今回は、突然の膝の痛みを認めた場合に考えるべき疾患である『半月板損傷』について説明します。
(文章中に、日本整形外科学会が配布している整形外科シリーズ『半月板損傷』の図を利用させていただきました。ぜひこちらもご活用ください。)
目次
今回の10秒まとめ
① 半月板は、膝関節にあるコラーゲン線維の豊富な軟骨である
② 体重の負荷を分散させるクッションの役目・関節を安定させる働きがある
③ 半月板損傷は、スポーツ外傷で多くみられるが、明らかな外傷ではなく加齢によって損傷することもある
④ 早期に手術が必要なのは、半月板のひっかかりで膝が動かない症状がある場合
⑤ スポーツ、日常生活、職業上に大きな支障がある場合も手術適応になる
そもそも半月板とは?
構造
半月板は膝に存在し、内側と外側に分けられます。
半月板はコラーゲンを多く含む繊維で作られており、内側がC型、外側はO型の形状をしております。
内側半月板は、肉厚で可動性が低いのが特徴ですが、外側半月板は、薄く可動性が高いのが特徴です。
これは、膝の構造上、内側は体重をしっかりと支えることに特化しているのに対し、外側は可動性を高めることに特化していることを表しています。
半月板の機能とは?
半月板の機能は、非常に多く以下になります。
・関節の適合性を高めている
(接触面積を2~3倍にして、不安定なもの同士を繋いでいる)
・運動を安全かつ円滑にしている
(周囲の筋肉や靭帯に付着し、移動することで適合性を高める)
・荷重を分散している
(歩行中、体重の2~3倍かかるストレスを、30~50%軽減する)
・感覚の受容器
(痛みの感覚・そして見なくても動かすために必要な深部感覚があります)
・関節液の分散と吸収
(荷重によって関節液は、吸収 ⇔ 排出 で関節液を浸透させ、摩擦を軽減させる)
上記のように、驚くほど多くの機能を持っています。
半月板損傷の病態とは?
半月板損傷の症状
主な症状は、突然に起こる膝の痛みです。
関節を動かす時や荷重時に特に強く痛みを感じ、可動域制限が起こり曲げ伸ばしが難しくなります。
歩行や階段、関節内に水や血液が溜まることもあります。
膝で物がキャッチング(ひっかかるような感覚)や音が鳴ったり、
膝がずれるような違和感が起こる場合もあり、日常生活・スポーツに制限が出る疾患です。
受傷の原因
外側半月板損傷は、スポーツ外傷によるものが多く、前十字靭帯の損傷を伴って受傷することが多くあります。
前十字靭帯の損傷に関しては、以下の記事をご覧ください。
内側半月板損傷は、中高年の受傷機転が明らかでない退行変性(加齢よるもの)が多いとされています。
これらは、徒手的な検査や症状、画像所見(CTやMRI)を用いて判断し、治療方法を決める必要があります。
MRIで所見を確認しても、症状と一致しない場合もあり多角的評価が必要と言われています。
治療の選択
治療方法は、主に保存療法と手術療法にの2つに分けられます。
保存療法
半月板の損傷箇所によっては、安静によって損傷箇所が自然に癒合する場合があります。
リハビリテーション・サポーター・薬物療法を行い膝の安静や筋力を確保することで、自然癒合を期待します。
しかし、予後予測が難しいため、治療効果と今後の治療の方向性を見極めることが重要です。
改善がみられない場合や、ロッキング(突然、膝が伸びなくなる)を繰り返す場合は、手術療法を検討します。
リハビリテーションで見るポイントは?
腰と膝の間にある「股関節の動き」が重要となります。
股関節が硬くて動きづらい、もしくは筋力低下している場合、その上下の関節である腰や膝にストレスがかかりやすくなります。
エクサイズは①~⑤までありますので、是非ご覧ください。
手術療法
手術方法は大きく2つが主流となっています。
縫合術
半月板の損傷している部位を縫合する方法です。下記の切除術に比べ、半月板を残すことができるため近年では適応例が増えております。
デメリットとしては手術後に免荷(体重をかけない)期間や関節運動の制限をする期間があることから、復帰には下記の切除術より時間がかかります。
しかしメリットとしては、切除術より長期的には良好な結果となることが報告されています。
免荷には松葉杖が必要となります。
松葉杖の使用方法に関しては以下の記事をご覧ください。
切除術
損傷が大きく上記の縫合術が難しい場合は、切除術を選択することになります。
切除術とはその名のとおり、損傷している部位を綺麗にしつつ、半月板を切除する手術となります。
デメリットとしては体重を分散させる機能が低下してしまいため、将来的に変形性膝関節症になるリスクが上がります。
変形性膝関節症の予防に関しては、以下をご覧ください。
長期的にみると膝関節の機能を低下させる可能性がありますが、痛みの原因となっていた部分を切除するため症状を和らげるには有効です。
また手術後の体重をかけない期間が短く関節運動の制限も少ないことから、短期的にはメリットがある治療法と言うことができます。
近年では手術機器の進歩もあり、保存療法も含めて、半月版を温存する傾向になります。
まとめ
上記のように半月板損傷の治療は、損傷の程度やライフスタイルによって治療方法が変わってきます。
膝関節症状でお悩みの方は、当院の膝専門外来をご受診ください。
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