今回は、変形性膝関節症の画像診断について紹介します。
当院の過去の記事でも紹介していますが、変形性膝関節症とは、膝の関節軟骨の変性・摩耗、関節辺縁の骨増殖が起こる疾患です。
変形性膝関節症とは:その治療法・進行予防について
当院でも、多くの患者様が受診される疾患の一つです。
また、当院では、レントゲン・CT・MRIなどの画像検査が可能です。
これらの画像検査を行うことで、どこが痛いのか・なぜ痛いのかが明らかになる場合があるため、診断の補助として使用しています。
今回は、これらの画像検査の中でもレントゲン画像に焦点を当て、
変形性膝関節症の進行度を、レントゲン画像により分類するKL分類について説明をしていきたいと思います。
少し難しい話かもしれないですが、膝の痛みの原因について理解できるきっかけとなれば幸いです。
ぜひ最後までご覧ください。
目次
今回の10秒まとめ
① 変形性膝関節症の進行度をレントゲン画像から分類することが可能。
② KL分類では骨の隙間、骨化の度合いで変形性膝関節症の進行度を分類している。
③ 変形性膝関節症では、膝を動かしたときに、摩擦ストレスで周囲の組織が刺激され、痛みを生じる。
④ 変形性膝関節症は多くの人が抱える疾患であるため、膝の痛みを感じる場合は医療機関を受診が推奨される。
レントゲン画像で変形性膝関節症の進行度を分類することが可能
変形性膝関節症の進行度を分類できる理由
変形性膝関節症では、膝関節の関節軟骨がすり減リます。
これにより、
- 軟骨の下にある軟骨下骨が露出する
- 軟骨下骨には骨化(骨に変化)する場合がある
- 骨化した部分が周囲の組織と摩擦を起こす
といった現象が起こります。
これらの状態は、変形性膝関節症の進行とともに深刻化していきます。
レントゲン画像では、
- 関節軟骨のすり減り度合い(骨と骨の隙間)
-
膝周囲の骨化の様子
を観察することが可能です。
そのため、レントゲン画像から変形性膝関節症の進行度を分類することが可能となります。
Kellegren-Lawrence分類(通称KL分類)とは
ケルグレン-ローレンス分類と読みます。
先程述べた、関節軟骨のすり減り度合い、膝周囲の骨化の様子をもとに、grade0 〜 gradeIV の5段階で分類が可能です。
grade 0 から順番に実際の画像とともに説明していきます。
grade 0
いわゆる、正常の膝関節画像です。
このような画像になります。
太もも側の骨(上側)とすねの骨(下側)の骨の間に空間が保たれており、後に出てくる、白みの強い画像ではありません。
grade I
変形性関節症の疑いあり、とされる状態です。
先程に比べ、骨と骨の隙間がやや狭くなり、骨の境目に白みの強い部分(軟骨下骨の骨化が疑われる部位)があります。
grade II
KL分類 grade II となると、変形性膝関節症の診断となります。
明らかに骨化している部分があり、画像右側の骨の境目にとげのようなもの(骨棘)が形成されています。
骨と骨の隙間も狭いです。
grade III
grade II から更に進行した状態です。
骨棘の形成も進行し、明らかに骨と骨の隙間も狭くなっています。
grade 0 の状態と比べると、骨の境目が滑らかではないことがよりわかりやすいと思います。
grade IV
いわゆる、変形性膝関節症が進行しきった状態です。
骨と骨の隙間はほぼなくなり、骨化がかなり進行しています。
上記の分類は、あくまでレントゲン画像をもとにした分類であるため、実際の痛みや可動域制限を忠実に示すわけではありません。
しかし、レントゲン画像を見ることで変形性膝関節症の様相がより明確になったのではないかと思います。
変形性膝関節症の病態・疫学
レントゲン画像を実際に見た上で、変形性膝関節症ではどんなときになぜ膝が痛むのか、どのくらいの人が変形性膝関節症を有するのか、を確認していきましょう。
どんなときになぜ痛むのか?
変形性膝関節症の進行とともに、骨同士の隙間が消失し、骨化が進むことがわかったかと思います。
つまり、変形性膝関節症が進行すると、膝を動かした際に、骨の表面同士の摩擦・骨と周囲の組織との摩擦が起こりやすくなるということがわかると思います。
関節の周囲には、痛みを感じる神経終末が分布している部分が多く存在します。
膝を動かした際の摩擦ストレスにより、これらの神経終末が刺激され、痛みを感じる原因となっていると考えられています。
そのため、どんなときになぜ痛むのかという問いには、
膝を動かしたときに、摩擦ストレスで周囲の組織が刺激され、痛みを感じる。
と答えることが出来ます。
以上が、変形性膝関節症に特徴的な運動時痛の原因です。
どのくらいの人が変形性膝関節症になるのか?
先程のKL分類では、grade II 以上が変形性膝関節症の診断になるとのことでした。
KL分類で、grade II 以上と診断された人は、40代で男女ともに約10%です。
この頻度は、加齢とともに増加し、男性では70歳代以降で半数を超え、女性では60歳代以降で半数を超える、という結果となっています。
非常に多くの人が抱える疾患であるため、膝の痛みを感じた際は、ぜひ一度医療機関を受診し、画像診断などに基づく適切な診断を受けることを推奨します。
変形性膝関節症の予防法・治療法
当院では、これまでの医療コラムで変形性膝関節症に関する様々な記事を投稿してきました。
変形性膝関節症のより詳しい症状についてはこちらの記事をご覧ください。
変形性膝関節症とは:その治療法・進行予防について
変形性膝関節症の予防方法について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
膝の痛み。進行すると手術?変形性膝関節症を予防する
変形性膝関節症の代表的な手術療法である人工膝関節置換術についてはこちらの記事をご覧ください。
人工膝関節置換術(TKA):当院でのリハビリテーションについて
近年注目を集めている再生医療であるPRP療法については、こちらの記事をご覧ください。
変形性関節症に対する新しい治療法ーPRP療法の特徴とメリットについてー
PRP療法の治療効果について
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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