの訴えになります。
腰痛という「病気の名前」はなく、腰痛はあくまで「症状」です。
そのため、腰痛になる原因を発見しなければ、腰痛を改善することができません。
腰痛の原因
腰痛の85%は原因不明だと言われています。
原因不明の腰痛を「非特異的腰痛」、残りの15%は原因を特定できる「特異的腰痛」と2種類に大きく分けられます。
特異的腰痛の原因となる代表的な病気は以下の通りになります。
・腰椎椎間板ヘルニア
・腰部脊柱管狭窄症
・腰椎圧迫骨折
・脊椎炎
非特異的腰痛は以下のような原因が考えられています。
・筋・筋膜性腰痛
・椎間関節性腰痛
・仙腸関節性腰痛
・椎間板性腰痛
・心因性腰痛
これらの中から、腰痛の原因を推定するために、問診、画像所見、しびれ等の神経症状の有無を確認します。
しかし、非特異的腰痛に関しては、生活習慣、職業、ストレスなどの関連も大きくあります。
だからこそ、原因を断定することが難しくなり、慢性化する腰痛に悩む方が多くいるとも考えられます。
腰痛と人間の進化の過程
そもそもなぜ、現代の私たちは腰痛に悩まされることになったのか?
原因は、人間の進化の過程にあります。人間は、四足歩行から直立二足歩行での移動様式へ進化を遂げました。
その進化の過程において、重力に抗して背骨が垂直になり、背骨のS字カーブ、腰椎の前弯(反り)が生まれました。
背骨のS字カーブがあることで、垂直方向にかかる負担が少なくなります。反対に、背骨のS字カーブが崩れると、腰椎や椎間板など、腰椎周辺の組織に負担がかかってしまい、上記したような腰痛の原因になってしまいます。
したがって、腰痛は直立二足歩行を獲得した人間特有の症状になります。
椎体の間のクッションの役割を担う椎間板は、上下方向への衝撃には強いですが、横方向やねじれる方向へのストレスには弱いです。特に日常生活の中では、腰をねじるようなストレスがかかりやすいので、それで腰痛を引き起こすことも多くなっています。
腰痛の現代を取り巻く環境
腰痛は、現代を取り巻く生活様式、環境の影響がかなり大きいです。それが以下の通りです。
・猫背や反り腰などの不良姿勢
・デスクワークでの座位時間の長さ
・中腰での重労働
・運動不足
・精神的なストレス
・ソファーの座りすぎ
猫背のように背中が丸まった姿勢や腰が反りすぎている姿勢も、不良姿勢=腰痛と密接につながるわけではありませんが、
そういった姿勢が持続することで、筋肉が硬くなり、血流が悪化することで腰痛になることにつながります。
日常生活の中で、圧倒的に座っている時間が増えていること、固定的な姿勢の取りすぎが問題です。
ずっと座っていたあとや立ちっぱなしでいると腰が痛くなったり、重くなったりすることが皆さまの中でも経験があるかと思います。
だから、定期的に姿勢を変えたり、ストレッチをするなどして対応していく必要があります。
現代の生活が便利になり、生活がしやすくなっているがゆえに、腰部に負担がかかる生活になってきています。
腰痛がある方に関しては、日常生活の中に腰痛の原因がないかどうか振り返ってみてください。
腰痛と股関節の関連
変形性股関節症のような股関節疾患と、腰部脊柱管狭窄症などの腰椎疾患は、加齢とともに増加し、同時に併発したり、双方に影響を及ぼしてあっています。そのため、「Hip-Spine Syndrome」とも言われ、股関節と骨盤、腰椎には密接なつながりがあると言われています。
・股関節の動きが悪くなれば、腰椎に負担がかかる。
・腰椎の動きが悪くなれば、股関節に負担がかかる。
腰痛だからといって、腰部のみに原因があるとは限りません。
股関節の動きの悪さ、股関節の不安定性が原因となって、腰椎に負担がかかり腰痛になっていることも多くあります。
特に、変形性股関節症では多く見受けられます。股関節の安定性を高めるために、骨盤前傾、腰椎前弯が強くなることで腰痛を引き起こします。その場合は、股関節の問題が大きいので、腰痛の治療には注意が必要です。
腰痛が腰部に原因があるのか、もしくは股関節のように他の関節の影響があるのか、適切に腰痛の原因を評価する必要があります。
腰痛の予防および対処法
腰痛は原因が不明な場合が多く、そのまま放っておくと慢性的な症状になってしまいます。
腰痛の原因がないかどうか、自分の生活を振り返ってみてください。腰痛の症状が出現するときはどんな場面なのかを知るだけでも、対処法を考えるきっかけになります。
腰部脊柱管狭窄症等で、腰痛を放っておいて状態が悪化してしまうと、最終的には手術でしか対応できない可能性もあります。
その状態になる前に、腰痛がある場合は、必ず医療機関を受診して診察を受けてみてください。
腰痛の原因となる疾患の記事も是非お読みください。
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